Vol.1241 2024年10月12日 週刊あんばい一本勝負 No.1233

腰痛抱えて保管庫の断捨離

10月5日 日本の商業捕鯨に関する面白そうな本が出た。早速注文しようと思ったのだが書名が読めない。山川徹著『鯨鯢(けいげい)の鰓にかく』という書名だ。鰓は普通「えら」だが、この本では「アギト」と読む。「鯨に飲まれそうになったが、えらに引っかかって助かった」という意味だ。昔からあるアフォリズム(警句)のようで著者の造語ではない。世界の過激な妨害活動や国際世論の批判のなか、鯨とりをする日本人の最新のルポなのだが、この書名でよかったのか。

10月6日 気になっていた加藤シゲアキ著『なれのはて』(講談社)を読んだ。いくらミステリー仕掛けのエンタメ小説と言っても440ページの大著を読み通すのはしんどい。舞台は秋田市土崎だ。秋田の風土や文化、方言が重要な役割を果たす物語である。油田に関しては知らないことも多く、よくこれだけ調べて書いたものと感心した。著者の祖母が秋田の人らしいが、本人は大阪出身でジャニーズ系タレントだ。秋田には暮らしたことも強い縁もほとんどない。だから物語の肝になる「秋田に関する記述」では、「え?」という箇所が数えきれないほどあった。まあそこまで若い作家に要求しても、と思うが、これが文庫になったり大きな賞を取ったりすると、やはりこのあたりは大きな問題になる可能性はある。たとえば秋田マタギが登場するのはいいのだが「鹿や猪は身近な存在」と書く(どちらも当時の秋田には棲息しない動物だ)。雪の描写や方言の遣い方にも、大きな思い込みの間違いが多い。編集者も若くてノーチェックだったのだろう。エンタメ小説だから目くじらを立てなくても、と思うが、活字の世界はそう甘くはない。あまり売れなかったから問題は隠れたままだが、これが大きな賞でも取れば読者層は一挙に広がる。そうなると多くの人の目に触れ、問題点を指摘する声も必然的に大きくなる。

10月7日 腰が痛い。ストレッチ効果もなく痛みが続いている。どうしたことだろう。これ以上長引くと不安なので、近所の整骨院に行こうと思っている。ここはいわゆる対処療法なので、「痛みをやわらげる」だけで、痛みの原因が分かるわけではない。知りたいのは、なぜ、どうして急に、腰痛が出たのか、だ。疲労が原因なのは間違いないが、ソファーに横になる姿勢が問題のような気もしている。

10月8日 最近の医学研究で、シニアの腰痛は「足腰の位置や動き、方向について感じる動きによる異常」が原因のひとつ、という新聞記事があった。体の位置や角度、動きの情報が中枢神経に送られ、それに応じて自律的に体のバランスを取るのだが、シニアはその「固有感覚機能の衰えで筋肉の動きが遅れる」のだそうだ。ここ1週間ほど、寝床の読書で、いつもと違って分厚い本を持ち上げる無理な姿勢のまま、我慢しながら長時間本を読み続けた。この姿勢と緊張感が体に負荷をかけ、その結果としての腰痛と考えると納得。

10月9日 ついにパソコン購入を決めた。なんだかホッとしている。毎日毎朝、起ち上げるたびにフリーズや速度の遅さにイライラ、その精神的マイナスを考慮すると、お金には換算できないストレスだ。朝からスムースに仕事のスタートが切れないのは大問題だ。といってもパソコンに大きなことは期待しない。とにかく毎日、ブログを書き、HPを更新し、原稿やメールを書き、ストックし、参考資料を保存する。それだけで十分だ。

10月10日 太平山のザブーン周辺に「ニホンジカ」がウロウロしている、という情報を得て、こちらもウロチョロしてきた。角のりっぱな雄獣がよく目撃されているのだそうだ。すごいチャンスだったが、そううまく事は運ばない。シカにはあえなかった。帰りはユフォーレで温泉に入りランチ(天ぷらうどん)。ここのうどんは秋田では珍しい関西風のお出汁でうまい。太平地区はいまが稲刈り真っ最中。途中、無人野菜売り場で、さつまいもと栗とネギを購入。計300円。すごくもうかった気分だ。

10月11日 2階仕事場奥にある保管庫の整理整頓作業。大きく分けて「服」「本」「食糧」の3点の断捨離である。年一回は整理するのだが時期は決まっていない。なんとなくその気になった時が勝負だ。今年は猛暑が過ぎ、衣替えの時期に合わせる形で、2日前にスタート。本当は捨てたくない。必要とする施設や団体に寄贈するのが理想だが、いまは古物をありがたがる処などない。マンガ倉庫のようなところでは有料で引き取ってくれるらしいが、これもちょっと抵抗がある。自分の着た服や読んだ本が「350円です」なんて言われるのは精神衛生上、悪い。やはりゴミとして割り切るしかない。 
(あ)

No.1231

民衆交易―始まりの物語
(ATJ)
編集・発行(ATJ)
 突然、見知らぬ人から本書が送られてきた。サブタイトルは「コトからモノへ、モノからコトへ」とあり、オルター・トレード・ジャパン(ATJ)なるところが発行元だ。バブル崩壊のあたりに、「フィリッピン・ネグロスのバナナ」を輸入し、アジアの貧しい農民を支援する草の根市民運動があったのは知っていた。以後もフランスのゲランの塩、パレスチナのオリーブ、パプアのカカオなど、地元の生産者をレスペクトする形で共同購入を呼び掛け、輸入運動を起こしている組織がATJだ。でも、私とは何のつながりもない。怪訝な思いで本をひも解いて、この運動の創始者が「堀田正彦」さんであることがわかった。堀田さんなら知っている。若かりし頃、黒テントの演出家だった人だ。本によれば黒テント芝居後はフィリピンの民衆演劇交流に注力し、そこから「ネグロスのバナナ」輸入にたどり着き、日本の生協などと組み組織を立ち上げた、とあった。しかし20年12月、逝去。この本は堀田さんの遺稿集だったのだ。たまたま堀田さんの元で働いていた人が秋田出身で、この本の編集にも携わった。彼は生前の堀田さんから「秋田っていえば安倍さんがいるよね」とよく話を聞いていたので、私に本を送ってきた、という経過だったのだ。そうか、あの黒テントの演出家だった堀田さんは、長年にわたってこんなすごい仕事(運動)を続けていたのか。

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