Vol.1098 22年1月15日 | 週刊あんばい一本勝負 No.1090 |
真山・食道炎・冬の青空 | |
1月8日 3連休だ。山行もないし、胃カメラを呑むのは来週だ。コツコツ書き溜めていた「50年史」の年表とコラムが最終段階に入ったので休みをこれの仕上げに使う予定だ。一日目の今日は午前中にまずは雑用を片付け、午後からはこの作業に集中してみよう。自分が思っている、自分に残されている時間は多くはない。 1月9日 用意周到に去年の売れ筋を中心にリストアップし、本を用意していたのだが、どれも中途半端で感動の余韻冷めやらず、というものには当たらなかった。読んでない過去の本に白羽の矢を立てるしかない。高山文彦『火花―北条民雄の生涯』(角川文庫)を読み始めた。もう評価の定着した名著だから当たりはずれはない。昭和初期、らい患者として差別と病魔の戦いの中で小説を書き23歳で夭逝した「天才作家」の物語だ。あまりに暗いテーマなので、手に取るのを憚っていたが、コロナ禍の今しかない、と思い定め読み出したら、案の定はまってしまった。 1月10日 突然予定変更で男鹿・真山登山。モモヒキーズの山行に参加させてもらった。天気は穏やかで好天。前半はツボ足で八王子の半分地点まで問題なく行けたが、そこからはスノーシューでないと全く歯が立たないほど雪がたっぷり。4人でラッセルを変わりながらどうにか山頂へ。お正月気分がいっぺんで吹き飛んだハードな山行になった。 1月11日 今日は検診の再診で内視鏡検査の日。結果表からてっきり胃腸関連の検査だと思ったら、その手前の食道が「炎症を起こして潰瘍ができている」との診断。2週間ほど薬を飲んで経過観察することになった。半年前から、朝ご飯を食べると食道性逆流炎のような症状がたびたびあって「これは何かあるな」と不安とともに強い自覚もあったが、やっぱりなという感じ。おいしいものが食べられなくなるのはつらい。ちゃんと薬を飲んで治さなければ。 1月12日 暴風雪との予報が早くから出ていたので、昨日から停電に備えて倉庫から石油ストーブを引っ張り出し、防災グッズを再点検。夜半から獣の咆哮のような音に眠りを妨げられた。朝、新聞を開いたら、神保町の「岩波ホール」が7月閉館の驚きのニュース。おいおいこっちが暴風雪ではないか。19年6月のブラジル旅行の前夜、ここでドキュメンタリ―映画「ニューヨーク公共図書館エクス・リブリス」を見たのが最後だ。私にとっては宝物のような場所だ。神保町の魅力は薄くなる一方だが、これで山の上ホテルの危機なんて言うニュースが出たら目も当てられない。まあそんなことはないだろうが。 1月13日 今日も荒れ模様。車でのお出かけは考えてしまう。駐車場はどこも満杯で、路上には轍やアイスバーンの罠が至る所に仕掛けられている。こんな時はおとなしく事務所で「もどき仕事」で時間をやり過ごすしかない。「お金にはならないが、やらなければならないこと」くらいの意味だが、ブログの原稿を書き溜めたり、五十年史の資料を集めたり、保管庫の本の整理・処分をしたり……と多様だ。意識して終活するまでもなく、本を中心とした所有物は日ごろから断捨離を心掛けている。それもこの「もどき仕事」のおかげだ。仕事依頼は少なくても「もどき仕事」があれば、けっこう楽しく日々は過ぎていく。 1月14日 朝から青空がのぞいている。仕事よりも外に出て汗をかきたい気分だが、雪かき…は除外だ。冬に青空をみるだけで気分が高揚するというのは雪国の人間の「長所」だ。太平洋側の雪の降らない温暖な町に、いま突然住むことになったら自分の性格は変わるだろうか、と実は時々考えることがある。世界中どこへ行っても住む街には長所と短所がある。一つだけ言えるのは「桃源郷」はない、ということだけだ。さすれば「冬の青空」を至福の時と思う感性は洗練された人生の知恵でもある。……と書き終わったとたん窓から青空が消え、粉雪が舞い散る曇天に替わった。 (あ)
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