Vol.959 19年5月4日 週刊あんばい一本勝負 No.951


鳥海山完登でGWは上々のスタート

4月27日 土曜日は一切仕事をしないことに決めた。朝から家の洋服ダンスの整理。午後からは事務所に出て料理。ジャージャン麺のソースに餃子を50個、ローストビーフを焼いた。とにかく仕事のことを一切考えない。明日は鳥海山登山の準備をしよう。

4月28日 「駅ピアノ」という番組を見て感動。舞台はプラハで、ピアノを弾く人たちの多くがどこにでもいる市井の人々。夜勤明けの労働者や介護学校の教師、年金生活者や無職の人たちだ。最後の登場人物は「なにもいいことのない人生だったが駅ピアノを聴いていた女性と、いまは一緒に住んでいて幸せ」という、ちょっとできすぎたエンドロールで終わった。社会主義国という悲惨な現実と、その裏側にあるどんな職業の人もピアノに親しむことができた、という2つの現実がうまく像を結ばない。それでも十分に面白いし感動もある。自然の成り行きに任せても番組は成立しない。

4月29日 鳥海山払川直登の雪山登山。朝3時半に起き、4時半に出発、7時20分から登り始めた。きれいな青空で無風。4時間20分で山頂へ。山頂に立ったのは3年ぶり? ここ数年、ずっと途中棄権を繰り返してきた。今回大丈夫だった理由は「マイペース」だ。ようするに疲れないようにゆっくり歩いたのだ。鳥海山の山頂に立つことはけっこうな自信になる。今年もいろんな山にチャレンジできそうだ。

4月30日 夜、何度か顔が痛くて目が覚めた。鳥海山で日焼けした顔と唇がバリバリ音を立ててこわばり鼻水まで流れ出した。寝ては覚めての繰り返し。筋肉痛はまったくない。登っている最中も苦しくてやめたくなったり、下りに痙攣に悩まされることもなかった。山歩きをはじめて15年、鳥海山に楽々登れたというのはまったく初体験だ。徹頭徹尾、最後尾でマイペースを維持し、痙攣防止用の芍薬甘草湯を服用し、ダメなら8合目で引き返す覚悟ができていた。この3つが功を奏した。今年前半の大きな目標をクリアーした。個人的にはすばらしいGWは迎えることができた。

5月1日 世間(マスコミ)は10連休だと騒いでいるが、普通の会社はカレンダー通りに動いている。うちもカレンダー通りだ。印刷所もこの期間にたまった仕事を片付けようとシャカリキだ。ヒマな3日間を予想していたのに予想は裏切られ、やることがたまっている。

5月2日 40年前はじめて訪れたアマゾンの日本人移住地で、半日ほどプールで水遊びをした。プールと言っても地面に穴を掘ってコンクリートで固めただけの手作りだ。次の日、全身が水膨れで起き上がれぬまま一週間寝ていた。全身やけどだった。今、小生の顔はあの時とほとんど同じ状態だ。鼻の頭に水泡ができ、目から下が赤茶けて皮がむける寸前。まるで8千m峰から帰ってきたクライマーさながらだ。これではとても外に出られない。山の勲章というには代償が大きすぎる。

5月3日 ようやく顔の皮がむけた。あとは時間が解決してくれるだろう。厄災だったが考えてみれば雪焼けした顔のおかげでどこにも出かけず、誰とも会わず、集中して仕事ができた。いつもはダラダラ体重を増やして終わるだけのGWなのに今回はきっちり仕事し、休み明けの体制も万全。雪焼け顔のおかげだ。
(あ)

No.951

ゴールデン街コーリング
(角川書店)
馳星周

 ヴァイオレンスものの得意なハードボイルド作家とばかり思って敬遠していたのだが、本書で覆されてしまった。著者の自伝的作品なのだが、ナイーブでクール、真摯な著者の青春像が新宿のバーを舞台に見事に描かれている。自伝的要素のある青春小説はむずかしい。どこまで書いて、何を書かないか、ここが重要なのだ。本書はやはり舞台設定がいい。時間を限定的してバイト先の数年にだけ固定したのも成功している。ノンフィクションの色彩が濃いのに「青春文学」としてりっぱに成立している。新宿ゴールデン街の「深夜プラスワン」はコメディアンでありミステリー書評家でもある内藤陳の店だ。名前は変えてあるが大学生だった著者はこの店でアルバイトをはじめる。田舎の高校生だったころからあこがれ続けたバーだった。しかし、オーナーの有名人は手の付けられない酒乱だった。オーナーの酒乱ぶりはすさまじい。早くここから抜け出したい、と思いながらやめられないまま、ここの場所で恋をして、雑誌編集者に文才を見出され、尊敬する知人の殺人事件の解明まで経験する。まさに自分の青春の出発点のすべてがこのゴールデン街に凝縮されている。わずか2年ほどの短い期間の出来事を濃密に描くことで、小説としての完成度は格段に高くなったのだろう。

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