Vol.284 06年2月18日 週刊あんばい一本勝負 No.280


風邪など引かないように

 いつもとはちょっと違ったあわただしい1週間でした。週初めにAがすぐそばにある大学病院に検査入院、そのため不在中の打ち合わせなどでバタバタ、仕事の引継ぎなど電話応対に忙殺されたせいです。嵐のような1週間がようやく過ぎた、という感じです。Aの検査入院は前からわかっていたのですが、病院ベッドの空きが急にでたので予定より1ヶ月早く入院することになった次第。3〜4週間後には復帰します。舎員の高齢化がすすみ、これからはこうした「不測の出来事」も多くなります。いつなにが起きても平常心で対応できるのが理想なのですが、なかなかそううまくいきません。うまくいかないのですが、大きな戦力が抜けると、その穴を埋めるために残った人の能力が格段に向上するというメリットもあります。特に若い人はこういった機会でないとレギュラークラスの仕事を任せてもらえないのでチャンスですが、バイトのH君と女性のTしか「若者」と呼べる人種がいません。彼らに期待しましょう。
 今週は雪の少ない1週間でした。雪が降らないだけで得をしたような気分になります。来週からは事務所に人の出入りが多くなりそうです。夜の飲み会の予定もはいっています。2週目が本当の正念場なのかも。週末に突然のどが痛くなり、2日間寝込んでしまいましたが、こんな大事なときに風邪なんか引いていられません。皆さんも風邪には気をつけてください。
(あ)

No.280

にぎやかな天地(中央公論社)
宮本輝

 豪華本を専門に造るフリーの編集者が主人公で、ある老人から「発酵食品」に関する製作依頼を受けるところから物語は始まる。これが主調音になって物語は進行するのだが、さすがに構成はうまく、読むものをあきさせない。が内容的には今ひとつテーマが絞りきれていない印象もうける。何となく中途半端で結末を迎えてしまうのだ。登場人物たちは与えられた役割を、それこそベテランの役者のようになめらかに演じ不自然さを感じさせないが、読者の側にさざなみを起こすような小さな波乱も起こらない。どきどきするような身近な小さな事件が起きない、というか起きても切迫感が薄い。このところ小生が好んで読む小説家はほとんどが三十代、四十代の若い作家である。彼(女)らの書く本に共通しているのは、ほとんど事件らしい事件がおきないが、小さなさざなみがけっこうきつく読者の心に食い込んでくる、という構成になっている物語が多い。それが小生の好みにぴったりで、殺人や謎解きのある小説は受け付けない。もっぱら身辺雑記に終始している小説が好きなのだ。主人公が編集者で、発酵食品が脇役となると、それこそ小生好みの舞台裏は整っている。おもしろそうだ、と読み出したのだが、うまく書けていれば書けているほど日常が漫画チックになるのはどうしてだろう。描写も筆の運びも滑らかすぎると、逆に虚構の膜を強く感じてしまうのである。

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