Vol.386 08年2月9日 週刊あんばい一本勝負 No.382


あれやこれやで1年が経ちました

 去年の2月6日は、3年ぶりに近所のスポーツクラブに足を運んだ記念すべき日だった。早いもので、あの日から1年が経ってしまった。この1年は自分の60年近い人生でも特筆すべき「大きな意味」をもった月日だった。この1年で身体がすっかり変わった。エアロビクス・ダンスで鈍った身体を苛め抜き、どうにか人並みに戻し、体重は10キロ近く落ち、週末は机を離れて野山を散策できるようになり、アウトドア・スポーツにすっかりはまった。暴飲暴食は影を潜め、規則的な生活をすることが喜びに変わった。閉じこもりがちだった冬もスノーシューを履いて雪山に出かけ、ゲレンデスキーも復活。四季を通じて週末アウトドア生活を満喫するなどというライフスタイルを、まさか自分が実践するなど、1年前は考えしなかったことだ。

 それにしても、小生だけではないだろうが、アウトドア初心者の常で衣服を含む用具代が、かなりの金額になった。アウトドアは実践よりも用具を揃えるまでが大変なのだ。1年の実践体験を通じ、もうあらかたのものはそろったので、2年目からは経費も飛躍的に軽減していくのはまちがいないのだが、それにしても年間個人支出(本や飲食)の3分2はアウトドア用品購入費、というのも尋常ではない。とはいってもアウトドア用品は日常生活に転用が利くから利便性は高い。衣類はもちろんだが、お茶を飲むテルモス(保温水筒)や速乾性の下着など、普段遣いしていて、買って良かったなあと思うものも少なくない。良かったなあ、の代表格はMBTという靴だろう。マサイ・ベアフット・テクノロジーと呼ばれる姿勢矯正用の靴である。ソールが山型になっていてグラグラする。正しく歩く姿勢のための筋力をつくるもので、日常的に履いていると、そのグラグラがたまらない快感に変わる。毎夜の散歩はむろん、出張先に履いていくようにまでなじんでしまった。今は普段もこの靴を履いている。背筋がまっすぐに伸び、小幅でしゃんとした歩き方が自然にできるようになり、山歩きにも生かされている。靴そのものは3万円だが毎年ソールを張り替えるのに1万円かかる。これが問題だが、歩く頻度が少なければ3年に一回ぐらいの張替えでも大丈夫だそうだ。
(あ)
雪山ハイクは楽しい
雪道でも履いているMBT
今年の雪はこんな感じ。事務所の横の道です

No.382

ゴールデンスランバー(新潮社)
伊坂幸太郎

 〈ゴールデンスランバー〉というのはビートルズのナンバーからとったタイトルだそうだ。〈豊穣なまどろみ〉とでも訳すのだろう。本書は、仙台で起きた首相暗殺事件の犯人にされた主人公が、仙台市内を逃げまわる話である。「ケネディ暗殺」の日本版のような小説なのだがドラマチックな要素はそれほど濃くはないから、その点は期待しないほうがいいかもしれない。寝る前の20分ほど、この本を読み続けたのだが、わずか2日間ほどの逃走劇を1千枚(400字詰)もの枚数をかけて丹念に描いているため、毎夜、そのスローモーさに勝手にいらだってしまった。10日間かけて2日間の物語を読む、というのはヘンな体験である。このタイムラグ(短い時間の物語を長い時間かけて読む)のため、集中力がうまく続かなかった。さらにこの作家が時間をかけて丁寧に描くディテールが、年代差のある私には重要に思えず、主人公の心理も父親や元恋人のキャラクターもマンガチックな「作り物」におもえて、感情移入が難しかった。『アヒルと鴨のコインロッカー』以来、読むのは2作目だが、ものすごい力を持った作家だというのはわかるが、相性はいまひとつ。

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