Vol.990 19年12月21日 週刊あんばい一本勝負 No.982


電話機も腕時計も替えてみた

12月14日 ピロリ菌除菌で胃酸の逆流がひどくなったが、昨日の新聞に「食道胃接合部がん」が増えているという記事。「肥満」について書いたらタイミングよくネットでは「太り気味が長生き」という記事も出ていた。最もショッキングだった医学ニュースは山中伸弥教授の「IPS細胞」。世界的研究の進歩でガラパゴス化し、もう最先端医療は遺伝子治療に移行しつつあるのだそうだ。IPSは臨床にすぐに役立たず金がかかって時間も食う。もう時代遅れと断じられていた。細胞備蓄事業への国の支援が打ち切られる背景にはそんな歴史的変遷があったわけだ。科学の世界は複雑で日進月歩だ。

12月15日 今日は岩谷山。午前中に早々と登り切って、そばにある温泉でランチ。夜は有志でシャチョー室宴会。この頃は山行1時間前には起き、冷凍しておいたおにぎりをチンして、半分を卵かけご飯、残りをお茶漬けにして朝食。インスタント味噌汁もコーヒーも面倒くさがらずつくる。早朝の朝飯と汗をかいた後の温泉、この二つが山行のインセンティブです。

12月16日 山も健診も忘年会も一段落。来週は冬DMの発送週間だ。この通信は年4回発行で全国のうちの愛読者に新刊案内や近況報告を印刷物として届けてきたが、来年から年2回ほどに縮小しようと思っている。今の時代に合った新しい「発信」のかたちを考えていかなければならない時期に入った。安くない印刷代や郵送料をかけ、アナログで発信する時代はもう過去のものになりつつある。

12月17日 山本兼一著『神変』を読んでいる。7世紀後半、持統天皇(女性)の時代に、その律令制度に反旗を翻し、統一国家に異議を唱えた「山の民」役小角(えんのおづぬ)の生涯を描いた歴史活劇小説だ。役小角の名前は秋田の山中でもよく見かける。信仰や修験に関する山には「その開基」となった人物として名前が記されているからだ。小角がわざわざ秋田まで足を延ばし修験者を指導したと思っている人もいるが、東国(陸奥も含まれる)に逃亡したという伝説はあるが秋田に来たという記録はない。京の都を囲繞する山々を支配し、自在に秘術を用い、里に下りては権力をかき乱し、重税と暴政から民草を救おうとしたという伝説をもつ小角にシンパシーを持つ人は少なくない。

12月18日 雨が終わって外は青空。秋田の冬は青空が見えただけで「ボーナス」をもらったような分になる。ボーナスで思い出した。生まれて一度もサラリーをもらったことがない。昨日、近所のスーパーの宝くじ売り場に長蛇の列。この人たちもリタイア後の「人生のボーナス」が欲しい高齢者たちだ。私はボーナスがなかったから工夫し、やりくりし、自己充足する方法を身に着けざるを得なかった。宝くじを買うのは、出版の夢をあきらめることと同義だ。出版は宝くじそのものだ。ボーナスをもらわない(もらえない)人生を選んでしまった。ぐちを言ってもしょうがない。

12月19日 電話機が変わった。ごちゃごちゃ機能がついた電話機から、量販店で売っている普通のものになった。シンプルで使いやすく楽チンだ。10年前、若造のセールス・トークにほだされ、無用の機能がたくさんついたバブル風電話機をリース(毎月7千円)してしまった。そこと決別できた爽快さもある。

12月20日 腕時計を替えた。時計は3個持っている。半年に一回ぐらいの割で替えている。気分転換だ。来年は忙しい年になってほしい。今日は金曜日だが休みを取って近場の山にハイキング。その後は産直の店をはしごして買い物をし、夜は食事会だ。
(あ)

No.982

食で謎解き日本の歴史
(実業之日本社)
造事務所編

 「食」をキーワードにして歴史をひも解く本の類が大好きだ。最初にその手の本を読んだのが『砂糖の世界史』だった。この本は自分の読書体験の転換点になったほど衝撃を受けた。本書はその装丁や帯文から、コンビニやキオスクで売られるクズ本のように見えてしまうが、歴史も人物も食材も正確な調べ上げられた、実証的な真面目な本である。私の生まれた翌年(1950)、ミス日本第一号が選ばれている。山本富士子だ。このミスコンは戦後の食糧危機を救おうと、アメリカの支援団体から贈られてきた「ララ物資」(アジア救済公認団体)に感謝するため、衆議院で緊急決議されたイベントで山本富士子はアメリカに感謝を伝えるための「遣米使節」だったと言う。政治や経済が絡んでわかりにくい満州事変も、大豆をキーワードに見事にわかりやすく解説する。日露戦争勝利として得た満州(鉄道)は世界最大の大豆生産地だった。関東軍はこの地で戦争を仕掛け大豆を得ようとする。それが満州事件だ。コメや酒、坂本龍馬や塩の道、源平合戦から練馬ダイコンまで、学校では習わなかった歴史が、わかりやすく本書から立ち上ってくる。食べ物から知る知識は覚えやすい忘れない。

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