Vol.390 08年3月8日 週刊あんばい一本勝負 No.386


書評ラッシュにうれしい悲鳴

 昨年末から、少し大げさにいえば、出す本出す本が全国紙の書評に取り上げられて、うれしい反面、とまどってもいる。
 伊藤孝博著『東北ふしぎ探訪』が朝日新聞読書欄に載ったのが皮切りで、何せこの本は600ページ・2800円という大冊、売れっこないと思っていたら、書評のおかげで完売した。粘り強く(?)返品待ちをしたが、客注が溜まり、どうにもならず先月増刷した(このへんが計算どおりにいかず、戸惑っている理由)。新聞書評が出ただけで初版が売り切れるなんて、10数年前でも経験がない。どうしたんだろう。
 毎日新聞の永幡嘉之著『白畑孝太郎』は著者によると、書評は「無署名記事」だが、実は書いたのは養老さんとで、いろんな事情があり無署名の書評になったのだそうだ。著者は養老さんと昆虫つながりで、親しい。
 『笑種似顔絵草紙』は読売新聞に書評が出たが、5000円近い本なので部数とは結びつかないと思っていたが、これがけっこう売れて驚いている。
 この項を書いているいま(7日)も河北新報に『白畑』の書評が出たらしく、電話が鳴っているし、今月号の『ヤマケイ』には『秘境・和賀山塊』、3月下旬に出る『サライ』には『似顔絵』と、書評が目白押しだ。
 いったい本当にどうなっているのか。活きのいい新刊がない時期にうまくウチの本たちがもぐりこんだ、といったあたりだろうか。
 それにしても全部違う本が3大新聞に同じような時期に立て続けに書評が出た、というケースは35年の出版社人生でもはじめてのこと。  何かよくない「反動」などありませんように、といまは祈るばかりだ。
(あ)
水郡線で見かけた高校生。どんな大人になるんだろう
金峰山の頂上で
近所のチェーンレストランのラーメンセットは安くてボリュームもあるが、まずい

No.386

きのう何食べた?(講談社)
よしながふみ

 たまたま「ハッシュ!」(橋口亮輔監督)というゲイの若いカップルと自殺願望を持つ若い歯科女医の再生の物語を観て、感動した。その影響もあるのだろうか、先日、駅前でもつれ合うように歩いている若い二人の男を見たとき、とっさに「あの映画に出てきたゲイのカップルみたい」と興味がわいた。悪趣味なのはわかっているが、二人がコンビニに入ったので、そのまま付いて行き、彼らの会話を盗み聞きしてしまった。「愛してる〜っ」「うん、愛してるよ」といったベタな会話が続き、コンビニの中でもお互いの耳元で何かをささやき続けていた。映画ならまだしも、この秋田で、こんな光景が見られるなんて時代も変わったもんだ。そして本書。漫画なのだが、タイトルからわかるとおり料理本。その料理を作り、食べるのは、この物語の主人公ゲイのカップルである。背が高く、かっこいい弁護士と美容師のカップルだ。この2人にそれぞれの親や、客や、日常が絡み、最後は決まって二人の食卓の場面終わる構成である。とにかくディテールがリアルで、漫画のレベルがけっして文字に劣らないことを証明する内容だ。「40過ぎたら男のかっこいいって、やせてるってことなのよ」というせりふが印象に残った。この作者、女性か男性かもわからないのだが、最近も男女が逆転した「大奥」という時代物の連載で評判を呼んでいるらしい。そっちも読んでみたい。

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