Vol.392 08年3月22日 週刊あんばい一本勝負 No.388


中学の同級生たちは今……

 実家の湯沢にある喫茶店のマスター(中学の同級生)からショッキングな話を聞いてしまった。昭和24年生まれの団塊世代である私たちの中学校の一クラスは53名。1年生から3年生まで持ち上がり(というんだっけ)クラスで、同じ顔ぶれで3年間を過ごしている。先生も1年生の時だけベテランのS先生(女性)で、2年3年とC先生(やはり女性で30代の先生)がひとり担任だった。S先生、C先生ともすでに亡くなっているのだが、最初のS先生は高齢で、今考えるとC先生が産休か何かでピンチヒッターの1年担任だったのかもしれない(余談になるが数年前、ルポライター竹中労さんの葬儀の時、隣に偶然一水会の鈴木邦夫さんがいたので、おしゃべりしていると、お父さんが転勤族だった鈴木さんは中学が私と同じで担任がS先生だった、というので驚いたことがある)。
 実はこの中学校時代の53人のクラスメート中、9人がすでに鬼籍に入っている。まだ還暦に2年を残すクラスで男4名に女5名が亡くなっているのである。死亡率15パーセント以上というのは当事者にとってはショッキングな数字である。さらに亡くなった9名のうち自殺者が3名もいる。これもグサリときた。亡くなった同級生9名中6名は中学卒業後すぐに就職した、いわゆる集団就職組である。9名の中で大学までいった者は一人きりで、その彼は自殺している。
 主に東京に出たクラスメートたちは、他のクラスよりも仲がよく、毎年ひんぱんに連絡を取り合い、飲み会などの集まりもこまめにやっていた、という。秋田県内に住んでいても40年間で2回ほどしか集まりを持たないわれら地元組に比べ、都会組の関係の濃密さは、田舎では信じられないほど強いものだったのだ。それが死亡率15パーセント以上、ときき愕然とするとともに、その事実の重さに、打ちひしがれてしまった。
(あ)
福島・矢祭もったいない図書館はコンパクトで静かで、なかなか居心地のいい場所
酒田の街の路地に古い民家の美術館が
山はすっかり春です

No.388

幸福な定年後(晶文社)
足立紀尚

 A5版2段組500ページを越す大冊。買ったはいいが、最近はこれだけの本とじっくり向き合う時間的余裕がない。時間があっても、読んでる途中で他の本を読みたくなったり、興味が別のことに移って持続力がなくなってしまう。でも面白そう。晶文社のインタビューシリーズはみんな面白いが、単独の著者ですべて1冊書ききっているものが、やはり面白い。先日亡くなった柳原和子さんの「在日外国人」や「がん患者学」もこのシリーズだった。本書では50人あまりの市井の人たちへ「定年後をどう生きているのか」を問う。大型インタビューの場合、一人の人間(著者)がテーマ性を持って、人選にまで責任を負う、というのが大事だ。それがインタビューによって出来不出来の落差が激しい欠陥を生まない秘訣のようだ。その点で本書はまちがいなく成功している。著者の視点が一定しているからだ。問題はこれだけの大冊をどのように全部読み通すかだが、これは毎朝入るトイレに置くことで解決した。自分では「便所本」と読んでいるのだが、その品のない言い方とは逆に「トイレで毎日コツコツ読み続けたい大事な本」というニュアンスで、読みたいけど時間がかかりそうなものや、一話読みきり本に便利である。ほぼ2ヶ月くらいかけて読み通したが、元気の出るいい本です。

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