Vol.367 07年9月22日 週刊あんばい一本勝負 No.363


秋・訃報・コインランドリー

 秋のDM準備も今週末で終了。久しぶりにノンビリ、週末をゴロ寝で過ごしてます。新聞連載も河北新報が半年間26回分の原稿を書き終わり、9月中には終了します。残っているのは朝日県版の月1コラムと北鹿新報(大館市)の週1コラム(「メタボオヤジのどすこい奮戦記」)だけ、ずいぶん楽になりました。
 秋になると「読書の季節」でもあり、いろんなところから「お話」の声がかかるようになります。私の話すようなことでいいのなら、と出来る限り出かけるようにしてますが、今年は紅葉の山登りを最優先に決めています。山登りの日程を先に決め、あいている日であれば、どこにでも出かける予定にしています。

 この夏、知り合いがずいぶん亡くなりました。1度しか会ったことがない言語学者の柴田武先生や劇作家の太田省吾さんなども含めれば10人近い知り合いを亡くしました。その多くが突然の死です。よく行った本荘市の蕎麦屋の親父は蕎麦打ちの最中の死でした。仕事でも世話になった料理学校の岸和子先生も唐突だったし、黒テントの俳優・福原一臣さんは奥さんの訃報に続いての不幸で、驚きました。数週間前まで舞台に立っていたというから、なんともやり切れません。この年になると、日々、死からは逃げられないことを覚悟しながら生きていますが、友人や先輩たちが倒れていく報を聞くたび、やっぱり深く落ち込んでしまいます。
 近所に2軒目のコインランドリーが出来ました。それがどうした、といわれそうですが、このコインランドリー、実に便利なことにようやく気がつきました。大きなカーペットや事務所のカーテンなどの汚れ物を一度に放り込んで、いっきょに乾かしてしまえる大容量がとにかく魅力です。以前はクリーニング屋さんに出していたのですが、出来てくるまでに1週間はかかりますから、この速乾性にはかないません。おまけに靴の洗濯、乾燥が出来ます。先日、はじめて山靴とエアロビ・シューズを何年ぶりかで丸洗いしました。いやぁその気持ちのよかったこと。汚れがこびりついていた靴のクリーニングは半ばあきらめていました。大げさなようですが、これはもう福音です。
(あ)
秋の雪国の海。かなたの山は男鹿寒風山
これが靴専用の優れもの洗濯機と乾燥機

No.363

石川くん(集英社文庫)
枡野浩一

 この本は面白かった。石川啄木にほとんど興味のないひとにも、たぶんゲラゲラ笑いながら読み通すことができる、テキストになるような本だ。その一方で、岩手県の人や賢治や啄木をこよなく愛する文化人には、屈辱的な内容のゴロツキ本におもえてしまうかも。
 この若き現代歌人の勇気ある才能には目を見張る。勇気というのは、こうしたテーマを選べる着想のこと。有名な『一握の砂』の歌を題材に、その作品と作者を徹底的に茶化している。その茶化しかたが中途半端ではない。真正面から作品や人物と向き合いながら、批評はちゃんと肩の力が抜けている。親孝行で清貧という啄木のイメージを粉々に打ち砕くばかりか、「どうしてあなたが偉いのか、私にはわかりません」という軸足は動かない。仕事をサボって、友達にうそをつき、借金をし、女を買うことにのみ情熱を燃やし続け、家庭はメチャクチャでも、でも文学者ならいいの? 名作なら何でも許されるわけ? というわけだ。啄木の歌一首一首に衝撃的な現代語訳がついている。「一度でも我に頭を下げさせし人みな死ねといのりてしこと」という歌は、桝野が訳すと「一度でも俺に頭を下げさせたやつら全員死にますように」。啄木の私生活のサイテーぶりを皮肉たっぷりにイジリ倒しながらも陰湿さは微塵もない。

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