Vol.565 11年9月10日 週刊あんばい一本勝負 No.559


夏休みは信州・白馬で

ちょっと遅すぎるような気もするが、ともかくも夏休みがとれた。
別に休みなんかとらなくても、週末には必ずどこかに出かけているし、その都度、用事があれば外に出ている。現にこの1週間前も東京、長野に2泊3日で小旅行(仕事がらみだが)している。
それでも「夏休み」はちょっと別。この魅惑的な言葉の響きに誘われ、5日間も休みをとってしまった。春先から仕事が忙しく、その仕事のピークは通り過ぎたが、ここで思い切って仕事から自分を引きはがしてしまうためだ。
このままダラダラ机の前に垂れこめていると、忙しさの波がまた近いうちに襲ってきて、けっきょくどこにも出かけず仕事三昧、というのはこわい。

9月7日(水)朝6時、車で出発。酒田で友人夫妻を乗せ長野県白馬村へ。ここで大阪から来た友人も加わり、4人でペンション「500マイル」に投宿。自分の車でこんなに遠出したのは初めてだ。酒田のカメラマンSさんの義弟が経営するペンション500マイルはスキー宿、予想よりもずっと大きくてきれいだ。ここをベースキャンプに3日間、白馬周辺をトレッキング三昧の予定。
8日(木)今日は栂池高原を歩いた。白馬岳の大雪渓のみえる場所までトレッキング。2932メートルのこの山頂を「いつか登ってやる」と思うのだが、そのあまりの巨大な山容に怖気づいてしまった。
数年前、高校、大学時代に何度かここのスキー場でアルバイトしていた息子は何度か登頂している。電話すると「大雪渓の落石がひどくて、山頂ではテントが吹き飛ばされた」とのこと。やっぱり自分には無理かな。栂池はまだいろんな花が見られた。
9日(金)昨日に続き天気が良い。今日は戸隠、鬼無里方面を歩く。塩の道をのぞき、奥裾花自然公園を散策。女性陣から「獣(クマ)の匂いがする」とのアピールがあり、早々と散策を切り上げる。戸隠でそばを食べ、鬼無里をブラブラ。
10日(土)今日も快晴。申し訳ない。今日は白馬五竜へ。テレキャビンを使い小遠見山(2007メートル)へ。初級のトレッキングコース。テレキャビンの登り口にトランポリンをする若者がいた。その横にプールが? スキー場にトランポリンとプール。山から下りてくるとモーグルの選手たちが練習していたのでようやく意味が分かった。そうか、ここで上村愛子らが練習していた訳だ。午後からは姫川源流を散策。
11日(日)朝早くにオリンピックのジャンプ台を見に行ったら、運よく高校生たちが練習中。ノーマルヒルのジャンプを見ることができた。大阪の友人を駅に送り、一路、酒田へ。6時間で酒田着。いつものホテルに投宿し、夜は友人夫妻と、これまたいつもの中華料理「香雅」で打ち上げ。

とまあ、以上のような夏休みでした。
(あ)

No.559

半島へ
(講談社)
稲葉真弓

きれいな装丁だし、中身の本文も精興社活字で目に優しい。「半島」というのが志摩半島のことだというのも、なぜか新鮮だ。ふつう志摩半島のことを書くのに「半島」という書名は使わない(使えなない)。「秋田」について書くのに「雪国」とか「地方」と言いきる居心地の悪さ、とでもいおうか。読了するといい書名だとわかる。別れた男、親しかった友人の死、同じ場所を周回するしかない変化のない日々に、著者はどこでもいい逃げ出す場所を欲していた。そんなとき人間のにおいのまるでない、鉱物のかたまりのような無機質な崖に出会い、そこの土地に家を建てる。その家での四季を綴っている。ちょっと毛色の変わった、静かなアウトドア小説のようにも読めるし、作家の深い内面を家づくりからつづった移住物語風にも読める。50歳を超えた独身の女性作家が主人公である。そこも新奇で、興味そそられる。この作家の本は昔からよく目にしていたが読みたいとは思わなかった。テーマが多岐にわたり、何を書きたい人なのかよくわからなかった。よく日本酒のことを書いていた時期もあったような気がするし、ジャズ・サックス奏者の阿部薫のことを書いたのも、この人でなかったかしら。作家は、最後にはやっぱり自分のことを書く。そこにしかリアリティはない。このテーマには得心がいった。静かな物語が好きだ。

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