Vol.391 08年3月15日 週刊あんばい一本勝負 No.387


エアロビ・美談・矢祭村

14日、なんと3ヶ月ぶりにスポーツクラブでエアロビ。わずか30分のメタボ改善入門クラスだったが、たっぷり気持ちいい汗をかいた。やっぱりエアロビはいいなあ。3ヶ月もご無沙汰したのは、ひとえに冬山の魅力に取り付かれ、毎週のように県内の雪山をスノーシューで遊んでいたからだ。先週も吹雪の駒ケ岳(男岳)に登ったのだが、アイゼン登山は初心者にはちょっときつかった。6人のパーティだが、なんどか前を歩く人の姿がまるで視界から消え、恐怖で大きな声を出してしまった。初アイゼン、初ピッケルだったが、山は怖い、ということを教えてもらった貴重な体験だった(同じ日、近くの八幡平で2人が雪崩で死んでいる)。

ホワイトアウトの駒ケ岳を登りながら、ひとつのことに思い至った。数日前に観たイギリスのドキュメント映画「ブラインドサイト――小さな登山者たち」のことだ。チベットの10代の盲目の若者たちが、登山のプロフェッショナルたちの手を借りながらエベレストのラクパリという7千メートルの山に登頂する話だ(手前で断念するのだが)。観終わるとそれなりに感動し、「こんなすごい子どもたちがいるんだから、冬の駒ケ岳程度でびびってどうする」と五体満足なオヤジは気分を奮い立たせたわけだが、わずか1000メートちょっとの山でさえ「このまま死ぬかも」と思った場面に何回か遭遇するのに、このドキュメンタリーにはそうしたシーンが皆無なのだ。7000メートの山を登っているのに子どもたちが悪戦苦闘する姿はほとんどない。サポートする側の議論や子どもたちが村で差別を受ける追憶シーンのみが脈略なく延々と続くばかり。
「最初に美談ありき」でムリヤリこじつけられたドキュメンタリーではないのか、という疑念が駒ケ岳でよぎった。

美談といえば、福島県の村の「矢祭もったいない図書館」というのもあるのだが、これは先日、ちゃんと取材してきた。憶測でものを言うのは失礼だから。それにしても福島の最南部、ほとんど茨城県にあるこの村に行くのに半日かかってしまった。その顛末は後日、何らかの形でレポートする予定(もしかすると新聞か雑誌に書くかもしれません)だが、意外な展開が盛りだくさんで収穫の多い旅だった。
(あ)
はじめてのアイゼンで駒ケ岳に行ってきました
羽越線からみた遊佐町の鳥海山
あるギャラリーでド迫力の佐藤勝彦の屏風に出会いました

No.387

難儀でござる(光文社)
岩井三四二

 数年前からカゼン時代物の本に興味を持っている。年をとってきた証拠なんでしょうね、悲しいけど。歴史小説といっても池波正太郎や藤沢周平といった人気作家が紡ぎだす「物語」にはさして興味はない。当時の歴史背景や日常生活が書かれている「史実重視」の時代小説が好きなのだ。最近、東北各地の峠を歩いたり、県内の歴史の古道を訪ねることが好きになっているのだが、それとリンクした衝動で、江戸時代やそれ以前の自分たちの先祖が、どのような日常生活を送っていたのか、戦国時代の秋田はどのような場所だったのか――といったことに、興味惹かれる。しかし出版物の時代物といえば圧倒的に「江戸時代」だ。わかりやすく、ブームになっているせいもあるのだろうが、本書は戦国時代が舞台である。主人公は覇王といわれ、わがまま傍若無人の代表である織田信長や、そのライバルだった武田、豊臣である。いや、正確に言えばそういった独裁権力者の無理難題に振り回される家臣や公家、親族などが本書の本当の主人公である。時代物に興味なくとも独裁者に翻弄される家来たちの連作短編集というだけで食指は動く。江戸以前の諸国の支配関係がよくわかり、かなり史実に忠実な物語なのもありがたい。

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