Vol.1074 21年7月31日 週刊あんばい一本勝負 No.1066

猛暑一転、恵みの雨

7月24日 暑さのせいか、仕事をする気が起きない。世の人が何かに夢中になるとき、天邪鬼なので仕事に精出すのが常だが、今回はまったく仕事に気持ちが向かわない。ひたすらクーラーのきいた事務所でダラダラと時を過ごしている。さらに読む本はみんなあたり。澤田瞳子『泣くな道真』、堂場瞬一『宴の前』、井上ひさし『十二人の手紙』…。短パンにTシャツだが靴下は履くのが恐怖の暑さだ。

7月25日 2回目のワクチン接種。カミさんも同じ時間予約なので「一緒に行くか」と誘ったら「自転車で行くから」と断られてしまった。接種後、15分間の待ち時間があるが本を読んでいる人が一人もいない。活字中毒者としては前日から読む本は決めていた。『食べものから学ぶ世界史』(岩波ジュニア新書)で、出だしからなかなか面白い。

7月26日 夜中に何度か腕が重く、首筋にも痛みが這い上がってきて、目が覚めた。朝起きたら痛みはすっかり消えていたが、カミさんも首筋が重いと嘆いていた。2回の接種を終えて特段なにも変ったことはない。変わったことをするつもりもない。なんとなく身軽になった爽快さは感じている。重苦しい呪縛からちょっとばかり解き放たれた気分といえばいいのだろうか。家の草むしりをしたら腕や足が10ヶ所くらい虫に食われてしまった。猛烈にかゆい。ワクチン接種終了の爽快感と虫刺されの焦燥感が入り混りややこしい気分だ。

7月27日 ようやく雨。沸騰しそうな大地を冷却してくれる雨に礼を言いたい気分だ。久しぶりに街に出てメガネを直したり、文房具屋を冷かしたり、食材を買い込んだり、と駅周辺をうろつく。今日も雨だが外に出ようと思っている。仕事をしたい、という内的欲求が沸き上がるまでは、逆に机から離れるほうがいいようだ。

7月28日 電子辞書を買い替えた。前のものは15年ほど前に買ったパピルスという機種。今回はカシオのEX−wordで一回り小さくなった。電子辞書は商売道具のひとつ。できるだけ収録辞書類が少なく、ひとつの項目が詳しい、シンプルなものを探して、これに落ち着いた。いま取扱説明書を丁寧に読んでいるところだが地図や音声機能も使いこなせるようになりたいものだ。

7月29日 ブックオフへ。タナざしされた大量の本を見ているだけでめまいがした。「あいうえ順」に並んでいる人気作家の名前の半分が「知らない作家」だったことにもけっこうショック受けた。10年ほど前、職場訪問で訪ねてきた中学生に好きな作家の名前を訊くと、誰一人こちらの知らない作家ばかりをあげられて面食らった。あの時のことを思い出した。こちとら好きな作家の本を読むだけで時間はもう十分たらない。

7月30日 猛暑から抜け出したら、ちょっぴりだが原稿を書く気力が戻ってきた。一番手っ取り早いのは、このブログの「1本勝負」かな。毎週更新される書評コーナーで、現在1065回目だから、まあよく続いたものだ。だいたい1回に3,4本を一挙に書いてしまうから、毎週毎週苦労をするということはない。でも3,4本のストックはあっという間になくなってしまう。平均2か月に1回の割合で日本農業新聞の書評も担当させてもらっているのだが、こちらは「これだっ!」という本でないと書かないことにしている。お金が発生する仕事だからだ。
(あ)

No.1066

つかこうへい伝 1968−1982
(新潮文庫)
長谷川康夫

 新田次郎『孤高の人』は読み始めてすぐに投げ出してしまった。急に読む本がなくなり、ピンチヒッターで読み始めたのが本書だ。一巻本だが820ページの大著。面白くなかったらすぐ放り出そうと慎重に読み始めたのだがページを括る手が止まらなくなった。けっきょく二晩で読了した。同時代人の伝記ということもあるのだろうが、つかと同伴しながら芝居を作ってきた著者の、つかとの微妙な距離感や謙虚さ、時代背景がよく伝わってきた。つかこうへいはアングラ世代後なので、私の時代とはちょっと別世界だ。アングラ世界なら同時代を生きた空気感や息遣いが理解できるが、つかこうへいが出てきたころはもう「古く」なっていた世代である。だから、こちらとは何の接点もない。この本に「知り合い」は出てこないと思って読み進めたのだが、北吉洋一氏が重要な役回りで登場していた。彼とは下北沢でお酒を呑んだことがある。死ぬまでつかのマネージャー的な役回りをした男が秋田大学の卒業生、と書かれていたのにもちょっと驚いた。つかの本のいい読者ではないのだが、少しは興味がわいてきた、かな。

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