Vol.894 18年2月3日 週刊あんばい一本勝負 No.886


毎日が真冬日で吹雪の日々

1月27日 昨日の仙台行きも含めると東京まで4度往復しているのだから異常な1ケ月だった。その一月も終わる。二月もいろんな予定が入っているが県内での気心知れた人たちとの飲み会なので、移動がない分楽チン。でも体調管理がむずかしい。新刊も2点出来てくる予定だ。新しい仕事もポツポツと入り始めている。事務所に閉じこもる日も多くなりそうで最大の悩みはデブ対策。年を取ると自然に食欲がなくなりやせ衰えていく、というのはウソだ。

1月28日 週末は朝寝坊。昨日は11時で今日は12時半起き。朝寝坊するとけっきょく夜に寝られなくなり生活のリズムが崩れる。ここにきて気が緩んでいる。なにかと疲れがたまっている。その証拠に昼まで寝ていても夜もちゃんと熟睡。たぶん一年ぶりぐらいに気持ちが弛緩状態にあるのもまちがいない。

1月29日 「温かい湯は十分な歓待だ」と書いている作家がいた。お湯は「おもてなしの原点だ」とも。どんなものでも手に入ると言いながら「白湯」を気軽に飲める環境はこの国にない。だから魔法瓶に白湯を入れて持ち歩いている。白湯だけでも十分においしい。注意深く見ていくと羽田空港国際線には無料のお湯を提供する場所があった。東京の喫茶店で白人女性がティーを注文して「お湯もつけてほしい」とリクエストしていた。水は嫌なのだそうだ。白湯を飲むようになってから便通がよくなった。熱いお湯を飲むと心にポッと灯がともる。身体が温かくなる。すっかり白湯党になってしまった。

1月30日 散歩の途中に10軒近いコンビニがある。うち2軒がつぶれて空き店舗。「おいしい牛乳」を買うためコンビニのお世話になっているが正直コンビニはあまり好きではない。店員がしょっちゅう替わって若葉マークを付けた若者が多く、イラつくことも多い。昨日の店員は品物をレジ打ちするたび泥棒を見るような目つきでにらみつける若者で怖かった。コンビニ側の接客指導でこれがマニュアル通りの対応です、なんてことはないとおもうのだが。

1月31日 ヒマなので録画していた映画鑑賞の日々。『ターミネーター』は40年後の進化したAIロボットと人類の戦いを描いたもの。今観てドンピシャの内容。『スケアクロウ』も色あせていないロードムービーで感動。片岡千恵蔵の『血槍富士』も、槍持ちが主人公という発想が現代的だ。名作というのは時代を超える。今から40年前にちゃんと人工知能のテクノロジーに畏怖と恐怖を覚えていた人がいて、何十年たってもかわらないアウトサイダーたちの物語がある。NHKが制作した大道芸人・ギリヤーク尼崎 のドキュメンタリーも面白かった。実はギリヤークとは個人的に浅からぬ縁がある。録画はしたものの年老いた彼の姿を見るに忍びなかったが観てよかった。そうかもう90歳になるんだ、彼は。

2月1日 昨日アマゾンのユーズドで文庫本を買ったら送料が350円。今日注文したユーズドの文庫の送料は通常の256円。どうなってるの? 新聞にはヤマトがアマゾンとの運賃値上げ交渉に合意したとの記事。一月から荷物の配達単価を引き上げたことが報じられている。本が届いていないので断定はできないが、たぶん350円が正しい単価ではないだろうか。1円の古本をアマゾンで買っても350円の送料が加算される。まあ、どう転んでもアマゾンに大きなリスクはない。本を入り口にしてゆくゆくはすべての商品を通販リストに加えていくアマゾンの戦略は揺るがないのだろうが、消費者としてはほかの選択肢が欲しい。アマゾン漬けになるのは避けたいのに、他の選択肢が見当たらない。

2月2日 寒い日が続いている。事務所前は除雪車が集めた雪山で車の出し入れも一苦労。今朝はマイナス7、8度の予想。久しぶりに水道凍結も視野に入れて準備していたが幸いにも凍結はなし。TVでは関東などで水道破裂のニュースをしきりに流している。零下1,2度で水道が破裂するなんて雪国では考えられない。あちらの水道管は製造仕様が違うのだろうか。と思っていたら、カミさんに「たぶん空き家の水道管が破裂しているんじゃないの」といわれた。なるほど、それなら納得がいく。人間が住まない空間は傷むし汚れるし劣化のスピードが速い。水道管もモロそうだ。
(あ)

No.886

夢幻の山旅
(中公文庫)
西木正明

 「ガモウ戦記」が面白かったので、がぜん西木の過去の作品に興味惹かれる。どんなテーマの小説を書いているかを調べると、山の絵描きとして高名な自由人「辻まこと」の評伝を書いていた。山歩きが趣味なので「辻まこと」の名前はよく聞くが、どんな人物なのかまるで知らない。その人物を西木は「敬意と愛情」をもって描いているのが本書だ。もともと西木は日本の近代史の闇や、そこに生きた人物や事件を描かせれば天下一品。そのいっぽうで冒険家としての側面ももっている。辻まことを描く絶妙な位置にいる作家だ。辻まことはダダイスト辻潤とのちに大杉栄と結ばれる婦人解放運動の先駆者・伊藤野枝の実子だ。伝記小説の成否は、ひとえに書き手がいい対象(人物)と巡り合えるかだという。さらに重要なのは、書き手が節度を持ってその対象者に距離感を持ってほれ込んでいること。辻まことと西木正明はまさにぴったりの相性を持っているといえる。辻の波乱に満ちた人生の背後には常に父と母の影が付き添っている。西木が描きたかったのはその影の部分だったようだ。

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