No.67
愉しみは「山頂」よりも「山菜」
[東鳥海山(777m・湯沢市)――2014年5月11日]
 山の名前や印象をなかなか記憶できないタイプだ。でもこの東鳥海山だけは別。まだ2回しか登っていない山なのだが山容も山道もはっきり記憶に残っている珍しい山だ。以前、一人でこの山に登ったことがあった。表示板の多くが無残にクマにかじりとられていて怖かった。一人で来るべき山ではない、と強く思ったことと、麓にあるしゃれた山小屋風のコーヒー店で美味しいコーヒーを呑んだのが印象に残っている。麓の町にすらコーヒー店がないのに山中にこじゃれたコーヒー店があるのだから印象に残るのも当然だ。
 今日の登山口は中山口だ。これは初めてのコース。一人で登った時は直登コースでエラクきつかったのを覚えているが、仲山口はつづら折りの典型的な初歩的登山コースで登りやすく、気持ちいい。おまけにこれ以上はない青空で、西には雪帽子をかぶった真っ白な鳥海山が顔をのぞかせている。

雪と新緑と青空と

真っ白な鳥海山が
 山頂までは約2時間。下りも同じ時間かかった。これは寄り道が原因だ。山菜のための寄り道である。登りでの山菜採りは要注意だ。いやご法度と言っていい。集中力が低下して事故につながるからだ。そのかわり下りは山菜寄り道自由。各自勝手に登山道を外れ、コシアブラやコゴミに熱中する。
 私自身は山菜にあまり興味がないが、この時期の山菜の美味しさは、やっぱり魅力だ。残留放射能の怖さもあるが、山菜の魅力に負けそうになってしまう。 
 自分で採るほどの「能力」もないので今回も他のメンバーから分けてもらった(家でそのコゴミとコシアブラを調理。コゴミの胡麻和えとコシアブラのオリーブオイル和えをリーダーのSシェフに教えてもらった。コゴミの汚れ洗いは少し手間だったが2つともうまく調理でき美味しかった)。この時期の山行の愉しみは「山頂」ではなく「山菜」なのだ。
 今日の山行には珍しい参加者もいた。うちのHPで「リトアニア留学日記」を連載していた国際教養大のY君だ。4年生になり自由な時間が増え参加してくれた。グループに若者がいると、グループ全体が華やいだ雰囲気になる。Y君とは留学前からよく一緒に登っていたのだがリトアニアから帰国後は就活で忙しかったのか、ほぼ1年半ぶりだ。しばらくぶりに会ったせいか、なんだかちょっと大人になった印象だ。Y君はジャーナリスト志望。就活も難関A新聞社を狙っていたのだが、なんと無事内定。そのお祝いもかねた山歩きになった。
 それにしても、GWは山三昧。岩谷山、男鹿三山、大曲西山三山、南郷岳に東鳥海山。さすがにこの頻度は疲れる(笑)。GM中に4度山行し登った山は8座。ピーク疲れだ。
 事務所を離れ、仕事を頭から追い払い、雪と緑と荒い呼吸のなかに身を沈めるのはこのうえない快感だ。健康にもいい。でも先日、若い看護師(女性)と一緒に登ったら「あまり健脚だとボケたら徘徊老人になります」と言われた。実際に彼女の病院の医者が言っていたことなのだそうだ。頭も身体も同時に老いて行くのが「自然」なのだそうだ。
 温泉は西仙北ぬく森温泉「ユメリア」。「ギバちゃんの部屋」がある温泉で、なぜかレストランには新潟の銘酒や「へぎそば」まである。経営者が新潟の人なのだろう。なかなか味のある温泉だ。

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