Vol.1036 20年11月7日 | 週刊あんばい一本勝負 No.1028 |
「奥田ロス」に苦しんで | |
10月31日 この3日間、矢島、大曲、横手、湯沢と外に出っぱなし。これだけ外出が続くと飽きがきそうで心配になるが、お泊り外出はまだ自粛中。ホテルに泊まると体調を崩すからだ。夜の読書はあいもかわらず奥田英朗。こちらはまったく飽きることがない。昨日は少年小説「サウスバウンド」に泣いてしまった。読むのが2度目の本も、1度目のことはすっかり忘れているから、ノーブロブレム。いまはただただ読む本が少なくなる「奥田ロス」が怖い。 11月1日 週休3日制を考えていたのだが、よく考えれば「制」などと気取るほどのことでもない。平日の1日、自分の都合のいいときに勝手に休めば週休3日になる。ただし小生は昭和の人間、じっと我慢して事務所で仕事をしているのが「善」と信じ込んで生きてきた世代。休みを取ることに今も罪悪感が付きまとう。仕事の量は減り、デジタルにより仕事の効率化は向上しているのに気持ちだけはモーレツ社員のままだ。どうしようもない。 11月2日 久しぶりに川反繁華街へ。自粛もソーシャル・デスタンスもどこ吹く風で、閑古鳥などどこでも鳴いてない。若者たちが我が物顔で川反をバッコしているのが目立った。「ハロウィン」だったのだ。タクシーの運転手に訊くと「今日はどこの居酒屋も若者で満員」とのこと。心の中では「なにがハロウインだバカヤロー」という気持ちもないではないが、まあクリスマスも似たようなもんだ。 11月3日 晴れ間をみて散歩に出た途端、ものすごい雷雨。爆音と光の乱舞にたじろぎ途中で引き返してきた。雷光が物理的な力を持っているように身体を浮き上がらせるほど衝撃力があった。家に帰り着いたとたん何もなかったように雷雨は収まった。地震も怖いが雷も怖い。家の中でやり過ごす雷はまだ余裕だが、無防備な外で出会い雷はほとんど「凶器」に等しい。家では映画「パンとスープとネコ日和」を観る。映画というかWOWOWのテレビ用コンテンツのようだ。いつものように小林聡美と群ようこのゴールデン・コンビで、実にほのぼの穏やかな作品だった。名作ばかりでは疲れてしまう。このぐらいがちょうどいい。 11月4日 鳥海山・稲倉山荘から「雪が降り出したので店じまい」の連絡。担当者が急いでスタッドレスタイヤに履き替え、車で本の回収のため山荘に向かう。毎年繰り返される行事だが、「今年もやってきたか…」と、一抹の寂しさを伴う雪の便りだ。うちは大量の本をこの山荘で売っていただいている。年々売り上げは下がっているとは言うものの、この山荘でしか売れない本もたくさんある。大切な書店のひとつだ。新しく本を納品できるのは来年のゴールデンウイークの後だ。今年も本当にありがとうございました。 11月5日 いま寝床で読んでいる本は奥田英朗『沈黙の町で』(朝日文庫)。長編の犯罪小説だが毎晩2,30ページずつチビチビと読み進めている。早く読了するのが嫌だからだ。思えば、お盆過ぎにこの著者の『ララピポ』という連作小説集を手に取り、その面白さにすっかりはまった。文庫本で出ている28作品をすべて読もうと決めた。その最後の28作目が『沈黙の町で』で、ようやくここまでたどり着いた。2カ月ちょっとかかった計算だ。ちなみに文庫になっていないのは最新刊の『罪の轍』と『田舎でロックンロール』の2冊でこれは読了済み。問題はこの小説を読み終われば、小生は確実に読む本がなくなる。「奥田ロス」だ。できるだけ食い延ばしをして、それを遅らせたい。奥田本全作品読破はコロナ禍自粛を救ってくれた救世主。救世主がいなくなったら私はどうすればいいのだろうか。 (あ)
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