Vol.937 18年12月1日 週刊あんばい一本勝負 No.929


1が月で5座の山に登る

11月24日 冷凍食品を食べてしまおう、ということにない、昼にくるお客様とのランチも、夜の家族の食事も冷凍食品。食べたいと思って買ったのになかなか機会がない。最近はコンビニで売っている冷凍食品もまずくはない。でもチャーハンやパスタ類、餃子にたこ焼きといったようにほとんど炭水化物。食べすぎると問題なものばかりだ。買わなければいいのだが、緊急用という名目でついついカゴに入れてしまう。

11月25日 能代市と三種町の間に位置する房住山(409m)を縦走。この山には文久元年(1861年)に山中に33観音が配置されている。そのほかにも8つほど番外(1年前の1860年の万延元年に設置)の石仏がある。山頂まで登っても22番あたりまで、山頂を越えて別の降り口にいたる場所に残りの仏像が設置されている。全部の仏像を拝むためには「縦走」が不可欠なのである。「上から目線が気になる解説立て札」を読みながら気持ちよく最後まで見て回ることができた。合計6時間余り。天気は良くフカフカの落ち葉を踏みしめながら古仏探訪である。

11月26日 年々訃報、追悼を書く機会が増えていく。今日は「サンダカン八番娼館」で有名な山崎朋子さん、86歳だ。合掌。メモを見返すと1987年(昭和62)11月、県内のフィリピン花嫁問題の取材で突然事務所を訪ねてきた、と書いている。驚いたのは旅に出るとき、山崎さんはいつも全財産の貯金通帳を持ち歩いていることだ。数か月間、家に帰れなくとも取材を続けるため、とご本人は言っていた。通帳の中身まで見せてくれ、確か「600万円」くらいの残高があったのを鮮明に覚えている。ご冥福をお祈りしたい。

11月27日 TVのローカルニュースで「秋田の道路は歩行者ファースト」という標語を掲げた交通安全キャンペーンの模様が映し出された。なんだか心底「その通りッ」と賛同の叫びをあげたくなった。散歩をしていて横断歩道を歩く時、多くの車は直前まで止まってくれないからだ。車の性能がよくなって急ブレーキで対応できる、という安心感がドライバー側にはあるらしい。こうしたスピードを落とさないバカ・ドライバーの多くは「しょうがなく停まってやったぜ」というドヤ顔をしている。歩行者ファーストが常識です、この田舎の秋田でさえも。という意味があるのなら、この策のない官製標語もよく現実をとらえている。

11月28日 先週、盛岡取材出張の折、大切な資料(本)を置き忘れてきた。アマゾンの日本人移民70年誌で現地に行かない限りは二度と手に入れるのが難しい貴重なものだ。すぐに盛岡で立ち寄った先に電話で問い合わせ。まずは取材で使った喫茶店。次はそこから移動した居酒屋。そして駅のソバ屋、乗った新幹線、タクシー会社などだ。すべて「ありません」とつれない返事。困ったなあ。

11月29日 今日は木曜日だが休みを取って秋田県では最も好きなハイキングコースである八塩山矢島口コースを歩いてくる予定。11月中に登った山はこれで森吉山、男鹿真山、雄長子内岳、房住山そして八塩山と計5座。4時、5時起きは半世紀以上のゴリゴリの「夜更かし派」には本当にきつい。もう70の老人なのだから、そろそろ早起きが好きになってもおかしくないの、どうして起きるのがこんなにもつらいのだろう。

11月30日 昨夜、夢を見た。いつものように旅先でホテルに帰れなくなる夢だ。外国なので言葉は通じないし、自分の泊まったホテルの名前を憶えていないこと。焦りまくって夢から覚める。60代になってからはずっとこの夢ばかり。若い30代に最もよく見た夢は「ハトにエサや水をやり忘れた」というもの。40代は「時間割を忘れて学校にいけなくなる夢(体操着を忘れるバージョンも)、50代は小型ジェット機ほどある大きな鳥が目の木にとまっている夢だ。こうして振り返ってみるとほぼ10年単位の長さで同じような夢を見ていることになる。
(あ)

No.928

私の食べ歩き
(中公文庫)
獅子文六

 3年ほど前、東京の書店で何種類かの獅子文六の「新刊」文庫本が出ているのに驚いた。新聞などの新刊情報で名前が出てくる作家ではない。とうの昔に忘れられた流行作家、ぐらいの認識しかなかった小説家だからだ。著者は私が大学生になったころに亡くなっている。そんな過去の作家が、なぜに今、不死鳥のごとく蘇ったのか。「昭和を代表するユーモア作家」というのが著者のキャッチフレーズだ。どうやら再評価の出発点は、過去に制作された映画のリバイバル上映がヒットしたことによるようだ。なるほど。映画はまだ見ていないが、とりあえずは食いつきのよさそうな本書を読み始めてみた。なんとなく書名などから通俗的な大衆小説作家のイメージしかなかったのだが、慶応出でフランスに留学、演劇の世界でも高名な都会派文化人であることを、本書ではじめて知った。食文化の記述も、今読んでもほとんど古くなっていない。秋田のしょっつるやきりたんぽなどへの記述もあり、内容も正鵠を射ている。パリに留学時代、なけなしの金を払って名のある料理店を食べ歩いた「実績」が味覚への自信を裏付けている。映画も見てみよう。

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