Vol.368 07年9月29日 週刊あんばい一本勝負 No.364


秋田国体とブラジル移民

 国体なんて、自分とはまったく無縁だと思っていたのだが、南米から日系移民の方々が招待されていることで、思わぬかかわりを持つことになった。
 彼らが到着した日、近所にある宿泊地(さとみ温泉)で県主催の歓迎パーティがあり、彼らに会いに行った。旧交を温めあった後、O夫妻には小生の事務所まで来ていただいて2時間ほどワインを飲みながら歓談。明日以降のスケジュールを打ち合わせ。
 とにかく彼らのスケジュールはハードで、1週間びっしりと県内各地を駆け回る予定になっている。そのため親族の墓参りや思い出の地などに自由に出かける時間的余裕はほとんどない。自由行動は電車やタクシーを使うことになるが、サンパウロなどの大都会に比べてインフラが原始的なわが秋田では、宿泊地から同じ県内の湯沢市に行こうとすれば、たぶん丸1日以上かかってしまう。顔は日本人だが、彼らはまぎれもなく「外国人」なのである。こうしたところの配慮も必要である。ロビーでさっそく「国体を開催するような都市なので同じ県内の親戚を訪ねるのは簡単だと思っていた」と高齢の女性のグチを聞かされてしまった。これも何かの縁、小生が湯沢まで送り届けるしかないのかも。
 それとホスト県として腑に落ちないのは、日本の首都である東京に一泊もしないで両親や祖父母の生まれた故郷だけ見せて帰す、というスケジュール。日本の首都がどれだけ発展しているかを見てから、地方都市との格差を知ってもらうのも、何十年ぶりに日本に帰って来る人には必要な、手順だったのではないだろう。
 ま、グチグチ言ってもはじまらない。今日は5名の人を招待して、近所の居酒屋で一杯やるつもり。みんな私自身が南米旅行中に泊めてもらったり、お世話をかけた人たちばかりだ。こうして恩返しができるのも秋田国体のおかげである。1週間後の彼らの帰国まで、小生はほとんど仕事が手付かずになる予定である。
(あ)
国体前の秋田市メーン通り。人通りが少ないのは地下道が開通したためか

No.364

反転(幻冬舎)
田中森一

 話題のベストセラーだが、正直なところ読みにくかった。文章がこなれていないということは、少なくともゴーストライターではなく本人が書いている証拠だろうから、まあ、がまんするか。編集者がもう少し手を入れて読みやすくする方法もあったのだろうが、たぶん現場の臨場感のようなものを優先した結果なのだろう。その生い立ちから裏世界の人脈まで、読み初めるまえから、ある程度想像できるし、オビ文や宣伝文句のキャッチフレーズにもこと細かく登場人物(バブル紳士)たちの名前が列挙されている。これだけで本の内容はあらかた想像がついてしまう。こちらが知りたいのは、どうしてこのような闇社会の悪人やバブル紳士が、たった一人の弁護士の下に集まってしまったのか、というあたりなのだが、特捜エース検事だったから、というだけでは納得がいかない。たぶん独特の営業トークがあったのではないのか。それはとにかく暴力団をはじめ日本の悪人が、ことごとく彼の元に身を寄せるという世界の狭さには驚いた。こうした人物のなかには政治家の安倍晋太郎や、アホ政治家の代表としてチンネンこと山口敏夫がチョコチョコ登場する。このあたりの意外感はドキドキするから、本文全体に、こうした意外感が少ないのが、この本の欠点かもしれない。

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