Vol.303 06年7月1日 週刊あんばい一本勝負 No.299


メガネと住居表示

 この週はずっと体調不良で、ソファに寝転がっているほうが多かった。仕事を始める前に事務所でコーヒーを飲み、新聞を読んでるとムカムカしてきて、結局なんとなくエンジンがかからぬまま1日が終わってしまう。どこに原因があるのだろうと必死に考えたら、週末ようやく答えが見つかった。老眼が進んでメガネの度数が合わなくなっていたのである。それで新聞を読んでるときにヘンになっていたのだ。さっそく眼鏡屋で検査をして「遠くは見えにくいが近くはちゃんと見える」メガネを買った。もうこれで大丈夫。
 仕事の調子が今ひとつだったので、気分転換に外に出る(といっても近所を散策するだけだが)機会が多かったのだが、わが町内にはほかと比べて「多い」ものを2つ発見した。ひとつはおコメの自動精米機。これは周辺に農家が多いからだろう。もうひとつが問題なのだが、各町内の住所掲示板である。これがいたるところにある。それもご丁寧に住所だけでなく個人名をもフルネームで書いているものまである。個人情報保護法を持ち出すまでもなく、これはこの辺を徘徊する営業マンにとっては「絶好の目印」。犯罪にも結びつく。小生の名前もあったが「安倍」を「阿倍」に間違えているのはご愛嬌だが、こんなもの出してくれと頼んだ覚えもないし、町内会が会費を使ってこんなバカなことをやったのなら大問題だ。どうやらこうしたもの専門の広告屋さんがやっている仕事のようだが、こうした表示が問題になる日は近い。ガソリンスタンドの中でタバコをすっているようなもの。1日も早くやめたほうがいい。
(あ)
これが近所の表示板

おまけに名前が間違ってる

今週の花

 この花は、事務所近くの道路脇に咲くタチアオイです。背丈は1.3メートルほど。下のつぼみから上のつぼみへと順番に花が咲きます。下の花が咲く頃に入梅し、上の花が咲く頃には梅雨が明けるという俗説があるそうです。
 私が梅雨明けの目安にしている植物はマタタビ。入梅の頃、マタタビの葉はペンキをこぼしてしまったように真っ白くなりますが、その白い部分がなくなると梅雨が明けるというのです。これは、登山ガイドの人に教えてもらいました。
(富)

No.299

八十二歳のガールフレンド(編集工房ノア)
山田稔

 なんとも味のあるエッセイ集である。タイトルもうまいし造本もすばらしい。具体的にどこがいいのか、と内容を問われると戸惑ってしまうが、どのページから読んでも必ず次の文章も読みたくなる、不思議な余韻と吸引力がある。書かれていることが、こちらの知らない詩人であっても、興味もてそうにないテーマであっても、なんでもないことのようにスルッと読ませてしまう「余白の魔力」がある、としか言いようがない。「あの世なんて、ない」といわれれば、「生死は物理学ではありませんよ。生物としての、物体としての個が消滅しても、言葉と思い出は残る。人は思い出されているかぎり、死なないのだ。思い出とは、呼びもどすこと」と静かにこたえてくれる。底に流れる著者の心境は「時流に遅れまいという焦り、いまの世の中にむかって生きのいい発言をおこなおうという色気や野心、そんなものはない以上、好きな古い本を気分にまかせて、もっぱら自分の楽しみのために読み返せばいい。さいわい、中身はあらかた忘れていて、いま読んでも新鮮。そんな情けないような有難いような年齢に、やっと到達したのである」という一文に吐露されているように、文章にも言葉にも品格がある。欲がない文章は静かで、しかも強い。

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