Vol.988 19年12月7日 週刊あんばい一本勝負 No.980


雪の散歩は要注意!

11月30日 外は雪景色、寒いのは嫌いではない。昨夜はコッポラの戦争映画『地獄の黙示録』を観た。大人になったら見直そうと決めていたのだが戦争映画はなかなか手が出ない。気分がふさいでしまう。コッポラはやっぱりすごかった。プレイメイトの戦場ステージやフランス人入植者との出会い、サーフィンをするためにヘリで村を焼き尽くす将校……川の中から顔が出てくる有名な場面はてっきりカーツ大佐(マーロン・ブランド)とばかり思いこんでいが、主人公のウィラード大尉(マーティン・シーン)のほうだった。時間がかかったが、勇気を出して見てよかった。

12月1日 今日は男鹿真山。雨の予報だったので心配。男鹿の山々はもう冬に入っただろうが、ここはなぜかクマがいない。「ナマハゲが棲んでいるから」と真面目な顔をして言う人もいるが、ずっと昔から「クマがいない」山なのだ。昨日、クマを撮っているKカメラマンからイノシシの肉をいただいた。神奈川県産だそうだ。山を下りた後、シャチョー室宴会なので、そこで食するつもりだ。日曜なのに朝5時起きで、なんだか忙しい一日になりそうだ。

12月2日 ボタン鍋を食べたのは初めて。Sシェフがありあわせの食材を使ってボタン鍋。あまり期待していなかったのだが、くどくないミソ味で、柔らかく滋味深い味の鍋に仕上がっておいしかった。そういえば今年はクマ鍋も京都で堪能。調理法ひとつで食材は化ける。

12月3日 毎日2本平均アマゾンプライムで映画。昨日はマクドナルドの創業者とフランチャイズ功労者の攻防を描いた『ファウンダー』と『ラ・ラ・ランド』、その前の日は『クロワッサンで朝食を』と『王様たちのホログラム』。ここ数日で見た中で印象に残る映画は、三谷幸喜監督の『大空港2013』と『東京女子図鑑』。どちらも日本映画で喜劇的要素があるの共通だ。

12月4日 外はすっかり白一色だ。寒くなってくると同時に両手首(親指の付け根)がむずかゆくなってきた。今年の2月、夜の散歩中に両足を滑らせ、身体が一瞬宙に浮いた。落ちるとき受け身をとったのが失敗だった(柔道をやっていて黒帯です)。コンクリートのアイスバーンに両手首を激しく打ち付け、その箇所が今も痛むのだ。もっと寒さが厳しくなれば山用の軽アイゼン(4本爪)を履いて散歩するつもりだ。雪道は怖い。

12月5日 吹雪まじりのすさまじい「風音」で夜中に時々目が覚めた。風音の不気味さと圧迫感は、年をとってもなじめない。屋根が吹き飛ばされるという恐怖と直結しているからかもしれない。昨夜は農業新聞から依頼されていた書評用の本『土に贖う』(集英社)を読んだ。北海道を舞台に農業に生きた者たちの短編小説集だ。無名の作家だが筆力も構想力も取材力も一級品。すっかりこの人の世界観に取り込まれてしまった。ハッカ農家や養蚕業の収支決算、鳥(アホウドリ)殺しなんて言う職業があるなんて、この本でも読まないかぎり知りえないことだった。79年生まれだからまだ若い女性だ。よく調べて書かれている良質の小説だ。

12月6日 猛吹雪の中、背中を丸めて歩くのは嫌いではない。生きているという実感がわいてくる。昨日も吹雪の中を歩いた。駅前の歩道橋架で黙々とゴミ拾いをする若い女性に遭遇した。服装も通勤途中のOLそのままで、なんだかよく意味のわからない光景で、妙に心に残った。今朝は雪の中で白い杖を頼りに必死に歩いている盲人の人を目撃した。雪が積もっているから杖は役に立たないのではないだろうか。車の中の自分には何もできないのが心苦しい。今日の健康診断はさんざんだった。血圧は高いし体重は去年より2キロオーバー。もうこの年になると、少しぐらい数値が悪くても医者も看護師も何も言ってくれない。私が褒められるのは骨密度だけ。
(あ)

No.980

世界史を大きく動かした植物
(PHP)
稲垣栄洋

 「私たちは植物の手のひらで踊らされているだけかもしれない」 というコピーがオビ裏に書かれているのが決して大げさではない。著者は歴史の先生ではなく植物学者だ。取り上げられているのはコムギ、イネ、コショウ、トウガラシ、ジャガイモ、トマト、ワタ、チャ、サトウキビ、ダイズ、タマネギ、チューリップ、トウモロコシ、サクラの14種。これらが私たちの生きてきた人類の世界史にどのような形でかかわってきたかを検証した本だ。書名に偽りなく、人類の歴史は植物の歴史であることがよくわかる。こんな本を読みたかった。
外国でショウユが欲しくなると「ソイソース」とか「ソイビーンズ」と言えばほぼ通じる。でも「ソイ」ってどんな意味の英語なの? 
なんと英語ではなく鹿児島弁だった。鹿児島弁でショウユは「そい」と訛り、これが輸出先である外国でも「ショウユ」のこととして認知されてしまったのだという。コショウは英語で「ペッパー」だが、トウガラシも英語で「レッド・ペッパー」だ。コショウはコショウ科のつる性の植物で、トウガラシはナス科の植物。アメリカ大陸発見のコロンブスがこじつけで命名したのが原因のようだ。コロンブスはアメリカ大陸で見つけたトウガラシを「コショウの一種」と意図的に間違えてヨーロッパに持ち込んだ。コショウの一種としておいたほうがスポンサーの受けがよかったからだ。

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