Vol.387 08年2月16日 週刊あんばい一本勝負 No.383


寒中お見舞い申し上げます。

少し遅れたが冬季のDM(ダイレクトメール)も終わり、少々拍子抜けした感のある週末。1週間前の貝吹岳登山が初心者には思ったよりきつく、週の前半は筋肉痛だったが、ルーティンのように毎週ある山行も今週はひと休み。ゆっくり休養を取ることができた。といってものんびり家に引きこもっていたわけでなく、湯沢の犬っ子祭りや西木の紙風船上げを見に行ったり、週末も酒田まで電車旅。ジッとしているより、どこかに出かけているほうが気が休まるようになってきた。
 
ウイークデーはものすごい吹雪で外に出たくても出られなかったし(夜の散歩は欠かさなかったが)、来客もいつもよりは少なかった。事務所の窓から見える景色は白一色なのに机の上には、今度出すブラジル移民100周年記念出版の醍醐麻沙夫『超積乱雲』のカバー候補写真、赤道直下のアマゾンの雄大な雲と川の写真ばかりを眺めながら、身が引き裂かれるような気分の作業をしていた。

毎日、ほぼ決まりきったような日常を過ごしているのだが、朝目覚めるとき、新聞に目を通しているとき、日誌を書いてるとき、「楽しくなりそうだな」と感じる日が増えてきた。どうしてなのかよくわからないのだが、むやみに不安になって落ち込んだりする機会は若い時のほうがずっと多かったような気がする。これが年をとって得られる「何か」なのだろうか。しんどいことはもう向かっていく気力がなかなか起きないが、これまでの経験則で「このへんまでなら俺だってやれるぞ」という目に見えないラインが見えるようになったのも確かだ。仕事は楽しい。でもシンドイ。このへんのバランス感覚がこの年になってようやく身についてきたのかも。寒中お見舞い申し上げます。
(あ)
犬っ子祭りは子どもの祭りですね
貝吹岳で記念撮影
紙風船揚げは初めて見ました

No.383

神田村通信(清流出版)
鹿島 茂

 この人の本を読むのは初めてだ。書評家なのは知っていたが大学の先生だとは知らなかった。一度、神保町でご夫人らしき人と歩いているのを見かけたことがあるが、19世紀フランス文学が専門の先生なので、永遠にその著作を読む機会はなかったかもしれない。それが神保町のエッセイ集、というので触手が伸びたのだが、版元が清流出版というのが、ちょっと引っかかった。本書は4章立ての構成で、実は序章と1章のみが神保町に関するエッセイで、あとは食べ物やフランス旅行、掘り出し物……といった身辺雑記エッセイである。羊頭狗肉ではないか、と責めるほどヤボではないが、文春や講談社といった大手出版社なら、だからこうしたタイトルのつけ方は、たぶん絶対にしなかったはず。信用問題に関わるからだ。これは中堅出版社がよくやる手なのだ。「あとがき」で知ったのだが、神保町に飲食店が多くなり、アダルト・グラフィックの店(ポルノ雑誌のこと)が増えても、他の街のように不潔で荒んだ雰囲気がないのは、住民全員が知り合いで、昔ながらの「意識の共同体」が保たれている「村社会」だから、というのは「なるほど」。飲食店のラストオーダーが7時とか8時なのも神保町の住民が夕飯を「自宅」で食べるから、だそうだ。これはけっこう説得力がある。

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