Vol.1273 2025年5月24日 週刊あんばい一本勝負 No.1265

毎日が雨でユーウツだが……

5月18日 週末を利用して衣更え。冬物はかさばる。収納しきれず部屋を乱雑にする。その源を断ったわけで書斎や寝室が新居のように広々とし気分がいい。衣更えのついでに仕事場の保管庫にくすぶっていた昔のパソコン、健康器具、ガスコンロなどもまとめて捨てた。身の回りにものがなくなると心は豊かになる。事務所の冷蔵庫とスキャナーは耐用年数をはるかに超えていて、近く買いかえる予定だが、大きな買い物はこれが最後、と心に誓う。

5月19日 近所の「洋服直し」店にズボン(パンツ)の裾上げ。ユニクロで買った3千円ほどのチノパンが、シングルの裾上げで「2200円」。モーレツに腹が立つ。先日の東京のホテルも都内の九段下で2泊、3万8千円。内訳は1泊目(水)が1万4千円、2泊目(木)が2万4千円。2泊目の値段の根拠がわからない。新幹線の中で食事をしたが焼き肉弁当が1700円、お茶代を含めれば2千円のランチ。老後資金は5千万円あっても足らない、と言い出すご仁がそろそろ現れそうだ。

5月20日 いろんなことが同時多発的に起き優先順位をうまくつけられない。深呼吸して新鮮な空気を取り込もうとするが、すぐに酸素不足になってしまう。クマが怖くて山に行けないので、近所のスポーツ・ジムで水泳を始めようと思ったが時間が取れない。思い切って休会届を出してきた。自分の精神安定のためにには「気になる」ことは潰していったほうがいい。

5月21日 今日も雨。寒いし、暗いし、不安を掻き立てるような、攻撃的でまがまがしい雨だ。秋田市だけに大雨洪水注意報が出ているようだ。今週はいろいろあって前向きな気持ちで仕事しないといけない予定がいっぱいなのだが、そんな気持ちを雨がベチャベチャにしぼませる。

5月22日 朝9時に新しい冷蔵庫の設置工事があるので、いつもより1時間以上早く出舎。冷蔵庫の中を整理するが、まあこんなにも収納されていたのか驚くほど。事務所の冷蔵庫は、使い始めて25年。一度も故障したことがない優れモノだ。使い勝手のいい、わが友人のような存在だったが、電気は食うし、音はうるさいし、冷却速度はゆっくりだ。昔のようにシャチョー室宴会もないし、お酒も飲まないようになったので、半分の容量でもう十分だ。

5月23日 今つけている時計バンドは原色の赤。その前は真っ白だった。財布は真っ黄色で、その前は赤。身に着けるものに「赤」というのはけっこう勇気がいるが、ワンポイントおしゃれで気分転換にはなる。どちらも布ビニール製の安物で、買えば1000円未満のものだ。問題もある。当然どちらも肌につけるものなので汚れる。小さな洗面器に洗剤を入れて手洗いをするのだが、水がすぐに灰色に濁ってしまう。月に一回は風呂に入れてやるのが持ち主の責任だ。

5月24日 新しい冷蔵庫が入り、スキャナーも新品に替わった。保管庫の粗大ごみも一挙に処分した。寝る前に読んでいる本は石川好「ストロベリー・ロード」(文春文庫)。平成元年に大宅賞を獲った、石川さんの代表作だが実はまだ読んでいなかった。石川さんは去年亡くなったのだが先日、奥様で作家の殿谷みな子さんと、秋田時代の石川さんの思い出話を、東京でたっぷりしてきたばかり。アメリカ青春移民冒険記とばかり思って読むのを遠慮していたのだが、前半はほぼ石川さんの「ヰタ・セクスアリス」。60年代のアメリカで、18歳の伊豆大島生まれの田舎の青年が、すでにこの国を「違和と混乱の世界」と、直感で看破している。石川さんが生きていれば、いまのトランプのアメリカをどのような分析しただろうか。

5月25日 今日も雨。本業のほうの忙しさは一段落したのだが、このままいくと6月は暇になりそうで、ちょっと怖い。それでも個人的には煩雑な日々がこれから数か月待ち構えている。少しユーウツなのだが、逃げられない「課題」ばかり。このところずっと腰が重い。ゆっくり休んでいないせいだ、と単純に思っていたが、そうではなさそうだ。もうこれは慢性的な老いの兆候でで、不治の病なのではないのか。本音をいうと、この雨の寒さが、たまたま腰に来てしまったという「一過性の病」説を信じたいのだが、難しい年になってしまったなあ。
(あ)

No.1265

飛脚は何を運んだのか
(ちくま新書)
巻島隆
 手紙や荷物を運ぶ飛脚の存在は平安時代末期までさかのぼる。鎌倉時代の絶え間ない政治対立と戦争が飛脚を生みだした理由だ。江戸時代にそれはビジネスとなり、明治に入り政府は飛脚問屋との契約を打ち切り国営郵便制度設置に舵をとる。戯作者・馬琴の日記を手掛かりに、飛脚の歴史的役割を文献資料で裏付けていく構成だ。一言で飛脚とはいっても、人間が荷物を運ぶものと、馬荷物を監督しながら街道を往来する「宰領飛脚」がある。人と馬の2種類あったわけだ。この宰領飛脚の存在が面白い。巻末近く「きつね飛脚伝説」にも詳しく触れている。きつねと飛脚といえば秋田市の「与次郎稲荷」だ。なぜ飛脚ときつねは相性がいいのか。そのきつね飛脚伝説が、なぜ日本海側に多く残されているのか……と興味尽きないトピックスも満載だ。メモを取りながらもう一度読みたくなった。本書は単行本より一回り小さい新書判。ページ数が410ページもある。普通、新書判は150ページ前後が平均ページだ。これは今の出版業界の苦しい台所事情を反映している。この本を普通の単行本にすれば350ページ前後の、定価は今の相場で2千円超え、初版3千部あたりか。しかし定価さえ安くできれば、もっと部数は行ける。そこで定価を1300円に抑え、新書版にすることで初版1万部を狙った、というあたりだろう。

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