Vol.651 13年5月11日 | 週刊あんばい一本勝負 No.644 |
作家の初版が3千部を切る日は近い | |
5月5日 GWはなにもする予定がない。ただひとつ残雪の鳥海山祓川コースを山頂まで登ること。これだけがGWの目標だ。3日は荒天で中止、今日に延期になった。一週間前から酒を控え入念にストレッチ、節制を心がけてきた。いわば一年の山行のハイライトだ。昨夜は9時に床にはいり、体調は万全。絶好調で登り始めた。予想通りものすごい風。風速15メートルほどで、立っているのがやっと。8合目七ツ釜避難小屋で頂上に立つのは危険とあきらめた。今年一番といってもいいベストコンデションだったので無念。自然には勝てない。近いうちにリベンジを。 5月6日 愛読書に宮本常一・大野晋編『東日本と西日本』(洋泉社)がある。折に触れ、この本を紐解いて日本列島の多様な歴史世界に立ち返るようにしている。常識や唯我独尊を戒めるテキストだ。これはある別の本だが葬儀の際の遺骨の引き取り方が東と西ではまったく違うという記述があった。東日本では火葬処理された遺骨は「全骨収骨」で遺族が引き取る。これが常識かと思っていたら、西日本では「部分収骨」が基本で、喉仏や頭蓋骨以外はゴミ同然というのだ。骨壷も東と西では大きさが半分以上違う。これは知らなかった。同じ県内でも南と北では葬儀の仕方が微妙に違うことを指摘する人もいる。なぜ違いが生まれるのか、知的好奇心を刺激するが、それを知るには東西や南北の歴史を、ちゃんと学びなおす必要がある。 5月7日 一日中雨。散歩にも出られず、だらだら原稿を書いて一日が過ぎてしまった。最低1日1万歩は歩かないと睡眠が浅くなる。2日前、鳥海山8合目まで登っているので疲労はあるはずだが、散歩しないと眠りはやっぱり浅い。散歩の効果が大きいことを実感。体重も散歩の有無と大きくかかわっている。散歩すると確実に0.5キロは違う。その体重だが、いまだに10キロ減の壁の前で右往左往中。朝食の後に計るのだが、このごろはご飯を食べている最中に、今日は0.4キロ増か、といったあたりまで判断がつく。誤差は0.2前後か。お尻の肉の薄さ厚さが毎日ビミョーに違うから、その感覚で体重の目安をつけられるようになった。 5月8日 昔から「ささくれ」がよくできる。医学的知識がなかったころも、ささくれができると「あれッ、生活が荒れはじめてるな」と思っていた。栄養バランスが悪くなると肌が乾燥し、指の爪先が細かく割れてくる。なんとなく身体の異変からそのことは理解していた。ダイエットのせいもあるのか、最近しょっちゅうささくれができる。ちっちゃいくせに、これが痛い。じゃまくさいけど抜くのは菌や雑菌が入るので厳禁。消毒液をつけて絆創膏というのが一番効果的。何のビタミンやミネラルが不足なのか、原因究明をしたい。 5月9日 久しぶりの快晴。朝から気分がいい。天気がいいだけなのに、この単純さは雪国生まれでなければわからない。午後からは仙台だ。1泊するだけだが電車で読む本の選択に昨日から迷っている。読みかけのおもしろい本が複数ある。電車の中では普段読めない(読まない)「意外性」のある本を読みたい、というヘンな欲望もある。荷物が重くなるのは嫌だが、今回は谷崎潤一郎『細雪』文庫一巻本に決定。1千ページもあるが、すでに上巻部分は読了。早く続きが読みたい。しかし美しい四姉妹の延々と続く関西弁の見合い話と、電車の中で根気比べするのも、どうなのジブン。 5月10日 仙台に着いた途端、あまりの暑さに、チェックインしたホテルでモモヒキを脱いでしまった。去年の秋からはきつづけ重宝していたのだが、そろそろ限界かな。モモヒキのおかげで季節の変わり目に風邪をひかなくなった。はくようになったのは還暦まじかになってからだ。そのせいか愛着一入なのだ(山のグループ名もモモヒキーズとつけたほど)。例の「ささくれ」は、著者のHさんから「コラーゲン不足では」というメールをいただいた。サプリメントの効用はあまり信じていないのだが、Hさんがいうのなら信憑性がある。さっそく明日にでも試してみよう。仙台にはある大学で講演のようなことをしてきたのだが、夜は大学関係者と深夜2時過ぎまで飲んでしまった。少し二日酔いだ。 5月11日 最近読んだ新聞記事でショッキングだったのが作家・大沢在昌の発言だ。リーマンショック・震災を経て、小説は半分程度まで部数がガタ減りした、というのだ。この「新宿鮫」の作者は「(初版)4千部の壁がある」とまでいう。ベストセラー作家たちの初版が4千部というのは驚きだ。業界の隅っこで生きているので知らなかったが、少なくとも初版5〜8千ぐらいは出ているだろう、と思っていたからだ。ある意味、出版不況(衰退)の波が呑みこんだのは「作家という職業」だったのかも。大沢は自分の本の電子化についても「小さな希望だが、それにしがみつくしかない」と言っている。電子書籍への、これが作家の正直な距離感だろう。初版4千部では作家という職業は成り立たない。 (あ)
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