Vol.225 04年12月25日 週刊あんばい一本勝負 No.221


雪と青空

 ようやくご覧のような白一色の世界です。雪国の人は、雪が降らないとそれはそれで「儲かった」と内心ほくそえんではいるのですが、あまりに暖冬が続くと「雪が降らないと暮らしのリズムが壊れて何か大きな事故がおきるのでは…」と不安に駆られるのです。ですから連続の降雪があった22日23日に銀世界に変わった風景を半ば安堵と「また来たか」という憂鬱さの入り混じった気持ちで迎えました。実はこの降雪のあった日、仙台に出張していました。新幹線が岩手に入りあたりまでは雪景色が美しかったのですが、仙台に近くなると雪はまったく姿を消しました。仙台はうってかわってきれいな冬の青空でした。同じ東北でも日本海側と太平洋側では冬景色に限ってい言えばまったくの「別世界」。冬の青空は雪国の人のあこがれです(少なくとも私は)。かなりタイトなスケジュールだったのですが、翌朝、市内の古本屋さんめぐりをしながら仙台駅から時計回りで東北大学、西公園経由で市街の外側を散策しました。西大立目さんの『仙台とっておき散歩道』を読んでもわかるのですが、仙台は散歩好きには魅力のある街です。プロ野球「楽天」の誕生で少々浮ついていますが、2泊3日でこの街をテーマ毎に歩き倒す、というのも、けっこういける旅行プランかもしれません。冬の仙台散歩はお奨めです。
(あ)

もうすっかり銀世界

これは岩手県境付近か

冬至の日に思う

 12月21日は冬至。秋田では朝から吹雪でしたが、数年前から、この日を境に一日一日昼が長くなることに喜びを感じ、どこかうきうきした気分になるようになりました。これから本格的な雪の季節が始まるというのに、冬至を迎えるとうれしくなることは若い頃はありませんでした。これも年をとってきた表れのひとつでしょうか。また、逆に夏至を迎えるとちょっとさびしくなります。翌日から日がだんだん短くなるためです。
 夏至や冬至というと思い出す場所があります。秋田県北部にある鹿角市大湯のストーンサークルと、アイルランドにあるニューグレンジ遺跡です。大湯のストーンサークルは約4000年前に作られた環状列石の遺跡で、ふたつの日時計とふたつの環状列石の中心を結んだ線が、夏至の日没の位置を示しています。一年で一番日が長くなる日を敬う気持ちの表現かもしれませんね。また、ニューグレンジの遺跡は、アイルランドにケルト民族より古くから住んでいた先住民族によって、約5000年前に作られた直径80メートルの大きな円形の墳墓です。この古墳には入口から中央に向う長さが19メートルの細長い通路がありますが、冬至の前後数日間の一時だけ、通路の奥まで日が届き壁を照らします。これは古代民族が太陽を崇拝し、この日を境に暗い冬から日の長い春に向う喜びを表しているのだと言われています。有名なイギリスのストーンヘンジの石柱も、夏至の太陽の位置を示しているそうです。自然の灯りしか無かった時代、日本もアイルランドもイギリスも同じように太陽を敬ったのでしょう。このように世界各地にある巨石遺跡には、太陽を崇拝したものがずいぶん多いようです。
 冬至を喜ぶ自分を感じて思ったのですが、21世紀に住む我々も自然の摂理には結局かなわい事がわかってきて、年をとるに従って自然への畏怖が湧く。逆にその分、親しみや尊敬が強くなり自然の流れに敏感になるのじゃないかな、と。
(鐙)

大湯ストーンサークルの日時計

亀の甲羅のようなニューグレンジ遺跡。世界遺産になっています

ニューグレンジの入口。渦巻き模様の石が印象的でした

No.221

砂糖の世界史(岩波ジュニア新書)
川北稔

 小説やルポ以外で久しぶりに驚きながら読了した「論考」である。著者は大阪大学文学部教授で西洋史学専攻らしいが、本書では歴史人類学の方法論である「世界システム論」を使ってわかりやすく、世界の歴史と砂糖の関係を解き明かしている。いささかオーバーに言うと魔法のように複雑な世界史の流れが平易に目から鱗が落ちるようにわかる本である。「世界システム論」というのは、いわば近代の世界を一つの生き物のようにみなし、その成長や発展をみていくもので、世界を一つのつながりのあるものとみなす考え方である。本書はイギリスという人間が砂糖との関わりを通じて世界史全体にどのような影響を与えたかを考察したものである。著者はS・W・ミンツ著「甘さと権力――砂糖が語る近代史」(岩波書店)という本の訳者でもあるので、推測するにそれが種本なのだろうが、それにしてもたった一つの食材から、紀元前のアレクサンドロス大王の東方遠征から、イスラム世界の文化、十字軍とルネッサンスの意味、大航海時代、植民地主義、プランテーション、奴隷制度、三角貿易、産業革命といった一筋縄ではいかない世界史用語が、マジックの種明かしのように簡単にわかりやすく解説されているのには驚くよりもショックを受けた。もし、高校生の時にこんな視点に立った授業を受けていれば、私も間違いなく歴史好きの少年になっていたにちがいない。

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