Vol.832 16年11月19日 週刊あんばい一本勝負 No.824


今日も元気だ、卵かけごはん。

11月12日 昨夜はシャチャー室宴会。2人の友人を招いて小生の得意料理(ほうれん草鍋とモッツァレラチーズ・サラダとローストビーフ)を食べてもらった。手間暇かけず簡単にできるのがミソ、だったはずだが鍋は今一つ評判がよくなかった。豚3枚肉が厚すぎた。猛省。それはともかく、シャチョー室宴会が延々と続いているのには訳がある。お開き20分前、参加者が自主的に片づけを始めるルールだ。皿を片す人、洗う人、拭いて収納する人が、ほろ酔い機嫌でモクモクと作業、元のシャチョー室に戻ったところでお開き。しかもこれは男たちの仕事で、女性たちはみているだけ。Sシャフが考えたシステムだが、このへんがいいのだろう。何年もシャチョー室宴会は続いている。

11月13日 今日の山行は稲川町の雄長子内岳。名前は変わっているが、けっこう好きな山だ。標高も低く40分も登れば山頂についてしまうが、それなりに急峻な斜度の山歩きも楽しむことができる。紅葉もまだ十分残っていて、燃えるようなカエデの赤が今も目にちらついている。真人公園でランチ後、佐々木リンゴ園で恒例のリンゴ買い。買うよりもただでもらうほうが多いから恐縮。リンゴで車をいっぱいして温泉(アップル)で温まって帰ってきた。

11月14日 11月ももう中旬。光陰矢の如し。今週は酒を呑む機会が三回もある。体重は一向に減らず、フランス旅行で増えたままの数字をキープでガッカリだ。仕事のほうはようやくいろんな「部位」がスムーズに動き始めた。夏から秋にかけて本は動かないし出版依頼もほとんどなかった。これで確実に全国から書店や出版社が数社消えていったにちがいない。こちらは青息吐息で荒波を潜り抜けてきたがゴールは見えない。いつまで走り続けなければならないのだろうか。

11月15日 県立図書館で調べもの。4件ぐらいの調査リストをつくって資料探しに臨んだのだが3件はまったくダメ。まったく文献資料の渉猟能力が低い。能力が低いので時間だけはダラダラと過ぎる。図書館を自由自在に使いこなせるようになれば楽しいだろうな。でも、あの本の数を見ただけで委縮して気持ちがなえてしまう。こんな商売をしているのに書店に行くのもそういえば苦手だ。キラキラと輝いているフレッシュな新刊本をみるたび、自分にはこんな本は作れない……と勝手に落ち込んでしまう。面倒くさい体質だ。

11月16日 町から書店が消え、コンビニで本や雑誌を買うのが常識になりつつある。とばかり思っていた。ところがコンビニでの出版物の売り上げは年々落ち続け、この10年で半減、というショッキングなレポートを「出版ニュース」最新号で読んだ。特に雑誌の売り上げ減がひどいのだそうだ。首都圏コンビニではすでに書籍売り場面積の縮小が始まり、その波は間もなく田舎にもやってくる。郵便物を出し、ATMで金をおろし、コーヒーや牛乳を買うため一日一回はコンビニを利用する。印象として書籍売り場は少しずつ広がっている気がしていたが、そうではなかった。雑誌や書籍の凋落はもう歯止めが効かないだろう。

11月17日 県南まで車で行くと高速代で往復4000円。仕事の経費なので自分の懐が痛むわけではないが、ちょっと高いなあ、といつも思ってしまう。ふと思いついて県内のいろんな場所に出かけ、仕事のヒントを得ることが多い。最近は高速代を考えて外に出るのは週末にしようか、と考えてしまう。土日は高速代が安くなるからだ。新幹線もタクシーも高い。「大人の休日切符」の会員なので3割引きで買えるが、それでも交通費は諸物価に比べて高い。

11月18日 月に1,2回はカミさん不在の日がある。朝食はどんな時(週末も)でも7時半と厳しく決まっている。寝過ごすことなど許されない。ところがカミさん不在だといつまで寝ていても、いい。ベッドでグズグズ、ウトウト、小春日和の朝のまどろむのはたまらない。10時ころまでウダウダして自分で作った朝ごはん。これも楽しみの一つだ。たいていは炊き立てごはんに生卵。その昔、「死ぬ間際に食べたいものは?」と訊かれて「卵かけごはん」と即答した。いま、その答えに最近ちょっと変化が生じた。正確には「卵2個使った卵かけごはん」だ。「卵はどんな理由があれ一日一個」とカミさんに制限されている身としては、これ以上の贅沢はない。
(あ)

No.823

上野アンダーグラウンド
(駒草出版)
本橋信宏

 『裏本時代』や『AV時代』といった風俗体験ルポを書いていたことからの著者のファンだ。いまは幻冬舎アウトロー文庫に入っているから、まだ根強いファンがいるのだろう。風俗ルポの後は、本書に通底する「異界」にスポットを当てた街歩きルポが多くなっている。そのへんからあまりいい読者ではなくなった。でも「上野」がテーマとなれば、東北人としては何となく手が伸びてしまう。意外なことに著者と上野の接点も「東北」だ。青森県人の義父(嫁の父親)が出稼ぎに来て食べ、その美味しさに感動したという「上野のラーメン屋」を探してみようと、このルポの企画に腰を上げたのだそうだ。丸1年かけて地形から歴史、スラム街、アメ横、風俗の女たち、キムチ横丁、男色、路地裏、色街跡と、カオスの時間が重なり合う猥雑な街を著者は突き進んでいく。でも義父のラーメン屋は見つからない。プロローグもまた亡くなった義父へのオマージュで締めくくられている。上野を語る本なのだが、最初も最後も個人的な青森出身の肉親へのオマージュだ。嫁さんが津軽の人だから文中の津軽弁の使い方に不自然さがない。著者は所沢生まれの、まあいわば都会っ子だ。それが上野のカオスを見事に描き切ることに成功したのは、近親から透かして見える「都市」を射程にして描こうとしたからかもしれない。

このページの初めに戻る↑


backnumber
●vol.828 10月22日号  ●vol.829 10月29日号  ●vol.830 11月5日号  ●vol.831 11月12日号 
上記以前の号はアドレス欄のURLの数字部分を直接ご変更下さい。

Topへ