Vol.1028 20年9月12日 週刊あんばい一本勝負 No.1020

猛暑に更新、ホッピーとバスキア

9月5日 寝る前の読書は梯久美子『サガレンー樺太/サハリン境界を旅する』。あの名作『狂うひと』の、今や日本を代表するノンフィクション・ライターの作品だ。熊本生まれで北大出身というのもユニークな略歴だ。身構えて読み始めたのだが、そのあまりの「鉄オタ」ぶりにまずはビックリ。自粛中に読了した沢木耕太郎の『深夜特急』の後なので、なにかとハードルは高いが、読み進むうち、どんどん面白くなりそうな予感がする。これで数日間は夜の無聊はなぐさめられそうだ。

9月6日 散歩の途中、突然ホッピーが呑みたくなった。このところ体調(首と右腕の痛み)が悪いせいもあるが「酒を呑みたい」という気持ちがすっかり萎えていた。ウイスキーもワインも焼酎も日本酒にも今一つ気持がむかわない。ホッピー自体が関東圏の赤ちょうちん専用の飲み物で、東北ではほとんどなじみのないもの。いまはコンビニでも買えるが、二昔前は秋田でホッピーといっても飲食店関係者でも知らない人が多かった。プリン体がないというのもいいね。これからはホッピーの時間が増えそうだ。

9月7日 首から腕にかけての痛みの初期はパニックで混乱の極みだった。時間がたち痛みのポイントが絞り込まれ、痛むときの身体の姿勢から頸椎に問題があり、そこから上腕3頭筋に痛みがつながっている。首に負担をかけなければ痛くない。朝のうがいが出来ないのがつらい。首を痛めたのはパソコンで観るアマゾンプライムの映画鑑賞に夢中になりすぎて無理な姿勢(首に負担)をとったことだろう。早くこの痛みから解放されたい。

9月8日 暑い。シャチョー室は西日のもろに当たる2階。午後からの室温はかるく40度を超える。冷房は20度に設定しているのだが、室温は27度くらいまでにしか下がらない。首と腕の痛みはかなり薄れてきたとは言うものの、まだちょっとした拍子に激痛が走ったりする。鬱々とした日々だが、学生時代にうちでバイトをしていたH君から「籍を入れました」という結婚の報告。若いころからずっと見てきた青年が一歩ずつ階段を昇っていく姿はうつくしい。

9月9日 不愉快な激痛の正体がわかった。昨日行った整骨院で「胸郭出口症候群ですね」と診断。首や肩から神経が出ている腕に痛みが発症することを「頚肩椀痛」というのだそうだ。自粛の影響で同じ症状で苦しんでいる人が多くいるのだそうだ。リモートワークなどでPCに向き合う時間が長くなり、首根っこを前に突き出して作業するため、この症状が出てしまうのだそうだ。私の場合はアマゾンプライムが原因だ。小さな字幕を読むために前のめりの姿勢で長時間過ごすことが最近多くなっていた。病名がわかるとなんだかもう治ったような気になっている。痛みも沈静化の傾向にある。

9月10日 朝一番で運転免許センターへ。免許の更新だ。70歳講習を受けているので、わずか1時間ほどで新しい免許証が発行された。次は駅前の市役所サービスセンターへ。同じくマイナンバーカードの更新。駅ナカを少しぶらつき、西武の地下食品売り場の「北辰」の寿し弁当(1080円)を買う。買った寿司をアトリオンの交流広場で食べる。食後は何年かぶりにジュンク堂へ。図書カード1万円分が手元にあったので本の大人買い。

9月11日 昨日は駅ナカでショッピングを楽しんだ。その大人買いのひとつがバスキアの絵がプリントされたビニールバック。2500円くらいだったと思うがロフトのMOMAコーナーに売っていた。ニューヨーク気分にちょっとだまされてしまった。 バスキアは昔好きな画家だった。20年前、東京で初めて彼の作品展が大手デパートで開催されたとき、わざわざ秋田から見に行ったことがあった。畳一枚ほどあるモノクロのいたずら書きが3千ドル。これは何をさておいても買おうと思い、係員に念のため値段を確認。ゼロがひとつ多い3万ドルだった。大恥をかくところだった。でもあの3万ドルのいたずら書きも今ならもう一ケタ大きい値段になっているのだろう。さっそくバスキアのバックをレジ袋代わりに買い物。バスキアにはネギやダイコンもけっこう似あっている。
(あ)

No.1020

深夜特急1〜6
(新潮文庫)
沢木耕太郎

 8月に入っても日本列島は静かなまま。電話もメールも書店注文も出版依頼もないまま滑るように1日が過ぎていく。日々のニュースやそこで発表される数字に一喜一憂するのが嫌になり、思い切って昔読んだ本書を読み直すことにした。現実逃避である。本が出た86年当時、自分はまだ30代だ。全6巻の文庫本だが、さすがに名著といわれるだけあって巻おくを能わずの面白さだ。一巻目の香港・マカオから始まり、2巻目はマレー半島・シンガポール、3巻目はインド・ネパール、4巻目がシルクロード、5巻目がトルコ・ギリシャ・地中海、最後の巻が南ヨーロッパ・ロンドンである。文章も中身もまったく古びていない。まずはそのことに驚いた。何カ所か、「あっここ読んだ記憶がある」というフレーズにも出会えてうれしかった。各巻末に対談が収録されている。2巻目の対談収録者は高倉健。「世界で一番好きな土地はハワイ」という高倉に沢木はひどく共感している。人が温かいのがその理由だという。「深夜特急」は英語でミッドナイト・エクスプレス。これはトルコの刑務所に入れられた外国人受刑者の隠語で「脱獄」を意味するのだそうだ。なるほど。

このページの初めに戻る↑


backnumber
●vol.1024 8月15日号  ●vol.1025 8月22日号  ●vol.1026 8月29日号  ●vol.1027 9月5日号 
上記以前の号はアドレス欄のURLの数字部分を直接ご変更下さい。

Topへ