Vol.203 04年7月24日 週刊あんばい一本勝負 No.199


土崎みなと祭りに行ってきました

 土崎みなと祭りに行ってきました。正直なところお祭りにはあまり関心が無いのですが、この日は永六輔さんの「私とカスベ」という講演が土崎公民館であり、それを聴きがてら、評判の高い曳山祭りの初めての見学となった次第です。まあこんな機会でないと死ぬまで行かないかもしれません。若い人たちの参加が多くて驚きましたが、これが現代の祭りの特徴なのでしょう。若者がソーラン節を現代風にアレンジした踊りなどは、そのウソ臭さにゲンナリしますが、まだふるさとを思う心が生きている分だけ土崎のほうが増し、とだけ言っておきましょう。それはとにかく永さんの講演は無料でしかも秋田大学が主催と言うユニークなものでした。これは関係者から永さんの講演を引き受けてくれる先を探して欲しいという要請があり、私どもが独立法人になったばかりの秋田大学に話を申し込み、実現してもらったものです。講演後の永さんとも久しぶりでお会いしお話してきました。なんかこのごろ毎週のようにいろんな人と会っていて、けっこう刺激的な日々が続いています。
(あ)
土崎にて

市内で2つの面白そうな個展開催中!

 秋田市内で「これは見逃せないな」という個展が二つ開催中です。おひまな方はぜひ足をお運びください。一つは恒例の本荘の陶芸作家・倉田鉄也氏の夏の作陶展です(アトリオン・7月23〜7月28まで)。倉田さんとは学生時代からの付き合いで、年1回の個展では(低予算ですが)作品を買うことを心がけています。一人の作家の作品を毎年一個ずつ買い、それを年代順に並べてみると作家の精神遍歴が一目でわかります。こんな楽しみ方もあります。
 もう一つは荒川尚也さんのガラス展です。荒川さんという方は存じ上げていないのですが、京都の人のようです。これは「カナル・グランデ」(7月16〜8月8まで)というガラス・ワークス作家専門のギャラリーです。このような専門ギャラリーがあるのは地方都市では珍しいと思うのですが、あまり話題にならないのが寂しいところです。ここで私は何度がすばらしいガラス作品と出会い、ガラスに対する蒙を啓かれました。この人も十分期待できそうで、今日あたり出かけてみるつもりです。今年の夏はクーラーの下でウジウジするより外に出てガンガン汗をかく、というのがテーマです。
(あ)
案内ハガキ

No.199

ここがホームシック・レストラン(文春文庫)
A・タイラー

 不覚にも平安寿子(たいらあずこ)の小説を数冊読んだあとにアン・タイラーの出会った不届き者である。平の本の著者略歴にはかならずペンネームの由来が書かれていて、そこでこの著者の名前を知ることになる。タイラーの小説の主人公はいつも中高年の女性で、ほとんど事件らしい事件は起きない。延々と主人公とその周辺の日常があたたかくときにユーモラスに精緻に描写されていくだけである。読み終わるとなんとなくホッとして、また次の作品が読みたくなる。なんとも不思議な味わいをもっている作品なのだ。平はこの味わいを「西洋落語のような、おかしみのある包容力」という言い方をしている。老境にさしかかって「これで自分の人生はよかったのか」と疑問をいだく主人公。ここまではよくある設定だ。がタイラーの小説では、その解決策も事件すら提示されず、ひたすらどうでもいいような日常のドタバタが描かれる。『あのころ、私たちはおとなだった』では、初恋の相手との劇的な再会という珍しくドラマチックな場面が登場するのだが、そのトキメキは突然、何の理由も脈略もなく主人公が(説明なしに)舞台から降りてしまうことで終わる。読者は逆にこの意想外の展開に引きずられ、ページをめくる手を止められない。「タイラーははまると怖いよ」という人が多い。このまま読み続けるか、小生も迷っている。

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