Vol.384 08年1月26日 週刊あんばい一本勝負 No.380


DM・文学賞・雪山

年4回出している愛読者用のDM(ダイレクトメール)が思いのほかてこずって、ようやく今週末に校了、印刷に回った。ホッとしているが、本来は1月初旬には発送する予定のもので約1ヶ月の遅れ。てこずったの理由は不測の事態がいろいろ起きたためだが、いつもはヒマな時期である1月が、雑用がひっきりなしに入り忙しかった。そのため小生以外は他の仕事にかかりっきりで、DM編集作業(何枚ものチラシや通信をつくる)には誰も協力してくれなかったせいだ。ま、忙しいのだからグチるほどのことでもないが。

思いがけないニュースは、編集長の妹のチカちゃん(小さなころから知っているので)が北日本新聞社(富山市)の文学賞選奨を受賞したこと。これは驚いた。選者は宮本輝氏で、昨年も惜しいところで落ちていたらしい。チカちゃんは大学では美術系で、ウチの本のカットを書いてもらったり、先日なくなった神保町の「書肆アクセス」でも働いていたことがあるのだが、まさか東京で主婦のかたわら小説を書いているとは知らなかった。さっそく受賞式に花を贈る。

20日の日曜日、本格的な雪山に登ってきた。モンスター樹氷で有名な森吉山に行ったのだが、ものすごい強風でマイナス10度の世界。山頂には行けず途中の非難小屋でお昼をとって、帰りはスキー場の横を下りてきた。その前の週は鳥海・三俣や羽黒山、元旦は筑紫森、去年は保呂羽山と雪山は何度か経験しているのだが、本格的な高山ははじめて、寒さのケタが違った。それにしてもスノーシューというのは、なかなかのすぐれものだ。基本的に「登る」ことよりも「歩く」ことが好きなので、スノーシューとはけっこう相性がいいようだ。明日からは鳥海山・獅子が鼻、2月は貝吹岳、金峰山、3月は秋田駒が岳、稲倉岳と雪山ハイクが続く。
(あ)
校正中のDMチラシ
チカちゃんの小説が掲載された新聞
非難小屋は2階から出入りする

No.380

出版業界の危機と社会構造(論創社)
小田光雄

 いやはや2008年はとんでもない幕開けになった。新風舎と草思社の相次ぐ倒産で、お正月気分はいっぺんで吹っ飛んだ。まあ、この2つを同列に並べて論じることは無理があるが、問題は自費出版サギ商法といわれた新風舎が、なぜ潰れたのか、を検証するのが出版界にとって急務だろう。出版社への信頼を、この1社が根底から貶めた、という見解も少ないからだ。経済的リスクを100パーセント著者が負担している自費出版で、なぜ負債が膨らんで倒産にいたるのか、わかるようでわからない現象である。本書は、直接はこうした自費出版問題には触れていないが、出版不況が始まった年から去年までの「業界クロニカル」が実にわかりやすく出版界を俯瞰していて、ためになる。著者と版元の対談形式で本は進行する形をとっているのだが、ときどき自慢話が鼻につくこともあるが、前作の「出版社と書店はいかにして消えていくか」はそれだけのインパクトを持った本だったことは確かだ。個人的には「〈郊外〉の誕生と死」のほうが好きな作品だが、翻訳でも活躍しているひとだ。多芸だなあ。本書にれば、最も今後苦しくなる出版社は「講談社」で、コンビにも図書館もブックオフも、ほぼ飽和状態でピークは超えてしまった存在ということのようだ。あまり深く業界の舞台裏に精通しているのも考えものだが、松岡祐子の「ハリーポッター」訳が、日本の児童文学の翻訳の質を劇的に下げてしまった、というくだりなどは読んだことのない本だが、目からうろこ。

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