Vol.1118 22年6月4日 週刊あんばい一本勝負 No.1110

ずっとヒマな日が続くなあ

5月28日 あいにくの雨だが金足のある「三浦館」を見学する日。前から予約を入れて入場券を確保したものなので、雨ごときでウダウダしてはいられない。男鹿・無印良品(東北最大の売り場面積を誇るのだそうだ)にも寄り、さらに足を延ばし旧琴丘町にある織田信雄(信長の次男)の配流先も訪ねてくる予定だ。夜も友人との会席がある。というわけで朝からバタバタ。

5月29日 「三浦館」はすごくよかった。建物の保存や管理もガイドの目配りもいい。男鹿の無印良品は最悪だった。広くて品物の数が多いだけで退屈なだけ。旧琴丘町の織田信雄の遺構は当事者が不在で収穫なし。

5月30日 長年の友人Fさんと「みなみ」で一杯やっていると、娘さんからブルーインパルスが秋田上空を飛行する画像がスマホに送られてきた。「えっ秋田で何かあったの?」と二人で考えたが理由がわからない。家に帰って「とうほく絆まつり」の秋田開催を祝してのことと気が付いた。翌日はそばが食べたくなり近所のチェーン店で大盛りを注文。いつもの3分の2ぐらいの盛りしかない。とり間違えたな、と店員を呼ぼうとして、もしかしてこれってウクライナ侵攻による小麦粉値上げの影響? と思い直した。年を取ると世の中とのつながりが希薄になっていく。普通に生きているつもりでも時代を歩む歩幅が小さくなり、知らず知らずのうち世の中から置いてきぼりを食らっていく。

5月31日 昔のように毎日ヒゲをあたることはないが3日に一回は電気シェーバーを使う。シェーバーの欠点はそりのこしが気になること。だから10日に一度はカミソリで顔をあたる。これはそりのこしがなく顔も締まった感じがして気分がいい。同じくらいの頻度で爪も切る。昔こんな頻度で爪を切ったかなあ、と頭を傾げたくなるほど、年を取ると爪の伸びる速度が早まるのだろうか。それとも山歩きをするので新陳代謝がよくなったの? ともあれヒゲをあたって爪を切る。これでなんだか少し生まれ変わったようなフレッシュな気分になれる。

6月1日 NHKEテレの午前10時台に放映される「高校講座」を録画してよく見ている。理系の「生物基礎」「化学基礎」「地学基礎」が好みだ。高校生の頃、毛嫌いしてまったく興味を持たなかった科目ばかり。遺伝子や原子、電子核や宇宙、呼吸や生命、細胞と天気……物理の基礎から生物のイロハまで、複雑ないまを理解するために必要な基礎知識ばかりだが半分ほどしか理解はできない。いっぽう文系は歴史や地理、政治経済などの科目があるが、こちらのほうにはほとんど普通の読書であがなうことができるから放映は無視。とにかく理系の基礎知識が乏しいというよりゼロに近いから、すべてが新鮮で驚きだ。

6月2日 朝から青空だったのに午後からは雨。散歩の時間をとるのも難しい。事務所で雑用を片付けているうち、雨が振り出し、外出は無理だ。いい機会なので仕事場のアリ退治をすることにした。てっきりつつじの花とともに持ち込まれたと思っていたが、そうではないようだ。アリの発生源を突き止めて徹底駆除作戦を遂行することにした。

6月3日 梅雨が来る前に県内のいろんなところに出かけたいと思っている。のだが心身とも「コロナ禍シンドローム」のようなものに侵され、外に出る意欲がわいてこない。なかなか最初の一歩が踏み出せない。昔は書店と映画と飲み屋が外で出かけるモチベーションだった。本はネットで買い、映画は室内でみ放題、部屋飲みがデフォルトになってしまった。毎日の散歩も人に会わないコースを選び日中よりも夜が好みだ。事務所にいても電話もないから、誰とも話さず1日が過ぎていくこともある。
(あ)

No.1110

雪と人生
(角川ソフィア文庫)
中谷宇吉郎

 いわゆる「置き本」(トイレで読む本)だったのだが、途中であまりに面白いことに気が付きベッド横本に昇格させた。これが本当に昭和初期(戦争前後)に書かれた物理学者の文章なのか、何度も驚きながらページを括る手が止まらなかった。文章が瑞々しく、平易で、実にわかりやすいのだ。専門の雪に関するエッセイもおもしろいが、紀行文としても秀逸で、とくに科学とは正反対にある「千里眼その他」や「天地創造の話」「立春の卵」などはクスクス笑いたくなるほど興味深いエピソード満載だ。太平洋戦争のさなか、ある野の発明家が砂鉄から純鉄を取り出す「日本的製鉄法」を発見した。砂鉄の山にアルミニュームの粉を振りかけ、火をつけると一瞬にして純鉄に替わる。魔法のような大発明だった。当時の内閣は驚愕、この発明を国策として取り上げ、東条首相に至っては「これで大戦を賄う鉄は不自由なし」と声明を出している。種明かしをすれば、戦車(鉄)一台を作るために飛行機(アルミニューム)百機をつぶさなければならない詐欺的発明なのだが、戦時下では誰もそこまで疑わなかったという。こんな話が戦後まもなくこの著者の手で書かれているのだ。もしかすれば著者の師である寺田寅彦よりも面白いかも。

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