Vol.1035 20年10月31日 週刊あんばい一本勝負 No.1027

積極的に外へ出ることにした

10月24日 原作(小説)を読んでから映画作品を観ることはほとんどない。逆はあり、かな。このひと月、ずっと奥田英朗作品を読み続けている。奥田の小説は映画化に向いている。実際に10作品近くが映画化されている。精神科医を主人公にした「イン・ザ・プール」をまずは観た。結論から言えば、あまりに主人公伊良部のイメージが違った。伊良部は松尾スズキではなくどちらかというと岩松了だろう。けっきょく最後まで物語に入り込むことはできなかった。

10月25日 夜半はずっと雨で風も強い。こんな日に山に登るの? と言われそうだがアウトドアはいつも好天とは限らないから面白みも増す。今日は由利本荘にある八塩山。こうした風雨の日でもトレーニングと思えば楽しく登れる山だ。

10月26日 威勢のいい掛け声で雨の中を八塩山まで出かけたが、雨は時間とともにひどくなるばかり。山行はけっきょく中止になった。そこでお隣の羽後町まで足を延ばし、道の駅に寄り、「鎌鼬美術館」を見て、西馬音内そばを食べ、「トシトランド」(この命名はなかなかのもの)で温泉に入って、夕方前に秋田市に帰ってきた。収穫は鎌鼬館で観た舞踏家・土方巽の写真の中に高校・大学を通じて仲の良かった後輩のT君が映り込んでいる、と知ったこと。美術館の館長の写真説明でそのことを知ったのだが、「彼は今何をしていますか?」と思わず訊いてしまった。

10月27日 左腕の痛みがようやく消えた(原因は特定できないままだが)。朝に体重計に乗る「儀式」はやめ、体重の呪縛から自由になったら体重は増えていない。昼のカンテン・リンゴもやめた。その日に食べたいと思っためん類を自分で作って食べる。これで夕食の食事量が逆に減った。全体としては年齢もあるのだろうが食事量は減り、体重も増えていない。歯の故障もこの頃ほとんどない。歯磨きをしっかりやっているせいだ。健康って本当にありがたい。

10月28日 由利高原鉄道の鳥海山ろく線に乗ってきた。終点の矢島町に行きたかった。本荘で電車に乗る前、本荘市立図書館で調べ物。郷土史料は二階だそうで司書の方から「階段は上がれますか?」とシ言われ傷ついた。矢島では「小番」という日本酒を作っている「出羽の富士」に寄ってみた。そこから郷土資料館に移動し、「矢島の歴史」という本を購入。駅まで戻って待合室で1時間半、早速買った本を読む。この町の歴史はなかなか面白い。佐竹と何の関係もないところがミソだ。事務所に戻ってきたのは5時ちょっと前。充実した1日でした。

10月29日 先週も木曜日は酒田だったが、その前の週も藤里町に行っている。昨日は鳥海山ろく線の旅。平日に意識して外に出るようにしている。無理やりにでも週1回は(山歩き以外に)外に出ようと決めた。いつまで続くかわからないが。

10月30日 あいにくの雨模様だが県南へ。県立近代美術館で「大野源二郎写真展」。大野さんは96歳でまだご存命のようだ。20年ほど前、ご自宅にお邪魔して作品を見せてもらったことがあった。でもこちらの出版の決心がつかず、けっきょく写真集を出すことはかなわなかった。今回は600点の作品が一堂に会した「特別展」だ。やはり「写真のピントが全体的に甘い」という基本的な疑問は解消されないまま会場を後にした。展示作品の大きさがキャビネ版に毛の生えた程度のものだったことに驚いたが、これもピントの問題と関係あるのかもしれない。写真展なのだから最低でも四つ切りほどの大きさが必要だと思うのだが、その大きさにするとピンボケが見えてしまうという配慮だったのかもしれない。構図やセンスはすごくいいのに、大きく引きのばした作品が「ない」というのはやはりちょっと残念だ。写真展の後は湯沢まで足を延ばし両親の墓参り。
(あ)

No.1027

酒の日本文化史
(敬文舎)
横田弘幸

 最近もっぱら晩酌はホッピーだ。この関東近辺でのみメジャーな甲類焼酎が、ビールをあまり飲まない身には実にしっくりくる。この年になってまさか酒の中でも最も安いこの焼酎に収まっていくというのは自分でも驚く。もちろん日本酒も嫌いではない。でも昨今の日本酒は味が多様化し複雑になり高級化の一途をたどっている。このへんが気に入らない。甘口で燗酒がなめらかで、スルスルと喉に入る日本酒が理想なのだが、なかなかそうした酒に出合わない。本書は数限りなくある日本酒の本の中ではちょっと異彩を放っている。その記述の9割が酒そのものよりも日本史に関することなのだ。縄文時代から神話の神々、平安貴族と酒とバラの日々、酒好きの将軍たちの物語から戦国時代の戦術として使われた酒の話。政治家、将軍、庶民に有名人、歴史の中に登場する人物たちが「酒」を軸に語られるのだが、古文書や資料からのその博覧強記ぶりにまずは圧倒される。だから歴史の苦手な人は、たちまちギブアップ間違いなしの本でもある。引用される資料や登場人物の歴史的なバックグラウンドを、ある程度は常識として理解していなければ前には進めないからだ。読み通すのにはかなりの根気と労力がいる。

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