No.272
羽黒山・初めての山は心ときめいて
[羽黒山(414m・山形県鶴岡市――2022年7月2日)]
 今日は朝4時起。ひとり酒田へと車を走らせる。酒田在住のアウトドアカメラマンのSさんと鶴岡・羽黒山の古道(階段ではない裏登山ルート)を歩くためだ。
 秋田は小雨まじりの曇天だったが、庄内地方はもう梅雨が明け、青空が広がり、猛烈な暑さ。これにはちょっとビックリ。羽黒山の2446段の石段を登るルートは過去に2度ほど経験があるが、今回はその裏にある昔ながらの修験道をじっくりと歩いてみよう、という企画だ。もちろん初めてである。羽黒山は言わずと知れた会津や平泉とともに東北仏教文化の中心地である。神仏習合の権現を祀る修験者の道である。現世利益をかなえる山としても知られている。
 駐車場には誰の車もない。登山客はわれわれだけのようだ。といっても山頂は梅雨明けの日曜日なので人でごった返しているのは間違いない。なにせ山頂まで車をつかえば数十分で行ける山である。
 登り始めるとすぐにあのとくちょうのあるアカショウビンの鳴き声。なんだか幸先がいい。入り口付近には二羽の猛禽類が登山道の真ん中で餌をついばんでいた。登山道の両脇はドクダミの白い花とエゾアジサイの青紫の花が交互に現れる。真っ白な大ぶりの花を咲かせるノリウツギも顔を出す。地面に目をやると小さな白い花と赤い実のツルアリドウシがかわいい。
 今日は新しいザックだ。前のものは限界で買い替えたのだが、40リットル近くの大きさなので、まだ体になじまず、ちょっと持て余し気味。カメラの調子も悪い。先日の小白森山行の時の雨がカメラ内部に入ったようで、ファインダーの半分に薄暗い膜がかかったままだ。カメラの調子が悪いと山行も楽しさが半減する。シャッターチャンスはいっぱいあるのに、写してもどうせボケまくっているだろうと思うと、気も重くなる。1時間半で山頂へ。深い森のただなかから都会のど真ん中に放り込まれたような気分になる。猛暑なので全身汗みずくなのに山頂を歩く人たちは涼しげな表情で短パン半そで姿だ。

新しいザックで

山頂の神社では屋根の葺き替え中
 山頂の大きな木の下でランチ。そばに手水場があるので水が豊富に使えるのがありがたい。コーヒーに紅茶、日本茶までいただいて、人でごった返す山頂を逃げて、人っ子一人いない古道に戻り下山。途中で直径1メートルほどの水の張った穴が現れた。唐突感があったが「イノシシが泥遊びした跡ではないか」と推論してみた。近年このへんにもイノシシは出没しているそうだ。温泉は松山温泉「観音湯」。ここは2回目だ。その後は近くにある明治維新の鬼っ子・清河八郎記念館を訪ねた。欲張って最近できたばかりの酒田駅前の市立図書館も見学し、土門拳記念館にまで足を延ばした。ちょうど特別企画展「木村伊兵衛と土門拳」を開催中で期間は明日まで。ライバルの二人の、バチバチの火花が飛び火してくるような緊張感のある、いい企画だった。夜は庄内の山の後に必ず打ち上げをする中華料理店「香雅」で。もう息子さんの代に替わっていたが、父の味を引き継いで、相変わらずおいしい。長い庄内の一夜だった。

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