Vol.1048 21年1月30日 週刊あんばい一本勝負 No.1040

老人力に磨きをかけよう

1月23日 このところ土日は朝ご飯抜き。11時半ごろに朝昼を兼ねたブランチを事務所で自分で作って食べる。といっても食べるのは「卵かけご飯」か「ミソおにぎり」か「お茶漬け」だ。死ぬ間際に食べたいものは、と問われればこの3品のうちどれかを選ぶのかも。ご飯はおにぎりにして冷凍してある。今日はおにぎりを半分にして塩味噌おにぎり、残り半分をお茶漬け。

1月24日 今年に入って2度目の山。秋田空港横にある中央公園のスノーハイクだから正確には公園歩き。森としては秋田県内で一番きれいに整備され、樹木の美しさはちょっぴりヨーロッパを思わせる(映画でしか見たことないが)好きな場所だ。帰りの温泉も楽しみだ。ではいってまいります。

1月25日 午前中でスノーハイク終了。午後からは事務所で料理。定番のヨーグルトを作り、レバニラのレバーを下調理(臭み抜きして小麦粉でソテー)、ローストビーフを仕込み、一切火を使わないポテサラを大量に作り置き。明日の夜のつまみ用に鳥皮をたれに漬け込み、ソーセージもつまみ用に焼いてカリカリにして保存(つまみ用)。卵焼きも作ってみたがフカフカにならず失敗。ほとんどがすぐに食べなくても保存のきくものばかり。カレーライスとカンテンも作っておきたかったが、さすがにこれは時間切れで明日以降に延期。それにしても料理はリフレッシュに最高だ。食べ物を作っていると自然に自分の食欲も抑えられるのもいい。作るだけで満腹になってしまうからだ。

1月26日 巣ごもり需要で本は売れている、というデータある。本当だろうか。うちなどはコロナ禍でピタリと注文が止まったくちなので、にわかには信じられない。おそらくマンガ(鬼滅の刃)やビジネス書の類がたまたま数字を押し上げているだけなのだろう。本が売れるようになるのはいいことだがコロナ禍限定となれば一過性ブーム。これまでどおり地道に仕事をしていくしかない。

1月27日 体調がいまひとつで仕事への意欲がわかない。熱もないし寒気もないのに身体が怠い。年とともに身体が敏感(弱って)になっている。ちょっとした環境変化が身体に反映されてしまうのだろう。昨日は夜に約束がひとつあり、そこの場所まで歩いていくうちに「憂鬱な体調」は吹き飛んでいた。

1月28日 昨夜の月はきれいだった。カレンダーで確認すると満月は明日だ。今日は十六夜(いざよい)で、これは「ためらう」という意味の言葉だそうだ。月が冴え冴えと美しかった昨日はだから十五夜で、満月には「ためらって」十六夜なわけだ。さらに旧暦でいえば今日は「師走(大の月)十六」で、七十二候は「水沢腹堅」。「さわみずこおりつめる」と読む。たった一枚の日めくりカレンダーからいろんなことを教えてもらった。

1月29日 月の満ち欠けを知らせる日めくりカレンダーのおかげで今日の満月が楽しみだったが、あいにくの暴風雪。先日の防災グッズが再登場し大雪と停電に備える日になりそう。このところ気分もイマイチ晴れない落ち込んだ日々が続いている。夜の読書は昔読んで面白かった(ような気がする)長編冒険小説『ワイルドソウル』(垣根涼介)を再読。予想通り無茶おもしろい。これは前に読んだあらすじをすっかり忘れているためなので少々複雑な心境だ。もう新刊はいらない。昔読んだ面白い本を再読すれば事足りる。映画も同じで最近、小泉今日子主演の『食べる女』を観たが2度目なのにずっと楽しめた。もの忘れの老人力というのはすごいパワーだ。
(あ)

No.1040

肉食の思想
(中公新書)
鯖田豊之

 「ヨーロッパ人はなぜ動物を屠畜して食べる一方で、動物を愛護するのか」というのが本書のテーマだ。ヨーロッパ思想の原型を、きびしい歴史的地理的条件が生み出した特有の食生活パターン(肉食)に求め、そこからヨーロッパの歴史を見直すという試みだ。例えば日本の徳川時代、六公四民や五公五民という税制度で虐げられた農民の姿がよく描かれるが、これは水田の異常な生産性の高さによるもの。日本の農民はその生産力の高さゆえに権力者にいじめられたのでは、と著者はいう。逆にヨーロッパ人の肉食率の高さは、風土的条件が穀物で満腹することを許さなかったからだ。ヨーロッパの農民たちが忍従よりも反抗の道を選ぶのは、いつも暮らしがギリギリの淵に立たされていたからだ。さらに高い肉食率を維持するには動物愛護と屠畜を矛盾なく同居させる必要があった。そこから人間と動物の断絶を極端に強調する「人間中心主義」が生まれる。これがヨーロッパ思想の根底だ。ヨーロッパ人の愛情表現が豊かなのは、子供の時から性交渉の見本を牧畜の現場が提供してくれるからだ。愛情表現がおおっぴらになり、その反面、人間の男女の営みが結局は動物のそれと同じであることを思い知らされる。それがカトリックの聖職者独身制を生むまでになる。牧畜文化が生み出した思想こそヨーロパの核心なのだ。

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