Vol.783 15年12月5日 | 週刊あんばい一本勝負 No.775 |
遭難・弓立社・DM終了 | |
11月28日 2,3年、肩と首筋に痛みがあった。リューマチのような刺す痛みだ。寝る直前や風呂上りに顕著で、年をとるっていやだなあ、と年のせいにしていた。最近その症状がすっかり影を潜めた。寝ていて身体が中々温まらないのも悩みだったが、これも気が付けばすっかり改善していた。1か月ほど前、布団の下敷きマットを買い替えた。その際、羽毛布団は肌にじかに接触させないと暖房効果はないとアドヴァイスを受けた。以来実践している。もしかしてこの2つが「効いた」のだろうか。あれ以来、寝冷えも肩の痛みもすっかり消えたから、やはり布団の効果だ。 11月29日 日曜山行は由利本荘にある東光山。山は初級者コースで問題はないのだが下山後、県境付近にある三崎山(161m)まで足を延ばした。三崎山には「経緯度観測点」がある。低山だが一等三角点で、ここと飛島柏木山、酒田市飯森山の3地点を結んだ測量台座がある。設置は昭和3年。もうほとんどやぶに埋もれ場所を特定することさえ困難な、訪れる人とてない山中だ。蔦に足をとられ、やぶかき分け山頂台座をようやく発見。10年ほど前、故・藤原優太郎さんと訪ねて以来2度目だ。これを発案し設置したのは地球物理学者・寺田寅彦。20世紀初頭にA・ウェグナーによって発表された「大陸移動説」を日本でも実証しようと寺田が国に働きかけて実現した観測地である。「天災は忘れたころにやってくる」という言葉で3・11以降、話題になることの多かった寺田だが、秋田にもこうした足跡を残している。そのことを知る人は年々少なくなっているが。 11月30日 新聞各紙が村上春樹の福島文学イベントへのサプライズ参加を報じている。福島という言葉だけで拒絶反応を起こす人も少なくないのだが、これは震災関連としてはグッド・ニュース。村上はマスコミに一切登場しないから、これは自分の役割をよく知っていて成した行為だ。今、福島にフラリとでかけてそれが「ニュース」になるのはこの人ぐらいだろう。大物という言葉は似合わないが、65歳を過ぎて「ぼく」という一人称が不自然でないただ一人の作家である。最近ずっと村上作品を読んでいる。この人のユーモアのセンスや自由、孤独、想像力、自己抑制……といった文中に隠されたキーワードの意味が少しずつわかるようになってきた。最新刊紀行集『ラオスにいったい何があるんですか?』は昨日読了。最終章は熊本の友人を訪ね30人ほどの聴衆を前に小さな書店でサプライズ朗読会を開く紀行だった。こういうことが似合う人なのだ。 12月1日 尊敬する先輩編集者であり、知り合いでもある宮下和夫さんの本が出た。「出版人に聞く」というシリーズ企画の1冊で書名は『弓立社という出版思想』(論創社)。インタビュアーの小田光雄さんの博覧強記(出版界の)ぶりには脱帽。徳間書房を退社し、うちと同じ年(1972年)に弓立社を設立、吉本隆明に伴走し彼の本を出し続けた「伝説の出版人」だ。吉本さんの本のいい読者ではないのに、宮下さんとは個人的に馬が合い、よくいろんなところに連れて行ってもらった。とにかく顔の広い方で、仰ぎ見るような著名人を何人も紹介していただいた。宮下さんは2年前、友人に無償で弓立社を譲り、今は他社で出る吉本本のプロデュース兼編集者として多忙な日々を送っている。通読して驚いたのは自分の知っている宮下さんはほんの一部、知らないことばかりで、こんなすごい人だったのかと驚くばかり。 12月2日 11月末日、市内のいなにわうどん屋さんで高校生の一団(8人くらい)が食事をしていた。高級店でしかも夜。高校生の団体はいかにも不釣り合いだ。その中に大柄な黒人系少年がいた。目立っていたが穏やかな表情で談笑していた。どこかで見た顔だなあ、と思ったが数日後、テレビでプロ野球「楽天」の入団記者会見に、その少年がいた。オコエ瑠偉だった。なぜ秋田にいたのか。あの集団は関東第一高校の同級生なのか(女学生が半数いた)、よくわからない。オコエと秋田を結ぶものは「仙台」という地理的つながりだけ。入団発表前の東北旅行をしていたのだろう。違うかなあ。 12月3日 毎日の夕食づくりも2週間たち、だいぶ慣れてきた。もともと料理は作るのも食べるのも好き。予想外に大変だったのが「献立を考えること」。そうか、主婦が「料理嫌い」になる理由はここか。とにかくメンドウクサイ。メニューが決まるとあとはスムースにいくのだが、決まるまでの葛藤や不安や準備(心の)が大変だ。長くやっていれば慣れていくと思っていたがどうやらそうでもないらしい。友人の主婦たちに聞くと「何年たってもめんどくさい」。そのてん常備菜作りは楽。毎週張り切って作っている(といってもまだ2回だが)。ほうれん草、アスパラ、ブロッコリー、かぼちゃ、といったあたりを茹でて小分けにし保存する。カミさんはこれに「すじこ・たらこ」が朝の常備菜。メニューつくりに煮詰まると常備菜を肴に酒を飲んで済ますこともある。 12月4日 冬DM通信作業終了。「能代レシピ集」もどうやらメドがたち、昨日デザイナーに渡した。もう何もやることがない。天気が悪いので外に出る気がしない。外に出てもやることは散歩ぐらいなのだが。気分転換と休養も兼ね、,仙台に行くことにした。事務所はバイトのM君と新入社員で問題はない。仙台に行っても別に用事があるわけではない。駅ナカの立食い寿司でランチ、本屋やアウトドアショップ、図書館、映画館、文房具屋をはしご。最後は居酒屋しめて戻ってくる。一番の楽しみは電車の中での読書だ。今日は話題のジョージ・ソルト著『ラーメンの知られざる歴史』(国書刊行会)でも読もうか。 (あ)
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