No12
雪と風とツェルトとストック
[太平山・前岳―774m(秋田市) 2012年12月7日(金)]
 平日の山行だ。友人のSシェフと2人のみ。週末は仕事が入っていて、来週からは東京や県内出張などが目白押し。このままだと10日以上「山なし」になってしまう。その危機感からSシェフにお願いして無理やり実現したもの。近場でけっこう難易度もあり、充実感のある平日の山といったら、ここしかない。秋田駅からは秋田市のシンボルとして太平山系の流麗なフォルムが目撃できるが、あの山頂は実は中岳だ。その右隣が鶴ヶ岳で、左のずっと下がったところに前岳がある。太平山登山の定番である奥岳は、駅側からは見えないのだ。
 朝8時、わが事務所前集合で8時半にはもう金山滝登山口から登りはじめた。前日から雨、風、嵐だが、こればっかりは当日登山口まで行ってみないとわからない。小雪が降り続いているせいか、人気の登山口の駐車場にも車2台のみ。
 登山口の「風情」としてここは秋田一だろう。滝があり神社があり急坂と森が入り口から丸見えだ。景色として完璧、いい感じだ。よしッ登るぞ、という気分にしてくれる。
 なのに、のっけからみそがついた。前回片方をなくした問題のストック。メーカーの違うものを1本ずつ組み合わせて持ってきたのだが片方のストッパーがバカになっていて、まったくきかない。やむなく1本ストックで登ることに。
 最初から急坂が続く。まっすぐに伸びた秋田杉が美しい。丈の短い木々にはトナカイの角のように雪がまとわりついている。女人堂まで2時間。そこから前岳頂上までは15分。
 女人堂の手前あたりから急速に風が強くなり寒さも厳しくなった。あまりの寒さと風のため山頂でSシェフがツェルトでテント。この中に入ると、風も寒さもガクンと和らぐ。こんな布っきれ一枚なのに、何とも不思議だ。
 下山は1時半。アイゼンの効き目は確かだったが、1本だけだったストックが、今度は寒さでストッパーが効かなくなった。ストックは登山の必需品、下山が苦手な私にはなくてはならないものだ。登るときよりも柄を長く伸ばして使うのだが、それができなくなった。もうストックなしでは山にも登れない。
 寒さと風から逃げるように急いで下り、登り口のあずま屋でようやく昼食。寒い時はコーヒーよりもココアがうまい。

山頂にツェルトを張って一息

ツエルトのなかは驚くほど暖かい
 温泉は「秋田温泉プラザ」。近くにザブーンやゆらっくす、さとみ温泉といろいろ温泉はあるのだが、あまり考えもせず選んだ。ここの露天風呂は木風呂。欅なのかもしれないが確かめたことはない。露天の湯垢が外に流れでる仕組みになっているので、清潔だ。露天風呂は好きだがごみや虫が溜まりやすいので清潔感には欠ける。
 近所の山なので家に帰りついたのは午後2時。事務所ではもちろんまだ舎員が仕事をしている。ちょっと顔を出しにくい。
 山が早く終わるとSシェフと事務所の2階で飲み会をする。この日も「料理教室」という名目で、夕方5時から2人飲み会。出来合いの惣菜はまずいと決まっているので、酒の肴は自分たちで作る(酒や調理器具は私の担当だが、調理はほとんどSシェフ)。今日はメインが白菜。白菜の鍋に柿と合わせたサラダ。それにタラコの炒めものと〆は梅酢蕎麦。酒はSシェフが持参の「越の寒梅」の吟醸酒。こんなことばっかりやっていると、外に出て居酒屋に行くのもバカバカしくなる。宴会はいつも2時間ほど。2人で手分けして皿を洗い、後片付けを終えてお開きする。だから事務所宴会場は、場数を踏むたびにきれいになっていく。皿や調理用具は使えば使うほどピッカピカにきれいになっていく。

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●No.1 草紅葉の海で、なぜかパエリア
●No.2 贅沢お昼と、お気に入り温泉
●No.3 白神のブナの森を彷徨う
●No.4 南八幡平の自然休養林を歩く
●No.5 巨木の森で、雨に追われて
●No.6 何が悲しくて、遠い県境の雨の山へ(+クマの話)
●No.7 「キジ撃ち」慣れ、増える体重、初めての山
●No.8 雹に雷とスパイク長くつ、是山の山
●No.9 賞味期限切れ食品がうまい、きれいな三角山
●No.10 生きものたちと出あい、ラーメンうまい雪の山
●No.11 はじめての朝市、風格の天然杉、泥土のババ落とし

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