Vol.818 16年8月6日 週刊あんばい一本勝負 No.810


諸悪の根源はクーラーのようだ

7月30日 リオ・オロンピックが近い。サッカーW杯のブラジル開催の時もそうだったが、日本から行く応援団は本当に大丈夫なのか心配だ。飛行場を降りた途端、リオ名物の泥棒たちは獲物である日本人を狙っている。なんとなくチャラい若者や体力のない老人、着飾っている女性や重い荷物を引きづる物見遊山オヤジは間違いなくカモ。奴らはずっと観察して、こいつは大丈夫と判断したところで襲ってくる。襲う場所も逃げるポイントも仲間との連携も警察対応も身体に刷り込まれ、準備万端で襲ってくるのだ。狙いをつけられたら防ぎようがない。泥棒にあってもだれも同情はしてくれない。殺されなくてよかったわねえ、と真剣に励ましてくれるお国柄。ブラジルの中でもリオの犯罪率は群を抜いて高い。殺されなければラッキーか、と今は本当に思っている。

7月31日 今日は鳥海山(七高山)にチェレンジする予定だったが、矢島の自転車レースがあり祓川は通行止め。やむなく鳥海山の支山(こんな言葉あるかなあ)笙ケ岳に登ることになった。故藤原優太郎さんが大好きだった山だ。数年前まではスイスイと問題もなく登れた山だが今日は暑い。大丈夫だろうか。3リットルは飲む水はすべて凍らせて持参した。これが登り始めてもいっこうに解けてくれなかった。水が飲めない状態で30度を超す猛暑の中を登る羽目になったのである。水がないと笙ケ岳もまるで北アルプスの高峰(行ったことないけど)のように感じてしまう。何度山に登っても、必ず何かしらのミスを繰り返してしまう。猛省。

8月1日 暑いですねえ。例年より暑さが堪えるのは年のせい。昨日の山行(笙ケ岳)でも3リットルの水を消費。4リットル近い水をリュックに入れているのだから、それだけでも体力は奪われる。昨日の山行ですっかり体力に自信が持てなくなった。山行から帰ってきたら家や事務所は不要物を整理した後なので実に居心地いい。クーラーも効いている。でも、さして難儀でもない山で苦労したのを暑さのせいにしたが、これはクーラーに慣れ切った怠惰な身体が根本原因なのかもしれないなあ。

8月2日 朝シャワーなんて久しぶりだ。気持ちいい。朝からぐんぐん温度が上がり湿度も高い。部屋に軽く掃除機をかけている間に汗びっしょり。そこでシャワーとなったわけだが、山行後のビールのように身体をリフレッシュさせてくれた。快楽だ。だからめったなことに朝シャワーはしない。昼からビールなどの酒類を飲まない。山行後にアイスを食べない。ご飯と卵のお変わりはしない……どうでもいいようだが、快楽に淫するタイプなので制約を作って自分を縛る。今日の朝は不快指数が100から一挙に20くらいまでダウンした気分。

8月3日 昨日今日と一人暮らし。肉を食いたくなったので肉屋さんでステーキ肉を買ってきた。焼けばいいだけだし、夏バテだし、これで元気が出そうだ。500グラム買ったが全部食べるのは無理。半分を一口ステーキに。焼いてから気づいた。自分でステーキを焼いてうまくいったためしがない。ミディアム・レアを目指して焼くのだが出来上がりはいつも黒焦げかレア。ステーキは最も難しい料理、と食べる段で気が付いた。でも一口ステーキはおいしかった。肉質がいいのだろう。仙台に行くとよく「いきなりステーキ」に行く。そこで300グラムを注文、焼き方もカットもいいのだが、肉の味はいつも「うすい」。あれは肉質に問題があるのかも。

8月4日 来客があり外に出た。竿燈の真っ最中でホテルのロビーは立錐の余地もない。さいわいなことに飲食店はけっこう空いていた。駅前も川反も静かなのが意外だった。川反のバーでは隣に若者が座った。若い人が来るような店ではない。話しかけたら20歳の医学生。ウイスキーが好きなの? と訊くと「バーテンダーに興味がある」とのこと。知らなかったが『バーテンダー』というコミックがよく読まれているのだそうだ。彼はそのコミックを高校生の頃から読んでいて都内のホテルのバーから始まり、バーとなると必ず入ってしまうのだそうだ。漫画の力ってすごい。店の見習いバーテンダーも20台だったので二人でその漫画の話に興じていた。飲んだ酒はアイラ島のオクトモア。あの正露丸のような味のウイスキーで、その中でも銘酒中の銘酒といわれるものらしい。うまかったが、少し敷居が高い。締めは「岩井」という長野で作っているジャパニーズ・ウイスキー。たまにはウイスキーもいいよ。

8月5日 頭が痛い。気分が晴れない。身体が思うように動かない。暴飲暴食はしていないし5キロ散歩も欠かさない。でも食欲はない。暑さだけが原因なのだろうか。考えられるのは、やっぱりクーラー。1日中こもっている2階のシャチョー室は西陽がひどい。夏は40度を超えてしまうほど熱がこもる。だから数年前までは使っていなかった。熱遮断の窓サッシを導入し日中はブラインドを開けず、クーラーをマックスにして、この10年どうにか使い慣らしてきた。このクーラーギンギンが身体に深刻な影響を与えているのではないのだろうか。心配になり昨日午後からクーラーはやめ。というかマックス25度設定で、できるだけ使わないことにした。今日の朝はそのせいか体調は悪くない。
(あ)

No.810

さらば、政治よ 旅の仲間へ
(晶文社)
渡辺京二

参議院選挙の前の日に読了。その影響もあってか選挙結果に一喜一憂しなくて済んだ。書名が刺激的で意味深だがダテや酔興でつけたものではない。本書の巻頭文章は「さらば、政治よ」という書下ろしエッセイだ。このエッセイが本書のすべてといっていい。他は目次順に言えば「インタビュー」「読書日記」「講義」と続き、すべてどこかに発表された文章群である。「旅の仲間へ」という書名フレーズはよくわからない。巻頭エッセイのサブタイトルとしてつけられたものだが、本の題名にはサブタイトルも同格として扱われている。これは編集者の判断なのだろう。巻頭時事エッセイは、「国家がどうなるとか、日本がどうなるとか、憂国の議論に興味が失せた」という刺激的な宣言から始まっている。85歳になって、そんなことは本質的でなかった、とよくわかったという。例えば安倍政権にしたところで、「戦争したくてたまらない人間だと考えるのは滑稽だ。単なるナショナルステックな気分の持ち主で、この程度のナショナリズムは世界中の国家指導者の所有するものだ」と言い放つ。憲法論議にも言及している。自衛隊の存在を認めながら戦争反対は自己欺瞞ではないか、と左翼の紋切り型を痛烈に批判する。著者の目指すところは一つ。国家や政府から自立していきたい。関わりは最小限に抑えて、ただ共に生きている他者への責任を果たし、他者とともに生きることに生きがいを見出したい。というものだ。この他者が「旅の仲間」のことのようだ。荒野を一人旅する決意があれば、周りにおのずと泉はわく、と著者は言う。

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