創業が大正12年という80年以上の歴史を持つ秋田市土崎の老舗、K書店の閉店(廃業)のあいさつ文が週末に届いた。もう書店の廃業や倒産には驚かないのだが、この文章の末尾に主人の自筆メモで、「書店人として、店頭で郷土出版物が売れるのが一番うれしい時でした」という1行があった。これにはガラにもなく目頭が熱くなってしまう。
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気になっていた草思社の再建は文芸社に決まった。出版業界の反応は「文芸社の丸儲け。現実的に再建は難しいのでは」という意見が多勢を占めているようだ。それにしても文芸社、新風舎を抱え込むあたりまでは同業(自費出版)だから「あり」だとは思っていたが、草思社にまで手を出すとは。草思社のブランドを使って自費出版の需要拡大を狙っているのは明らかで、ここまでくるとあざといというよりも、文芸社にまったく太刀打ちできなかった既存大手出版社の力不足に、暗澹たる気持になってしまう。
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その新風舎倒産の余波なのかもしれないが、全国各地から出版依頼や原稿が送られてくる。もちろん自費ではなく企画出版希望だが、業界では名前のよく知られた著者の方も少なくない。過去に数冊、大手出版社から本を出していて、そこに断られたのでウチに持ち込むケースが多いようだ。そうしたセミプロクラスのなかには出版界の現実をほとんど理解してない人もいる。自分から売り込んできてダメとわかると「じゃ講談社から出すから」と捨て台詞で電話を切る大学の先生や、没になった原稿を返されて「ボツにするんだったら最初から読むな!」と怒り出す「作家先生」もいる。何の前触れもなしでいきなり送りつけてくる原稿にマシなものはほとんどないというのは編集者の常識なのだが、送られてくると、どうしても目を通してしまう。編集者の性ですハイ。いやはや疲れます。
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