Vol.908 18年5月12日 週刊あんばい一本勝負 No.900


最悪の1週間でした

5月5日 印刷所をテーマにした本を読んでいる。出版業界の本と言えばたいていは編集者や作家、営業マンや本屋が主役だが、安藤祐介著『本のエンドロール』(講談社)は印刷営業の浦本君が主役の本だ。印刷業界からみえる作家や編集者、デザイナーの理不尽やわがままさがちゃんと描かれている。実に面白いしよく調べている。私自身、本を作る仕事は「印刷所との戦い」でもあった。印刷所に何千万もの借金を肩代わりしてもらって仕事を続けている罪悪感や、彼らの給料のために本を作っている、と感じていた時期もあった。「印刷」が面白い小説のテーマになるとは思わなかったなあ。

5月6日 東京2泊。日帰りで京都に行ってきた。駅からタクシーに乗ると運転手がおしゃべり好き。「お客さん、GWはえらく高速がこみましたけど、あれ田植えする人たちって、知ってました。関西も東北と同じくこの時期が田植えなんです。東京からぎょうさん実家の田植えに来る人たちで高速が混雑するんですわ。このへんはフナが産卵のため遡上する時期が田植え。フナなんていくらでもとれます。それをフナ寿司なんて名前で儲けた人は偉い。あんなもん、関西の田舎ではいくらでも捕れるんやから」。面白い運転手だったなあ。

5月7日 朝一番の新幹線で帰ってきた。実は今日から新入社員は東京の晶文社で研修だ。事務所には私一人。ヘロヘロになって東京・京都から帰ってきたら仕事が山積みのうえ一人だ。どうにか仕事を片付け終えたら夜の帳が下りていた。今週いっぱいこの状態が続く。しんどいなあ。

5月8日 連休明けでバタバタする時期に新入社員が研修中。魔の悪いことに外出続きが悪かったのか持病の通風が右足に出てきた。なんて不幸な人生なんだ! 今日は税理士が来る日。ちょっと面白い原稿が届いたのでそれを読むのも今日中の仕事だ。これはまあ楽しいほうの部類の仕事か。

5月9日 痛風で体調が悪い。昨夜は散歩も中止。ちょっと小腹がすいたので事務所で調理して(夕食後)食べたものが悪かったらしく、夜中に吐いてしまった。気分はユーウツなまま朝を迎えてしまった。どうもこのごろ体調管理がなっていないのは、どこかに油断というか気の緩みがあるからだろう。

5月10日 体調の悪さと関係あるのかもしれないが、とにかく寒い。ほとんど冬仕様の服装でひとり静かに仕事中。痛風らしき傷みは薬で去ったが、まだ普通には歩けない。食欲もないが、おかゆとパンを食べた。甘いパンが美味しく感じて、果物も無性に食べたくなった。脱水症状が心配なので水を飲もうとするが、これはなぜか拒否反応。果物や牛乳で水分をとるしかない。早く元気になりたい。

5月11日 ようやく体調は「普通」にもどった。まさに満身創痍の日々だった。歯は痛いし、目はかすむ。右足は痛風症状だし、食い合わせが悪かったのか激しい嘔吐と下痢症状。食欲はないし、仕事意欲もわいてこない。何という1週間だ。 
(あ)

No.900

東北のしきたり
(マイクロマガジン社)
鈴木士郎・岡島慎二

 数年前、本屋で「これでいいのか秋田県」というムック・タイプの本を衝動買いしてしまった。見るからにブラック系というか暴露系スキャンダル雑誌の体裁だったが、どんなバカなことが書いているのか興味があり読んだが、結構おもしろかった。よく調べていて、古い資料にも丁寧にあたっている。「あれっ、まともな本だ」と拍子抜けしたのを覚えている。そのムック本の著者が本書の著者でもある。版元も同じだ。本作りや書名の付け方が下手なので、抵抗感もある。しかし本書も書かれていることは至極まっとうで、よく調べている。本書は東北各地のムック本を作った副産物として編まれたものなのだろうが、書名や本づくりを工夫すれば、もっと多くの読者を獲得できる「普通の本」になったのかもしれない。本書の中で印象に残るのは第5章の「葬式」だ。東北地方で土葬が最近まで行われていたのは「(燃料になる)マキが高価だったから」と書いているのは、なるほど、と納得。火葬はもともと仏教のしきたりだが、それがなかなか東北地方で普及しなかった理由が「貧しさ」や「雪」との関係で語られている。突拍子がないような事実をあるが、全体としては首肯できる内容だ。

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