Vol.202 04年7月17日 週刊あんばい一本勝負 No.198


芦川羊子さんらのワークショップ

 ほとんど突然といっていいと思いますが、白桃房という舞踏集団から電話があり秋田市の県立聾学校で公演とワークショップをするので来て欲しい、という連絡をもらい、行ってきました。土方巽が率いた暗黒舞踏の残党のグループです。生徒や父兄と地元のマスコミだけの集まりでしたが、舞台も照明もないところでトレーニングウェアーの五人の女性ダンサと一人の男性が「蓮遥」という物語を踊ってくれました。目の前で、あの土方巽の暗黒舞踏の舞姫といわれた芦川羊子さんがスッピンで踊りだしたのには驚きましたが、ワークショップもよく考えぬかれていて存分に楽しんできました。校長先生の配慮で踊り手の方々と一緒にお昼をいただき、深夜バスで東京に帰るまでの間は、私が案内役を勤めました。市内の美術館めぐりと駅前居酒屋で塩鯨鍋(秋田の夏の鍋)を囲んで、寛いでもらいました。外からは練習中の竿灯のお囃子が聞こえてきて、なかなか風情のある一夜でした。まったく予定外の一日になってしまいましたが、こんなハプニングがあるから、人生は捨てたものではありません。
(あ)
昔の公演ポスターと聾学校の公演

県内を東奔西走中

 7月に入ってからにわかに活動的に県内を動き回っています。事務所にいても積極的に人と会うようになりました。どんな変化が自分にあったのかを一言でいうのは難しいのですが、まあ、いろんなことが重なって、ここしばらく「秋田」という原点に戻って、じっくり仕事をしてみようという気持ちになっています。先週は飯田川球場に高校野球の練習試合を観にいってきました。大曲農業高校太田分校と男鹿海洋高校の対戦で0対5で太田は負けましたが、2週間前に練習を見たときよりも格段に技術が進歩しているのに驚きました。部員が9人しかいないチームで、その半分は自転車部や元部員を借り集めた即席チームです。このチームと農業高校の四季を1年かけて追いかける予定です。次の日は平鹿町浅舞の「あやめまつり」を観てきました。フードファイターなる大食い競争を取材しようと思ったのですが終わっていました。フードファイターって、テレビの影響なのでしょうがアナクロも甚だしいですね。つまらない祭りなので町内に住んでいる「天の戸」の杜氏・森谷康市さんを呼び出して、一緒にお昼、帰りにはあやめからとった酵母で作ったという夏用のお酒をいただきました(氷を一片浮かべて飲むと美味かった)。
(あ)
平鹿町のあやめ娘・試合後の監督の訓示・杜氏の森谷さん

ホタル復活にかけるご近所の人びと

無明舎の近く、秋田大学付属病院の前に幅が50センチから1メートルくらい、長さが300メートルほどの水路があり、「本道プロムナード」と呼ばれる緑化帯に沿って流れています。先日この近くを散歩していたら思いがけない看板があるのに気付きました。「ホタルが飛び交い、メダカが群れる水路にするため環境維持に配慮しましょう」、というような内容が書かれています。以前はかなり汚れ悪臭がして、ゴミが目立った水路でしたがいつの間にかけっこうきれいになっていました。看板には「大学病院前の水辺環境を守る会」(愛称:ホータル会)とあり、問合せ先は秋田市環境部環境保全課となっていましたので、早速市役所に電話をかけ話しを聞いてみました。
 担当者の話では「以前はこの水路でホタルが頻繁に見られたが、周辺に住宅が密集し、水路に流入する水が汚れたりしたため水底がヘドロ状になり、水質も著しく悪化。いつの間にかホタルを見ることができなくなり、メダカもごくわずかしか生息しなくなってしまった。そんな時、地元の人たちが会を作り市役所へ水路改修の要望をしたり、自主的にクリーンアップ作戦をおこなったりした。ちょうど秋田市では平成6年、11年と「ホタルマップ」をつくり、市内のホタル調査をしたりしていたので、この要望を受け水路改修に取り掛かった」というような話でした。改修は流れに緩急をつけたり、近くの大きな水路の水をポンプアップして引き込んだりしたそうです。会でも魚の専門家である秋田県水産振興センターの杉山秀樹さんに来ていただいて勉強会を開いたり、ホームページで会の活動を報告したりしています。この先、ヘイケボタルの幼虫がえさとする「カワニナ」や「タニシ」を増やし、次にホタルの幼虫を放す計画だそうです。この水路は無明舎近くを流れる農業用水路ともつながっているので、ホタルが増えると「タニシ」が多くいる無明舎周辺でもホタルが飛び交うのを見ることが出来るかもしれませんね。
(鐙)

水路工事はコンクリートを一切使わない自然工法で行なわれた

このような看板が2カ所立てられている

今週の花

 今週の花は、リャトリス、スプレーマム、ヒペリカム、ガーベラ、スプレーバラ、リシアンサス、ヒマワリ。ヒマワリは身近な夏の花。ヒマワリの属名ヘリアンサス(Helianthus)はギリシャ神話の太陽神ヘリオスにちなんでいます。ヘリオスに恋した娘がヒマワリになったというギリシャ神話があります。ヘリオスは彼女を相手にしなかったので、彼女は空を駆け回るヘリオスを目で追うだけしかできませんでした。やがて彼女は地面に足が根づいて花になってしまいました。それでもヘリオスの方向を向くことだけはやめなかったため、ヒマワリ(サンフラワー)と呼ばれるようになったのです。実際はヒマワリの花が太陽を追いかけて回るということはありません。日当たりの良い場所であれば東を向いて咲き、そのまま動かないものです。ただ、開花する前には、朝は東、昼は南、夕方は西。つまり、太陽の方向を向いていることがあるそうです。
(富)

No.198

スポーツジャーナリズムで成功する法(草思社)
小林信也

 「職業ガイド風エッセイ」と帯に記されているが、本書の前半と後半は見事なスポーツ・メディア論になっている。いきなり「お笑い芸人は、ある時期から巧みにスポーツを自分たちのステータス・アップに活用し、同時にスポーツ界の人気者たちを配下に収める戦略に乗り出した」という記述には驚ろくが、この一言が本書の性格をもっともよくあらわしている。スポーツジャーナリズムの先輩である沢木耕太郎に対しても、そのファンが多い理由を「彼自身がそうなりたがっている、自分を好きにさせる仕掛けをして、読者を誘惑しているからだ」と言い切る。書き手が主人公である選手よりも輝いているというのだ。同じく山際淳司の「江夏の21球」に対しても「テレビにスポーツ・ノンフィクションを奪われるきっかけになった罪深い作品だ」と容赦ない。あれは「ビデオテープでもう一度文学」で、それがきっかけでスポーツライターたちの生息範囲が一挙に狭くなった元凶、という考え方なのである。大晦日に、もしかしたら致命傷を負うかもしれない格闘技を放送して人気女性アナウンサーに「ワクワクします」と言わせて変だと思わない国の現実だ、と著者は言う。メディアおよびジャーナリストにぜひ読んで欲しい本である。

このページの初めに戻る↑


backnumber
●vol.198 6月19日号  ●vol.199 6月26日号  ●vol.200 7月3日号  ●vol.201 7月10日号 
上記以前の号はアドレス欄のURLの数字部分を直接ご変更下さい。

Topへ