No.303
前岳・同じ山でも毎回違う山
[太平山前岳・774m・秋田市――2024年5月25日]
 東京で、ある講座を受講するため日帰り上京するカミさんを飛行場まで送り、そのまま金山滝登山口へ向かう。
 9時半から登り始めて2時間ぴったしに前岳山頂に立った。
 土曜日の青空の広がる登山日和なのに登山者は本当に少ない。登り始めてすぐ、最近、この山つながりで友人になったSさんとばったり。Sさんはまだ50代初めだが、太平山の歴史や文化に造詣が深く、いろいろ教えてもらっている。毎日登山のO先生はもう下りてしまったとのことで、「登山者が少ないですねえ」と、同じような感想を漏らしていた。ヒルはそろそろ出始めているようだが、4番石像のあたりから9番石像までの道の両脇にヒメシャガがびっしりと咲き誇っていた。先週のオーパス・リフト口コースではヒメシャガはもう終わりかけていたから、こちらが遅く咲き出したのだろうか。先週よりも登山道が狭くなったように感じたのは、両脇の草が生い茂り道路に覆いかぶさっているからだ。前日、雨が降ったので地面は湿っぽく、滑りやすい。軽アイゼンが下りでは役くに立ちそうだ。

女人堂から市街の眺望

前岳山頂のベンチ
 毎週のように登っているが、山はその都度表情を変える。一度として同じ山であることがない。風景も足場も風も音も匂いもコンディションも、毎回、毎回、別の山だ。そこがこの山の魅力でもある。日々表情を変える山なのだ。山に慣れて来たのか、一番の欠点である「暑さ」に強くなった。逆に「風を感じる」感度が高くなり、ちょっとの風でも「涼しさ」を目いっぱい体感できるようになった、といえばいいだろうか。汗も必要以上に書かないし、そのため水の消費量も減った。これは大きいなあ。五感が自然とリンクし始めているような気さえするほどだ。今回、初めてITレコーダーを山に持ち込んで、その都度感じたことを声で記録することを始めて見た。ひとり、ブツブツ独り言を言いながら、山に登っているオヤジがいればそれが私だ。
 あと克服するべき弱点は「休息をとらない」クセだ。このクセなんとかしたい。少しでも早く山頂にたどり着きたい一心で、一人の時は極力休息をとらずに歩き続けてしまう。30分に一回は休む、というのが理想だが、どうにもこれだけはうまくいかない。

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