Vol.1099 22年1月22日 週刊あんばい一本勝負 No.1091

映画と本の世界にどっぷり

1月15日 「地域文化」という季刊誌がある。B5判32ページ、長野市の公益財団法人八十二文化財団が発行している「長野県の文化や歴史を紹介する冊子」だ。地元銀行がスポンサーなので広告は一切入っていない。中身は充実している。読みやすく、編集の目配りが行き届いている大人の地方のタウン誌だ。無料配布で、もう通巻139号、30年以上続いている。八十二銀行に預金を移したくなる。

1月16日 いつでも映画が見放題で加入した「アマゾンプライム」をやめた、あまり役に立たない。お正月中にTV録画しておいた「ショーシャンクの空に」を観たら面白かった。そこで「八月の鯨」と「灰とダイヤモンド」が無償に見たくなりプライムを探したが、どちらもナシ。ところがライブドア「ぽすれん」を検索すると、こちらは古い映画のほとんどが80円で選び放題なことが分かった。こっちがいい。

1月17日 毎年うるさいほど「融資申し込み」案内が来ていた日本政策金融公庫から、コロナ禍になって何の営業案内もなくなったことにハタと気が付いた。どうして? コロナによる無利子無担保融資で営業どころではない忙しさだった、というのが真相のようだ。新聞報道によれば21年度の倒産件数は57年ぶりの少なさ。政府の支援策でお金が借りやすい環境が続いたためだ。その支援も終わり、いよいよ返済が始まる。今年は一挙に倒産が増えるだろう。自殺率ははね上がり、夜逃げや強盗、心中といった暗いニュースが跋扈する可能性が高い。

1月18日 ゆうちょ銀行が硬貨預け入れに手数料を取ることになったという。ここ1か月ほど、溜まった小銭の便利な使い方を覚えてしまった。散歩や買い物の時、財布ではなく小銭だけを持ち、自動支払機のあるコンビニやスーパーで買い物をする。これだと1200円の支払いをすべて1円と5円玉だけですませることもできるのだ。相手に嫌な顔をされずに、お金を数える手間もいらない。余分に入れればお金は返ってくるし、足らなければマイナス表示で知らせてくれる。だから私の手元には小銭がまったくない。これはこれで寂しいものだが。

1月19日 映画鑑賞や読書は夜のお楽しみだが、晩酌の後ということもあり、観ながら寝てしまうこともしばしば。でも昨日観た「手紙は憶えている」は、瞬きも惜しいほど集中して観た。2015年のカナダとドイツの合作映画で、主人公は90歳の認知症の老人。アウシュビッツで家族を殺され、その復讐のためナチ党員を探す旅に出る物語だ。とんでもない大どんでん返しがラストにあるので、これ以上筋は明かにできないが、やっぱり映画はこうでなくちゃというほど面白い。最後のラスト1秒まで目が離せないストーリー展開ということは茶の間でのテレビ放映では無理だ。

1月20日 「こんなものもらってもなあ」……自費出版の著者から感謝の気持ちですと「おぼん」をいただいた。10年ほど前の話だ。工芸品を模した木製のトレーで長方形の舟型、「定食盆」ともいうらしい。家でも事務所でもおぼんが活躍する場はない。と思っていたのだが事務所でのランチで今やこのおぼんは必要不可欠、なくては食事ができないほど重宝している。毎日このおぼんを使いながら、もし壊れたら、同じものが買えるだろうか……と不安におびえている。

1月21日 映画「八月の鯨」を観た。続けて樋口穀宏「民宿雪国」(祥伝社文庫)を読んだ。この2つの作品の評価が頭の隅に混乱のまま巣くってモヤモヤが今も残っている。「八月の鯨」は高齢の姉妹の別荘での2日間を淡々と描いた名作だが、昔観た時より感動は薄かった。なぜだろう。本は三流映画並みにサスペンスやエロ・グロ、パロディ世界がドタバタで展開し、戦争や差別のシリアスな問題までぶち込んだ「小説界を震撼させた」「驚愕の展開」「衝撃の真相」を帯でうたった小説だ。これもまた映画と同じモヤモヤ感が残った。面白いとは思えなかったのだ。本も映画も読み解くこちらの側の読解力により評価は分かれる。それが常識だが、どうしても先人たちの評価に寄りかかりがちだ。それに「時間の壁」というバイアスもかかる。

(あ)

No.1091

地方メディアの逆襲
(ちくま新書)
松本創

 2018年以降、数年間に話題や議論を呼んだ地方発の報道・作品(新聞3紙とテレビ局3局)を担当した記者やディレクターを訪ね、取材した6本の濃い時間が詰まったルポである。著者自らも地方紙記者として14年勤め、フリーランスに転じて15年、今も地方都市に暮らしているという。防衛省と日本政府の安全保障に転換を迫ったスクープを放ったイージス・アシュア報道の秋田魁新報。沖縄県知事選挙をめぐる大量のSNSによる発信源不明のデマやフェイクニュースを検証、その発信源に迫った琉球新報。京都アニメーション放火殺人事件で、被害者の実名報道に一石を投じた京都新聞。大阪の学校現場から社会の変化を見つめ、愛国教育に傾く教科書や歴史修正主義、教員の自由を縛る条例などを映像ドキュメンタリーとして発信した毎日放送。不都合な現実も、見たくない自画像も、眼をそらしてはいけないと、自社を舞台とする自己検証ドキュメンタリー『さよならテレビ』を放送した東海テレビ。ゲーム条例や高知白バイ事故死を独自の視点で追い、行政や議会を鋭く追及した瀬戸内海放送。……地方メディアの強みとは「現場があること」「時間軸が長いこと」「当事者性を帯びていること」と著者は言う。「地方メディアのリアル」を描いた労作である。

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