Vol.1019 20年7月11日 | 週刊あんばい一本勝負 No.1011 |
何もない日々が不気味に過ぎていく | |
7月4日 自粛期間中に体重が増えた。三日前からダイエット。昼のめん類をやめてリンゴ・カンテンに戻しただけだが、夕食後の間食もやめた。ダイエットの副産物がひとつ。寝ていると胸焼けするので胃薬をのんでいる。それもやめた。ダイエットするのは今まで買った服が着られなくなるのが嫌だから。ようするにケチなのだ。70代のわが目標は、薬にいっさい頼らない健康を維持したいということ。いまのところ服んでいるのは痛風の薬1錠だけ。これも早くやめたい。 7月5日 秋田県人は100年前のスペイン風邪で感染死亡者が4500人弱いた。県内感染者は25万人。ちなみにスペイン風邪とスペインという国は何の関係もない。同じころ南米のエクアドルでは黄熱病が発生。アメリカの医学研究所で学んでいた野口英世は、いちはやく「野口ワクチン」を開発、エクアドル人の英雄になった。しかし時間がたち科学が進歩すると、黄熱病の原因は野口の発見した細菌ではない、ウイルスであることがわかる。それ以外にも野口の華々しい発見のほとんどが「根拠のない」ものとして科学史の中から消えていく。野口の時代には電子顕微鏡がなかったからウイルスは見えなかった。スペイン風邪のさなか野口英世の母はそのウイルスの犠牲となって亡くなったという。 7月6日 装丁が素敵だったので本を買ってしまった。装丁者は平野甲賀だ。生島治郎『浪漫疾風録』(中公文庫)は早川書房編集者時代を描いたもので、これがめっぽう面白かった。自伝的長編なのだが個性派ぞろいの梁山泊のような出版社の舞台裏が、すべて実名で書かれている。続編の『星になれるか』も読破。こちらはミステリー作家になってからの交流録だ。睡眠薬中毒の夫とアル中の妻の壮絶な離婚劇が圧巻。 7月7日 6月が終わった。不気味なほど静かな1か月間だった。注文も依頼も相談も苦情もお誘いも無駄話も何もない「真っ白な1か月間」だ。この仕事をして50年近くになるが、こんな経験ははじめてといっていいかもしれない。コロナの影響はどの辺まで、活字の世界に及んでいるのか、知りたいと思うが、や、知らなくてもいいかな、とも思う今日この頃である。 7月8日 生島治郎の自伝小説があまりに面白かったので、『暗雲』上下巻も買い昨日から読み始めた。韓国人のソープ嬢と結婚した顛末を書いた『片翼だけの天使』は読んでいたが、この本はその結婚生活のドタバタを描いたもの。上下巻とも700ページという目を疑うような巨大長編小説。ヒマに任せて重い本にブツブツ不平を言いながら、読み始めたらやめられなくなった。とにかく面白い。700ページの長編小説を半日で読んでしまった。 7月9日 梅雨の合間を練って、Sシェフと長老Aの3人で男鹿真山へ。やっぱり山は楽しい。男鹿は基本的にクマがいないのもいい。それにしても自粛のツケは重かった。難易度でいえば男鹿真山は初心者クラスなのだがけっこうヘロヘロになるほど汗をかいてしまった。難易度Aの山に登るにはまだまだトレーニングが必要なようだ。 7月10日 山行の次の日は目覚めがいい。クリーニングに出したシャツを着ているような、パリッとした気分と新しい時間。それにしても体力はかなり落ちている。昨日は500m級の初心者用の山だったにもかかわらず、飲んだ水は3リットル、汗かき放題のヨロヨロ登山。ちょっと物足らないな、というあたりがねらい目のトレーニング山行だったのに、もう満腹けっこうです状態になってしまった。 (あ)
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