| Vol.1317 2026年3月28日 | 週刊あんばい一本勝負 No.1309 |
| 「ZINE」のような気持ちで | |
3月21日 勢古浩爾の「バカ老人シリーズ」(私の命名)は、やっぱり面白い。最新作の書名は『老後がめんどくさい』(草思社)だ。「老後は楽しまなきゃ損」をとなえるバカたちを罵倒する。老後の資金はないし、小中高時代の友達はいない。ボーっと生きてるだけだが、それで全然いい。余計なことを言うな!。章題を読むだけで内容がわかる。「望みは昨日と同じ今日の日」「人生のほとんどは運である」「狡猾な世間に振り回されない」「老人は世につれ、人につれ」「なるようになるよ」……と言った具合だ。勢古の反対側にいる「楽しめ教」の教祖は和田秀樹だ。和田は楽しむことが義務のように語る。これこそ逆に病気ではないのか。納得。
3月22日 散歩の途中、自転車に乗って道路のゴミ拾いをする人に会った。広面では有名な方で元三吉神社の宮司さんだったTさんだ。思い切って声をかけてみた。ずっと前から尋ねたかったことがある。近所にある石動神社によく行くのだが、その川向こうの丘に、白山神社がある。どちらも北陸由来の神社で創建時期も同じころだ100メートルも離れていない場所に同じような創建由来の神社が二つある理由を教えてもらいたかったのだ。どちらの神社も、確か明治以降は三吉神社の管轄になっていたはずだ。「近いといっても地理的には広面と柳田で、大字が違います」というのがTさんの答えだった。A集落の南端にある神社と、B集落の北端の神社が、たまたま地理的に隣同士になり、しかし両神社に交流はない。というケースは珍しくないのだそうだ。それにしても散歩中よく目にするTさんのゴミ拾いには頭が下がる。あの23年の集中豪雨による太平川氾濫の翌日も、Tさんは黙々とゴミ拾いをしていた。すごい人だ。 3月23日 出版を取り巻く状況は、世界情勢や個人的な事情とかかわりなく相変わらず低迷の中にいる。小さな船で海図のないまま航海しているようなイメージだ。2019年まで私たちの業界には『出版ニュース』という月2回発行の情報誌があった。この雑誌が、秋田で出版する私たちのような人間にも「自分の位置」を教えてくれる、数少ない羅針盤のような存在だった。私にとっては半世紀にわたって定期購読した「唯一の雑誌」でもあった。その雑誌の休刊は本当にショックだったが、これも出版が置かれた厳しい現状そのものの現れだったわけなのだろう。ずっと編集長を務めたkさんはお元気だろうか。いまの出版界の立ち位置を「出版ニュース」ならどのように分析しただろうか。 3月24日 もう12,3年前になるが、無明舎には5,6人の学生アルバイトが常駐し、仕事を手伝ってもらっていた。この時期、学生アルバイトがたくさんいた理由は、会社のダウンサイジング(縮小)を手伝ってもらうためだった。大きな転回点にあった時期だったのである。3・11以降、このままでは出版は立ち行かなくなるという危機感から、事業を縮小し、できるだけ身軽になって危機を乗り越えようと決めた。野放図に拡散してしまった経営を、ま逆の緊縮のほうに舵を切るのは大変だった。その返品や在庫処分といった肉体労働や、煩雑な事務作業を学生たちに頼ったわけである。卒業後、いろんなところに巣立った彼らとは今も連絡を取り合っている。彼らも社会に出て10年たち、そろそろ仕事場の異動の連絡が入るようになった。10年という歳月はそういう時間でもあるのだろう。 3月25日 天気がいいので足を延ばして駅前をブラブラ。特筆すべきなのは、「本屋」に入ったこと。そこで面白そうな文庫本を見つけた。『藩邸差配役日日控』(砂原浩太朗)だ。100円ショップにも寄ってみた。あいかわらず、これ本当に100円? と不安になるような安さだ。イランの石油事情に思いをはせ、100円ショップがその試金石になる日も遠くないのかも。100円ショップの隣はサイゼリアだ。この2つの店が、いまや日本の希望だ。帰途、冬の間、ストレッチも筋トレもしなかったことも反省、明日からちゃんとストレッチすることを誓う。 3月26日 昔から「日記」が好きだった。日記をテーマにした雑誌を作りたいと考えて、昔、企画を作ったこともあった。うまくテーマを絞り切れず、前に踏み出せなかった苦い経験もある。出版不況のただなかで、ひとり気を吐く月刊誌『本の雑誌』の、今月号の特集は「日記の時代」だ。さすがだなあ。この特集のきっかけにもなったのは内沼晋太郎さんの立ちあげた書店「日記屋 月日」だろう。彼は「季刊日記」という雑誌まで刊行している。彼の最近の活動を知って「やられちゃったなあ」というのが、正直な感想だった。私にも彼と同じことを考えていた時代があったからだ。「本の雑誌」にも内沼さんにも敬意を表したい。 3月27日 ホームページ連載中の「拙者の散歩道」を本にすることにした。4月には出来上がってくる予定だ。今はやりの「ZINE」のような気持ちで編んだもので、要するに「1冊でも本にできます」というやつだ。売れてほしいので定価(1500円)もISBNもつけたが、まあ一種の自費出版である。趣味で本を作る、というのは簡単そうで案外難しい作業だった。半世紀以上、一冊でも多く本を売りたい、と思って出版業界で生きてきた。その真逆のモチベーションで仕事をするのだから、簡単にはなじめないのも当然だ。やっぱり出すからには売れてほしい。 (あ)
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