Vol.885 17年11月25日 週刊あんばい一本勝負 No.877


クマ肉・傷痍軍人・PC

11月18日 今日も雨。まったくやりきれない。昨日の午後ちょっとおもしろい事件があった。市内大滝山でクマが捕獲され解体するので見に行かないか、と写真家の?さんから連絡。新入社員がさっそく出かけて行った。帰ってきたのは午後7時過ぎで、クマ肉をどっさりお土産に持ち帰った。さて、どうしたものか。Sシェフの指示を仰ぐと、とりあえず小片にして冷蔵することといわれた。クマ肉切り分け作業が始まった。もちろん生まれて初めての経験だ。意外だったのは肉に臭みがまったくないこと。ドングリや木の実ばかり食べているせいだ。まさか猟銃の弾は入っていないだろうな。

11月19日 朝4時半起床。まだ真っ暗だ。お湯を沸かしコーヒーをつくり、レトルトのおかゆをチンして出発準備完了。今日の山行は県北の房住山。外はジュクジュク雨が降っている。どうせ山の中は純白の冬世界なので雨も風も関係ない。寒くないようにアウターも靴下も2枚重ね着、朝飯はどこかのコンビニで済ませよう。よくもまあこんな天候の時に山に登るものだ、とあきれられるが、山の中はまた別世界。まるで予想もできない時空間が広がっている。今日は縦走5時間半の行程だが縦走は飽きないから好きだ。

11月20日 戦後かなりたってからも傷痍軍人(病兵)は街角に立っていた。大学にはいって秋田市に住み始めたころ、何度か歓楽街の橋のたもとで彼らを見かけた記憶がある(ような気がする)。浅田次郎に『金鵄のもとに』という短編小説がある。傷痍軍人の物語だが読み終えてしばし茫然、ショックを受けた。舞台は終戦直後の東京銀座、主人公は南方からの復員兵、壊滅したはずの部隊名を名乗る傷痍軍人に会い、その舞台裏にいる人物とのやり取りから、徐々に感化され、自分も片腕を切り取り傷痍軍人になっていく物語だ。多くの復員兵たちは望んで「傷痍軍人」という「職業」を選んでいく。当時のすさんだ、すさまじい時代背景がよくわかった。傷痍軍人に対する憐憫や偏見はものの見事に打ち砕かれた。

11月21日 パソコンの調子が悪い。起動のスイッチがうまく作動しない。もう3日間電源は入れたまま。思い切って新しいPCに買い替えることにした。A長老に相談、PCインストラクターの方を紹介してもらいアドヴァイスをいただいた。専門家の話を伺って、ようやく一安心。今使っているPCはもう5年ほど前に買ったもの。替え時かもしれない。

11月22日 毎日予想もできないようなことが起こり、それに対応するだけで1日が過ぎてしまう。この年になると日々が何事もなく穏やかに過ぎていくのが理想だが、そんな日はめったにない。現役で仕事をするというのは喜怒哀楽にまみれて時間と格闘すること。でも体力がその喜怒哀楽についていけない。楽しいことはないよりあったほうがいいが、そこに費やされるエネルギーを考えると、ついつい「楽しくなくてもいい」と居直ってしまう。

11月23日 放っておくとずっと水分を摂らない。昔からそうだった。よく脱水症状にならないものだと自分でも感心するほど。山に登るようになって水分補給の大切さを認識するようになった。それでも冬場は水分を摂らない。数日前から意識的に魔法瓶に健康茶を淹れデスクの前に置いて飲みだした。まだ1週間もたっていないが朝の便通が良くなった。頻繁におしっこに行く。かすかに血の巡りがよくなったような気さえする。五穀とかハト麦とかドクダミとか、スーパーの棚に並んでいる健康茶を適当に見繕って、お湯を注いで淹れるだけ。とにかく水分をたっぷりとる、のが重要だ。

11月24日 朝から新品パソコンのセットアップ。エイスースという台湾のメーカーだ。セットアップは専門家の方にやってもらうことにした。午後からは盛岡行き。首都圏から太平洋側の町に用事で来る友人と盛岡で落ち合い、そこで一献。新幹線の最終便で帰ってくる。これからの季節はホテルの部屋は乾燥していてリスキーだ。マスクをして加湿器の音に悩まされながら寝るのはイヤだ。
(あ)

No.877

北海タイムス物語
(新潮社)
増田俊也

 著者はあのスリリングなノンフィクション『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』の著者。本人のプロフィールを見ても北海タイムスに2年勤務のあと、中日新聞に移り最近まで勤務していたようだ。ということは自伝小説といっていいだろう。と思って読み始めたのだが、違った。いい意味で裏切られた。舞台は同じ札幌なのだが主人公は自分自身を反映したものというより、微妙にディテールを創作した、想像で作り上げた人物のようだ。ここで本書はもう大成功している。すごい筆力だ。本書の中で「白系ロシア人」という「白系」というのは「色の白い人」という意味ではなく、ロシア革命で亡命した人たちのことだったことを初めて知った。革命派赤軍の反対の人々として「白系」と呼んだのだ。ルネッサンスの三大発明。活版印刷に羅針盤、ここまでは何とかこたえられるが、もう一つがわからなかったが黒色火薬だった。しかし本書は面白い。作家の筆力、構成のうまさ、フィクションの組み立て方、まるでベテラン小説家のようだ。それにしても北海タイムスの貧乏ぶりは読後の今も信じられない。

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