Vol.701 14年4月26日 | ![]() |
本屋に行ったり、本を読んだり、少し余裕が出てきたかな | |
4月19日 若者はもっぱら邦楽ばかりで、洋楽を聴かなくなっている、とラジオでDJがしゃべっていた。地球がどんどん狭くなっているグローバルな時代に、これはちょっと意外だった。たまに日本の若者の音楽であるJポップを聴くと歌詞のあまりの幼稚さに鳥肌が立つことがある。中学生の文集のような抒情的「ポエム」を「私生活ストリップ」のように高らかに歌い上げる。オイオイという感じだが、どうやらこうした臆面のなさ、感情過多、演出過剰の元凶は巨匠・相田みつおセンセらしい。この流れを加速させたのが東日本大震災の例の「こだまでしょうか」のCMではないか、という面白い論考をいま読んでいる。もう一度ちゃんと読みなおしたら改めて本の紹介をするつもり。年に1度はこうした面白本に出あわないと、読書も飽きてくる。本はやっぱり刺激的だねえ。 4月20日 日曜日なのに珍しく山行なし。思い切って飛島まで1泊旅行。ずっと青空、ひとり旅休日を楽しんできた。酒田も飛島も大好きで、年に数回は訪れる。この季節は格別に、いい。南洲神社もじっくり見てきた。土門拳記念館も行くたびに出し物が違って楽しめた。長い間、古びることなく感動を与え続けてくれる「箱モノ」って、ほとんど奇跡。酒田滞在中はずっと青空で鳥海山の威容がすぐ横に。まるで鳥海山を見るために出かけた旅のような印象すらある。大きくて力強くてかっこいい。特に飛島に行く船のなかからみる海の上に立ちあがる鳥海山は圧巻。 4月21日 酒田で必ず泊まるのが「リッチ&ガーデン」というホテル。値段はそう高くはないのだが、駅からかなり離れているので、足のない人には不便かもしれない。そのホスピタリティもさることながら、ここの朝ごはんが、いい。よくあるバイキング形式だが、ほとんどの食材が地元農家の野菜をつかった料理が主だ。徹底して野菜がメインなのだ。これがメチャうまい。ランチのバイキングもあり、近隣から宿泊客でない地元の人が食べにくるほどだ。夕食もバイキングで、これも野菜料理が主。とにかく野菜、野菜、野菜なのだ。1日の3食ともこのホテルのバイキングを食べたことがある。まったく飽きなかった。丁寧に上品にシンプルに調理された野菜料理のすごさに打ちのめされた。今日の朝もたっぷり野菜料理。満足、満足。 4月22日 一人で仕事をしているときは事務所を不在にすると不安で、いつも机の前にじっと垂れ込めていた。そっちのほうが好きなこともあるのだが、新人が入ったために環境がガラリと変わった。こちらが事務所にいると、それだけで威圧感や窮屈さで新人は押し潰されそうになるのでは、と余計な気を遣ってしまう。GWはいつも事務所で仕事をしていたが今回からは外に出る予定だ。新人も一人で仕事をこなさなければならなくなると責任感が芽生え、成長するはず。つい数か月前、一人ぽっちの事務所で、鼻くそをほじくりながら、孤独な仕事をこなしていたころのが懐かしい。解放感とリラックスに満ちた環境で、なんだか理想郷のような空気感さえあった。あの理想郷は幻だったのだろうか。 4月23日 馬の顔が長いのはなぜか、知ってます? 昨夜、本村凌二著『馬の世界史』(中公文庫)という本に書いていた。目と鼻が離れているのは草を食べながらでも周りに注意を払うことができるから。馬は哺乳類・有蹄類。肉食動物から逃れるために指の爪先が進化した「ひづめ」を持っている。有蹄類はすべて草食動物だ。温厚な動物である馬は逃走するしか武器はない。よって周りに注意深くなり、知的になり、好奇心が強い。縄張り意識が希薄で、攻撃性がなく、依存性が強い。これが人間と共存(家畜化)できた理由なのだそうだ。この本では馬を家畜化しなければ「21世紀も古代にすぎなかった」とまで断言している。こういう本を読みだすとやめられなくなる。寝不足が怖い。 4月24日 自分でもどういう心境の変化なのかよくわからない。駅前の本屋さんに衝動的に本を買いに出かけた。ネットで買うのが常態になっているので本屋さんに行くのは久しぶり。ネットで本を買っていると、どこか大事な本を見逃しているのではないのか、という不安が頭をもたげてくる。いや、好きな本だけしか買わなくなる、といったほうが正鵠を射ているかも。少なくともこの業界でご飯を食べさせてもらっているのだから、守備範囲は広くあるべきだ。ということで駅前大手書店内を1時間ウロウロと彷徨。買った本はしめて9冊で出費は8千円弱。けっきょくはベストセラーコーナーと文庫本のチェックのみで、湯あたりならぬ「本あたり」。でもネットでなら絶対買わないな、という本を選ぶことができた。これでGWも読む本の心配をしなくてすみそうだ。 4月25日 まったくの勘違いや偏見を持っていた言葉に2つ出合って目からウロコがおちた。名古屋大学出版会は業界ではレベルの高い学術出版社として高名なのだが、実は名古屋大学の出版部ではなく名古屋の周辺大学の出版部、という意味だそうだ。もう一つ、芸能界の定番のあいさつ「おはようございます」は、上下関係をはっきりさせるための用語で、言われたほうが「あ、おはよう」と受ければ、自ずとその関係がわかる。それが「こんにちは」や「こんばんは」にはその返答バリエーションがないため、「おはようございます」1本に絞られていった、という。これらは小谷野敦『頭の悪い日本語』に書いていたこと。 (あ)
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