Vol.649 13年4月27日 週刊あんばい一本勝負 No.642


やっぱり旅より日常のほうがが、いい

4月20日 リースで使用している電話機やコピー機、車などが何年か経つと、そろそろ新機種を、とセールスマンがやってくる。何も考えずセールスを信じて新機種に買い替える。昨日もコピー機セールスがやってきた。たまたま来ていた印刷所社長が同席して「お前は安易にセールストークを信じ過ぎ」と怒られてしまった。「リース」と「機能」の意味をコンコンと諭され即決を戒められた。ノーテンキな人任せ人生を、深く反省。身近にこんなふうに叱責してくれる人がいなかったので唯我独尊、世間知らずに生きてきたツケや垢は知らないうちにけっこう溜まっている。じっくり考えて物事を決める癖を付けなければ、いつか火傷をする。

4月21日 「山の学校」開校式。式の前にお隣にある筑紫森に。雪のない山はいい。スパイク長靴から開放され、土の感触を確かめるように味わうように歩いてきた。雪が解けたばかりで、登山道には至る所に真っ黒なクマのフン跡。もともと彼らの棲みかとはいうものの、こんなに跋扈しているのか! クマの居場所にお邪魔している、という意識を常に持たないと、危険だ。開講式後、日ごろお世話になりっぱなしのSシェフを誘って「和食みなみ」で食事。いよいよ私たちの山シーズンがスタート。この日のためにダイエットしてきた。がんばるゾ。

4月22日 毎日、目まぐるしく天候、温度が変わる。朝起きて、カミさんに今日の最低と最高気温を訊くのが日課だ。それで着る服を決める。最近は山の緊急用ダウンジャケットの世話になっている。山用なので軽量だが保温効果は抜群。値段もかなり高かったのだが、ザックの奥深くしまいこまれ、年に2,3度しか使わない。それを普段着として毎日愛用することにした。おかげで、しまい込んだ冬物衣料をあわててひっぱりださずに済んでいる。外出にも仮眠にもTV鑑賞でも大活躍。ほとんど使わないのに山用品は品質がいいせいか高価だ。ダウンはその典型。でもこれでやっと元をとった気分。

4月23日 今日から酒田、東京、仙台と3泊4日の出張。ダイエット中なので、旅に出ると暴飲暴食が心配。帰ったら1キロ増、ぐらいのところで踏ん張りたい。先週木曜日(18日)から一日の休刊日もなく飲み続けだ。これに旅という名の宴会が続く。夜にはその土地の人と呑むのが「出張」の正体だ。飲む前に野菜をたっぷり食べること。食後のデザートは禁止。日本酒をできるだけ飲まないこと(カロリーが高いので)。そう心に決めているのだが果たしてできるだろうか。昔に比べて、旅に出ても羽目をはずして暴飲暴食することは少なくなったが、まだまだ自制が足りないからなあ。

4月23日 酒田は好きな街。今回は山形新幹線を利用する関係で新庄の街も歩くことができた。それにしても山形で地元紙・山形新聞を読んでいると切り抜きたくなる興味深い記事がいっぱいだ。新聞切り抜き用カッターを忘れてきたことが悔やまれる。今日の一面トップはサッカーJ2のモンテディオ山形堀之内聖選手のゴール。彼は元浦和レッズの選手で、浦和サポーター女性の本を出したとき、帯文を書いてくれた人だ。実際に会って、その太ももの太さに仰天した覚えがある。それ以外にも食文化の話題や新刊案内で『山形の商人』なる本が出たことを知る。これはぜひ読みたい。家具のハーマンミラーのポスター展も天童であるらしい。変な県だなあ。

4月24日 いつものように神楽坂・出版クラブで地方小出版流通センターK社長とランチ。その後、仙台に向かうため東京駅まで歩いた。東京はどこに行くにも徒歩だ。途中、靖国神社前でテレビクルーを引き連れた小柄で顔の大きな芸能人とすれ違った。加山雄三だった。「若大将シリーズ」をすべて観ているほどのファンだが、背が低いのに驚いた。思ったより痩せているのも意外だった。東京駅ではマジックのナポレオンズの片割れが夫婦で買い物をしていた。もう一方の相方とも去年この辺の路上ですれ違った。よほど縁が……ないか。けっこうミーハーなので芸能人に限らず作家や学者など有名人を発見するのが得意だ。特技ではないか、とさえ最近思い始めている。

4月25日 仙台は雨。雨が降ったからではないが三越でレインコートを買う。サンヨーのもので前から欲しかった。体重が落ちて体形が変わりつつあるのだが、もともと洋服サイズはちょっと小さめ。まだ新しい服を買う必要に迫られていないのは幸運だ。昔から「インターメッツオ」という服を愛好している。レナウンが作っているのだが、レナウン自体が中国かどこかに買収されてしまった。そのためか秋田にも2軒ほど店があったのだが今はもうない。仙台に行かなければ買えなくなってしまったのだ。が、今回はその仙台のデパートでも店を見つけられなかった。モンベルの店にも出かけ、いいレインコートを見つけたが、何でもかんでもアウトドア用で間に合わせるっていうのも不精極まりない。サンヨーのレインコートは海外のブランド物よりシックだ。

4月26日 ようやく出張から「帰還」。いつも通りルーチンな日常に戻り、身も心もリラックス。旅に出るのがおっくうなのは毎日判で押したように繰り返される日常をかき乱される不安のためだ。やっぱり「判で押した日々」がいい。今日は雨。非日常から日常に戻ったその日が雨、というのもなかなかいい。昨日までの旅の興奮が洗い流され、心がざわつかず、しっとり濡れている。昨日仙台で買ったサンヨーのレインコートを着て駅まで散歩をしてみようか。夜は何を食べようか。出張から帰った日は、どんなに遅くなろうとも旅の後始末はしてしまう。だから旅の次の日は新しい気分で「怠惰で自由で平凡な日常」を迎えることができる。目新しいことが何も起きない、というのはステキなことだ。
(あ)

No642

カラスの教科書
(雷鳥社)
松原始

この本は楽しかった。本の厚さ(ツカ)は35mm、普通の本のちょうど2冊分ある。ものすごいボリューム感で、これが全部カラスの話、だいじょうぶか、ジブン? が、これは思いすごしだった。読みはじめると5時間もあればすっきり読了できた。とにかくカラスに興味のない読者でも、「中高生」でも「専門家」でも、どんと来い、という広範囲読者層をターゲットにしてカバーした珍しい本だ。専門書っぽいのに「専門領域」の言葉や内容に一切立ち入っていない。高度な知識を披瀝したり、ムダな難しい文献引用が一切ない。すべて等身大の体験記であり、お茶目な著者自身の自分の言葉で語られている。誰でも読める「カラス見聞録」を目指したのが成功している。著者は京都大学で動物行動学を専攻、現在は東大の総合研究博物館勤務。研究テーマはカラス一筋で趣味もカラスだそうだ。でなきゃ、こうしたわかりやすい本は書けないだろう。「こうした」というのは年齢や性別をこえた「分かりやすい教科書」を書く能力のこと。じつはここが理系の人たちが最も苦手とするところでもある。自分の理解したことを、かみ砕いて素人にわかりやすく伝えるのは、文系理系にかかわらず難しい作業だ。章立ても見事だ。「基礎知識」「餌と博物学」「取り扱い説明書」「Q&A」の4章からなり、本書を読めば、町で見かけるカラスが「ハシブト」か「ハシボソ」か、一目でわかるようになる。

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