Vol.222 04年12月4日 週刊あんばい一本勝負 No.218


こんな豆本、好きだなあ

 「イラストルポライター」内澤旬子さんから素敵な豆本が送られてきた(豆本と言うのはもう死語ですか)。紙の選び方から、装丁、レイアウト、製本まで、本が好きで好きでタマラナイ人でなければ造れない見事な出来栄えの豆本である。内澤さんはいろんなところで「本作りのワークショップ」も開いていて、この本にも出てくる「封筒本」造りには、小生もかなりインスパイアされてしまった。出版社をやってるなんていっても結局は「本という形が好きな人」に過ぎないわけで、この原点ともいえる規制のない手作り本は、正直なところメチャうらやましい。
 内澤さんは小舎刊行の南陀楼綾繁著『ナンダロウアヤシゲな日々』の装丁やカットを描いてくれた方ですが、全国の屠畜場を取材してイラストルポしています。これもいずれは本になるのでしょうが、今から楽しみです。「落ち込んだ時は、製本が何よりのクスリ」という女性も珍しいですね。
(あ)

装丁の本と豆本

1週間があっという間に過ぎていく

 このごろ時間が過ぎるのがやけに早く感じる。月曜日の朝、「さあ1週間の始まりだ、しんどいけど頑張ろう!」と起きだし、金曜日にこの「週刊ニュース」を書く間までが、ほとんどひとつながりの時間のように短く感じられてしまう。生まれてこのかた「お勤め経験」がないので土曜日曜休日が手放しでうれしいわけでもないので金曜日になると「えっ、もう週末」とガックリくる。土日は黙々ひとり自分仕事に集中する。それが日課になり11月もあきもせずこのローテーションの繰り返し。

一日の三分の1を過ごす自分の部屋
 朝起きて仕事をして夜散歩をして本やビデオ映画を観る、土日も同じようなものだから、フトンに入るたび「こうして日々年老いつつ、死というゴールにドンドン近づいている」と詠嘆しながら眠りに着くことになる。1週間を細かく振り返るといろんなことが身辺に起きていて、けっして単調な日々ではない。珍しい客が3、4人あったし、義母の83歳の誕生日に寿司屋で食事、カミさんと派手なけんかもしたし、古いアメリカ映画「或る夜の出来事」はじめ5本ほどのビデオ映画を観た。刺激的な本も3冊ほど読んでいるし、HP用の原稿(書き溜め)や朝日県版連載用の原稿も数本書いている。週末には横手で友人の手打ちそばをご馳走になるため遠出したし、実家に帰り母親とも会っている。時間が早く過ぎるという感覚は単調さだけではない。ある種、精神的なものから来ているような気がするのだが、私の場合は忙しいよりヒマなときが「時間は早く過ぎる」のは確かなようだ。
(あ)

市場で散歩

 週末秋田にいると、ときどき秋田駅前にある市民市場に行きます。この市場は昭和26年に創業、現在の場所に移転したのは昭和39年で、この市場に昔から愛着を持っている秋田市民は少なくありません。老朽化にともない平成14年に建物を全面的につくり変え、現在は88店舗が営業をしています。鮮魚、青果、塩乾物、秋田独特の食品加工物などが豊富にそろい、ひやかしながら歩いているだけで楽しくなるような市場です。今日見て来たところ、この時期の主役はハタハタとマダラでした。特に男鹿で獲れた新鮮なハタハタが大きく場所を占め、明るい照明の下できらきら光っていました。また、秋田沖で獲れたマダラは身だけでなく、秋田では「ダダミ」と呼ぶ白子があちこちの店頭に並べられ、その存在感をアピールしていました。私の好きな貝類も多く、ざっと記憶しているだけでホタテ、マガキ、アサリ、シジミなどの見慣れた貝だけでなく、アカガイ、ホッキガイ、ウミツブ、エゾボラ、バイガイ、ムールガイ、タイラガイなど日本各地の貝が揃っていました。
 私が今日買ったのは「鯨のナスかやき」が食べたくなったので塩鯨と、白い根っこがおいしい湯沢セリ、能代ネギ、豆腐などの鍋の材料と、シラウオの刺身、思いがけず目に付いた上海蟹です。上海蟹は1匹300円と格安。ちゃんと中国・陽澄湖産のタグが付いた本場物(たぶん。でもこの安さにはちょっと首を傾げてしまいます)です。大きさは今ひとつでしたが、あのおいしさを家で堪能できることを思うと贅沢は言えません。女房が東京に行っているので今夜は娘と私の母親と3人での食事になりますが、おととい男鹿で買ってきたハタハタの塩焼きと鯨の一人鍋、シラウオの刺身、それに上海ガニという自分の好きなものをテーブルに並べ、燗酒を楽しもうと考えています。早く夜にならないかなあ。
(鐙)

ハタハタはまだ値段が高いですが良く売れていました

マダラの奥に盛られているのが「ダダミ」

上海蟹は10月から冬にかけてが旬のようです

No.218

しあわせ道場(知恵の森文庫)
山田スイッチ

 現在は青森・弘前市に住んでいる著者の処女作『しあわせスイッチ』(ぴあ)はハチャメチャで面白かった。ほとんど「文芸の山田花子」のノリで、これは将来が楽しみなエッセイストになるのでは、とこのコーナーでもいち早く紹介した。その後、売れっ子になったのか、なんと秋田魁新報のエッセイまで書き始めたのは両親が秋田県比内町出身という縁によるものらしいが、この随想がまったくおもしろくない。やはり「引き出し(ネタ)が少ない」というのは物書きに致命傷だなあ、とがっかり。それでもなぜか気になる存在で、東京のブックオフで書き下ろし文庫が100円で売られていたので、「書き下ろし」に惹かれて買ってみた。どうやら処女出版の後、弘前の不動産屋さんと結婚、その?末だけに絞って書いた結婚騒動記なのだが、これがなかなかおもしろい。短距離(エッセイ)はてんでダメだが、ロード(長編)になるとがぜん力を発揮するタイプの走者だったのだ。これなら山田花子でなく群ようこにもなれるかもしれない。ある編集者から聞くところによると、現在は不動産屋の旦那とブラジルで秋刀魚を売るという、わけのわからない旅に出て、それを1冊にまとめた本が近く出るらしい。これは楽しみである。

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