Vol.226 05年1月1日 週刊あんばい一本勝負 No.222


明けまして、おめでとうございます

 去年同様、お正月は東京で過ごしています。これでしばらくは見飽きた雪ともお別れと心躍らせて東京にきたのですが、なんとこちらも雪。ま、たまにはこんなこともあるでしょう。と半ばあきらめかけていたら、元旦は目も覚める青空です。これは秋田では逆立ちしても無理な「冬の空」で、今年は春から幸先が良い、とひとりほくそえんでいます。
 旧年中は、たいへんお世話になりました。今年もかわらずHPをごひいきに、よろしくお願い申し上げます。

 昨年は、過去の30余年の無明舎のなかでも指を折って数えられるほどの「不調」の年でした。その原因や問題点はわかっているのですが、わかっていて手を打たなかった経営者の責任は重大だったと思います。定年と出産で2名の人員を欠きながらも何とかなるだろうとタカをくくり、世の中の大局的な見通しも大甘ちゃんで、反省しきりです。暮近くになってからようやく本来のエンジンがかかりはじめましたが、ときすでに遅く、前半のロスを挽回するにはいたりませんでした。

 「55歳といえば昔の定年の年齢、少しは休みたい」などと、HP上で何度もたわごとを言ってまいりましたが、もう5年はこれまでどおりガムシャラに猪突猛進するしか「道」はないことを悟った1年でもありました。
 また、後継者問題もいろんな方からいわれましたが、前から言っていることと変わりません。私のやっていることはビジネスだとか仕事という前にわがままな「生き方」そのもののような気がします。ビジネスなどという高尚なジャンルとは無縁の世界です。そんな自分の「生き方」を誰かが踏襲したり、引き継ぐというのは不自然ではないか。かっこよすぎるといわれるかもしれませんが、そんな風に考えているので後継者はまったく考えていません。できるだけ健康で長生きをして、少しでも長く無明舎出版という存在を長引かせたいとは思っていますが、いずれ幕は自分の手で降ろしたい、と念じています。

 そんなこんなで、今年も皆様のおかげでどうにか仕事を続けていけそうです。どうか、これからもお見捨てなく、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします。皆様にとって、本年が、元旦の東京のようなすばらしい、そして実り多い年でありますように祈念しております。
(あ)

元旦の東京の青空

No.222

ウーマンアローン(集英社)
廣川まさき

 30歳をちょっと越えたばかりの若い女性のユーコン川カヌーひとり旅の記録である。こう書いてしまうと身もふたもないのだが、第2回開高健ノンフィクション賞受賞作である。前説も何もなくいきなり旅のクライマックスから文章が始まる。これはちょっと新鮮で、さらに最後の最後まで自分が何で旅に出たのか、紀行特有の筆者のぐたぐたした内面がいっさい顔を出さない。ひたすらに具体的な旅の記述とその時々の真情が正直に吐露されていて好感の持てる紀行文になっている。それにしてもまあすべてにわたっていさぎよく、まっすぐで、勇気のある女性である。この年代特有の、うっとうしい恋やら愛やらの話しも怨めしい日本や日本人批判もほとんど出てこない。驚くべきことに彼女はカヌーに乗った経験もなく、(クマ対策用の)銃も持たず、「Are you gonna kill me ? Or hng me?」(私を殺してしまいますか、それとも抱きしめてくれますか)という言葉だけを大自然に投げかけながら、1500キロの大河を漕ぎきってしまうのである。こうなると逆に、彼女はどんな家庭環境に育ったのだろう、学生時代はどんな女の子だったのか、趣味や好きな本は、影響を受けた人物は……といったミーハー趣味も首をもたげるからこまったものだ。旅の目的は新田次郎「アラスカ物語」の主人公・フランク安田の故郷を訪ねてみたい、という動機のようだが、新田の本を読んでいなくても十分楽しめる1冊だ。

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