Vol.396 08年4月19日 週刊あんばい一本勝負 No.392


半生紀ぶりに観た「十六羅漢」は……

 酒粕の匂いが町全体にただよう県南部の穀倉地帯に育ったので、海をはじめて見たのは小学5年生になってからだ。
 中学生になっても海を見た事ないのはかわいそう、という理由なのか、小学校では「希望者」を募って社会見学の名目で、にかほ市(小砂川)に1泊2日の研修バス旅行を企画、それに参加した。裕福な家庭でなかったのに旅行に行けたのは、「海を見せてやりたい」という親心からだったのだろうか。
 このときの旅行のディテールはもちろんほとんど覚えていない。が、印象的な一枚の写真が残っている。何人もの人間の顔が彫られている岩場を背景に海辺で遊んでいるものだ。
 この写真のインパクトが強く、同じ場所にもう一度行ってみたい、と実は社会人になってから30年以上も思い続けていた。いくら同じ秋田県内といっても、そのチャンスはなかなかないのが実情だ。
 だから、このあたりを通り過ぎるたび、「今回もダメか」とため息が漏れていたのだが、先日(12日)、ようやく「夢」が実現した。場所はてっきり小砂川と信じていたのだが山形県遊佐町。いちおう観光名所になっている「十六羅漢」という場所だった。そうか山形県側の名所だったために情報量も少なかったわけだ。当時はたぶん小砂川の海水浴場で遊び、そこからこの観光スポットに足を伸ばしたのだろう。
 おそるおそる、というかドキドキしながら十六羅漢像のある岩場に下りた。が、いくら探しても羅漢像らしきものがみあたらない。あまりに小さくて見逃していたが最初は場所を間違えた、と思ったほどだ。
 子どものころの印象とはまるで違って、「小さく、汚い」ことに、少々落胆した。
 写真と同じ場所に立って見上げても、今ひとつ実感がわかない。まあ50年近くも前のことだから、勝手なイメージが膨らみすぎてしまっているのだろう。でも、これで「あそこに行かなくちゃ」という脅迫観念から、ようやく解放された気分である。
(あ)
ここが遊佐町の十六羅漢の海辺
こんな岩場です
いつもみている酒田の町並みと鳥海山

No.392

電気のひみつ(学研)
青木国夫監修・横田とくお漫画

 学研のこの「ひみつシリーズ」は参考になる。とても人に聞けない「常識」をしっかりと身につけるのに、これほどためになる本はない。方向音痴なので、ぜひ「地図のひみつ」をつくってもらいたいのだが、それがないのが残念だ。それと個人的には「政治のひみつ」というのも欲しいし、「お天気」は以前もこの項で取り上げたが「天気100のひみつ」があり、これも本当に役にたった。自分だけが知らないのでは、という恐怖感はたぶん誰にでもある。中学生向けの歴史教科書で、日本史や世界史の基礎を知って、そこから歴史物の小説を読めるようになった経緯がある。それにしても「電気」については毎日生活の中で命の次くらいに世話になっているのに、それが何なのか、60年も知らずに暮らしてきた。恥ずかしさを通り越し、ほとんど空気と同じ感覚で電気と向き合っている。電気の源は磁力で、その磁力から電気を生み出すために水から蒸気をつくり出す熱が必要になり、そのために火力や風力、水力、原子力の発電所が必要になる……これって常識でしょう、といわれそうだが、はっきり、くっきり、電気の正体を、小生ははじめてこの本で知ったことを告白しておく。

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