Vol.993 20年1月11日 週刊あんばい一本勝負 No.985


日本酒・サイフォン・パスポート

1月4日 「子」をネズミと読ませるのは、頭の大きい(賢い)子供が両手を広げている姿から作られた漢字だからだ。多産、繁殖、聡いという意味から「ネズミ」を連想したわけだ。女の子の名前に「子」が付くのは多産、繁殖というのが決定打だ。ちなみに十二支は月の満ち欠けや作物の収穫などを12等分したもの。十干は太陽の運行、動物の一生を10等分したもの。2つの暦を組み合わせると今年の干支は「庚子」(かのえね)。あの戊辰戦争の「戊辰」も十干の「戊」と十二支の「辰」を合わせたもの。二つの暦の組み合わせは60種類。暦は60年で一巡りする。だから還暦というのは60歳のこと。

1月5日 このところ日本酒ばかり飲んでいる。ものの本によると保存や製法技術のイノベーションもあり日本酒は歴史上いまが最もうまい、と書いていた。「純米酒」を集中的に飲んでいるのだが、本醸造、純米、吟醸の3つのパターンの味をちゃんと識別できるようになれたらいいな。しかし「生もとづくり本醸造熟成生原酒」ってどんな酒なの。日本酒は説明の言葉が難しすぎるのが欠点だ。

1月6日 初詣登山は秋田市仁別の妙見山(258m)。山頂に御宮があり今年の山行の安全と健康を祈願してきた。今年も1年、健康で元気に山に登れる暮らしを送りたいものだ。初読み本は石田衣良『清く貧しく美しく』(新潮社)。20代の非正規社員同士の恋愛を描いた小説だが、テーマの設定、舞台装置、リアリティ、どこをとってもプロの仕事ってすごいなあと感嘆しながら読了した。

1月7日 仕事始めは例年通り。バタバタと忙しく今年もスタートを切った。今年も例年通り厳しい年になりそうだ。欲張らず、落ち込まず、謙虚に、抑制を忘れずに、日々を過ごしていきたい。

1月8日 暮れに衝動的にサイフォン一式を買った。毎日朝一杯しか飲まないコーヒーだが、粉をパックしたものに湯を注ぐだけだった。1杯だけなので豆も自分で挽いて、薫り高いコーヒーを味わおうと、サイフォンにした。20数年前にもサイフォンを使っていたような気がするのだが、面倒くさくなって、今のパックに替えた経緯がある。もう何十年も生きるわけではないので、少しぜいたくし手も罰は当たらないだろう。

1月9日 元衆議院議員の三宅雪子さんの自死が、のどに刺さった小骨のように気になっている。大館市選出の政治家・石田博英のお孫さんで秋田との縁も浅くない。父は外交官でニューヨーク生まれ、フジTVのアナウンサーで小沢ガールズの衆議院議員。絵にかいたようなエリートコースを歩んだ女性だが、そのバリバリの政治家のころから、この人は危ないなあ、となぜか引っかかっていた。まさか自殺という形で54歳の生涯を閉じるとは思っていなかったが、落選後の行動に一貫性のない浮遊感が漂っていた。何か問題を起こすのではないかと他人事ながら気になっていた。地位も名誉も美貌も名声を得ても(得たからか)、人は満足することができない。この人は何が欲しかったのだろうか。

1月10日 連日、市役所と県庁へ。パスポート更新が今年なのだ。戸籍謄本の市役所は実は新しい建物になってから初めて入る。まずは2階にある食堂で440円のラーメンを食べてリラックス。お役所というのは苦手で緊張する。5年前、パスポート更新時期を忘れてえらい目に合っている。仙台空港から台湾に行く直前、搭乗手続きで「パスポートの期限切れ」を指摘され、いろんな人に迷惑をかけた。もうあんな目に合うのは2度とご免なので、今回は5年から10年に更新期間を切り替えた。今年はモンゴルとあと一つ、外国に行く予定がある。
(あ)

No.985

神変
(中公文庫)
山本兼一

 7世紀後半、持統天皇(女性)の時代に、その律令制度にこう然と反旗を翻し、統一国家に異議を唱えた「山の民」役小角(えんのおづぬ)の生涯を描いた歴史活劇小説である。役小角の名前は秋田の山中でもよく見かける。信仰や修験に関する山には「その開基」となった人物として名前が記されている。そのため小角がわざわざ秋田まで足を延ばし修験者を指導したと思ってる人もいるようだが、それはない。「修験者の祖」なのは間違いないが、朝廷から見たら新手の山賊に過ぎない犯罪者だ。京の都を囲繞する山々を支配し、自在に秘術を用い、里に下り権力をかき乱し、重税と暴政から民草を救おうとする。小角にシンパシーを持つ人は少なくないが、とりわけ登山者には「アルピニストの元締め」として尊敬する人もいる。しかし、本書では天皇への反逆分子としての人物像が前面に出すぎるのを嫌って、息子や持統天皇、敵の重要人物などの視点からも「小角」像を描くことでキャラクターの平面化をふせいでいる。役小角という不思議な名前の命名のエピソードもかかれている。「役」は田んぼを持たない使用人のことで、当時の差別用語だった。小角は、生まれた時、頭に小さな角が生えているようだったので親が命名したものだそうな。もう亡くなってしまったが、時代小説の名手の著者にしては、成功したとは言えない作品なのかもしれない。

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