Vol.1117 22年5月28日 週刊あんばい一本勝負 No.1109

ペロリと胃カメラをのんだ日

5月21日 1週間が早い。もう週末だ。モーレツに忙しかった頃、1週間が長くて今の半月間にも感じていた。もうそんな時代は来ないのだろうが、あの、いつ終わるとも知れない長い一日が無性に懐かしくなるときもある。今日は明日の山歩き(八塩山矢島コース)のための準備で半日がつぶれてしまった。時間がかかったのは明日からザックを替えるためだ。慣れない用具を使うときは実際に使ってみて、その短長所や身体へのなじみ具合を前日にチェックすること、というのがSリーダーからいつも言われていることだ。

5月22日 今日はSシェフと二人で八塩山矢島口コース。途中雨がポツポツきたが、ブナの若葉が雨を遮って濡れることはない。フカフカの落ち葉の絨毯が山頂まで、約二時間半にわたって続く「秋田で最も贅沢で歩きやすい登山道」だ。不思議なのはこの5年で10回以上は登っているのだが山中で登山者に出会ったことが一度もない。駐車場で他の登山者の車を見かけたこともない。登山道も登山標識も他の山とはくらべものにならないくらい立派なのに登山客は皆無。国際禅堂から登山口まで2・4キロの山道のアプローチがネックなのかなあ。

5月23日 体調は頗るいい。毎朝薬を服んでいるからだ。これを服んでいると逆流が一切ないので食がスムースで体重が3キロ以上増えてしまった。半年間、この薬を試して食道炎が治っているかを内視鏡で確認する日が明日。胃カメラは何度も飲んでいるが慣れることはない。前回は途中で十二指腸をチョンチョンとつつかれて不快感が抑えきれずゲーェゲーェと吐いてしまった。

5月24日 胃カメラをのんできた。あっという間に終わって、ちょっと拍子抜け。食道の潰瘍はほとんど消えていたが、再発防止のため、薬は継続してまた半年間のむことになった。食生活に気を使い、ストレスを溜めない、理想的な生活をすればいいのだろうが、もうこんな年になると、好きなものを食べて、いやなことはやりたくない、というわがままの方を優先したい。

5月25日 県内の田んぼにようやく水が張られた。田起こしの時期はまちまちだが、田植えが始まる時期はほぼこの5月下旬で統一あれている。昔は、といっても10数年前の話だが、5月初めのGWには、ほとんどの農家が田植えを終えていた。なぜこうも田植え時期が遅くなったのか。科学的に稲の生育期間が短縮され、化学肥料の進歩によって丈夫で安定的な栽培が可能になった、というあたりが正解なのだろうが、このへんのことを専門家に訊いてみたいと思いながら時が過ぎていく。

5月26日 毎日好天が続く。水不足も心配になってきた。お天気がいいと布団は干せるし庭の草刈りもはかどる。二階のシャチョー室はもろに西日が当たる。午後からは暑くて仕事にならないほどだ。夜は1時間ぐらいクーラーをかけて部屋を冷やしてからナイター観戦をする。そのシャチョー室にアリが出た。調理をよくするので食べかすが出る影響かと思ったが、どうやら犯人は「つつじの枝葉」のようだ。ここにアリが住み着いて広がった可能性が高い。美しいものには棘がある。

5月27日 30リットルの登山用リュックをもう15年近く使い続けている。そろそろ新しいものを買おうとネットで探し始めた……のだが、やっぱり使い慣れたものを捨て去る気にはなかなかなれない。リュックが体にあってない、とSリーダーからは言われたが、これはベルトの調整が甘い(デタラメ)せいかも、と気が付いた。恥ずかしいのだが、買ってから一度も肩や腰、幅や身丈のベルトをまともにいじったことがなかった。さっそく一つ一つのベルトをチェック、体に合うように何度も調整を繰り返した。すると、あら不思議、ものの見事に体にフィットするリュックに生まれ変わったではないか。いやぁ〜、慌てて新品を買わなくてよかった。
(あ)

No.1109

おもちゃ
(文藝春秋)
常井健一

 GW中に読んだ本は2冊のみ。本書と橋本治『これで古典がよくわかる』(ちくま文庫)だ。どちらも面白かったから不満はないが、本2冊だけというのはちょっとダメだなあ。本書の著者は今が旬のノンフィクション・ライターといっていいだろう。副題は「河合案里との対話」だ。あのバラマキ選挙でマスコミに追われ続けた女性が主人公だ。まるで何事もなかったように無実を訴え、毅然とした態度を崩さなかった彼女の自信が、いったいどこから来るものなのか。ずっと不思議な思いを抱いていたのだが、本を読んで溶解した。なるほどそういうことだったのか。『無敗の男』で高い評価を受け、「政治」や「選挙」に精通した著者は、彼女を「政治におもちゃにされた人物」として位置づけている。事件前後から彼女とは交流があり、事件の真っただ中でも信頼を得て交流があったというのも驚きだが、本書ではその心配な「近すぎる関係」もプロのライターとして絶妙な距離感を保ち、問題をクリアーしている。一見、妻に献身的な(マスコミ的にみる限りは)夫の河合克行の、げんなりするようなダメ男ぶりというか、軽薄な裏の顔が浮き彫りにされるのも本書の読みどころだろう。政治や選挙への関心を呼び戻してくれるきっかけにもなりそうだ。著者の他の作品も読んでみたい。

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