Vol.402 08年5月31日 週刊あんばい一本勝負 No.398


草を食べる象のように

 5月も終わった。いやはや、あわただしい1ヶ月だった。
 今、机の前にある書き込みカレンダーをみながら、この原稿を書いているのだが「空白」がほとんどない。こんな月も珍しい。書き込みをするのは大切な個人的用事や、本の刊行日、山行、出張などの「特別な日」だけなので、この汚れたカレンダーをみただけで、いろんな予定が詰まっていたことがわかる。
 花のゴールデンウィークは、ユースに泊まりながら友人と鳥海山の里山を歩いた。中旬には仕事がらみだが久しぶりに東京出張があった。仕事がすべてうまくいき、気分よく秋田に帰ってきた。
 山は白木峠に鳥海山、森吉山。森吉山は生まれてはじめての単独行。八幡平も予定に入っていたのだが、親族が亡くなり葬儀のためキャンセル。
 カルチャースクールの講師のまねごとも四度。これも多いなあ。
 本は根深誠著『ゴンボホリの系譜』一冊のみだったが、出版広告は朝日、読売2紙に5段12割。
 人間ドッグ(健康診断)もあったし、飲み会も五回ほど。これもいつもの月に比べたらダントツに多い。
 でも最も時間をとったのは原稿読み。仕事だから当たり前だが、なぜかブログを本にする企画が何点か続き、そのプリントアウトした膨大な量の原稿を、草を食べる象のように読みまくっている。これを毎日四時間平均やっていると、目が乾き、頭が白っちゃけてきて、甘いものが欲しくなる。読む原稿がみんな面白いので続いているようなもので、首を傾げたくなる内容だったら、2日ぐらいでギブアップしていただろうな。 この原稿読みの間に、なぜかたまたまいろんな行事や遊びや来客が混じりこんでしまった、というのが忙しさの原因のようだ。
(あ)
単独行の森吉山頂で
カレンダーはこの通り
ある新人研修の会で、講師席から撮ったもの

No.398

落合博満変人の研究(新潮社)
ねじめ正一

 なんで、いま、落合なの? と思ってしまうが、読み出すと面白くてとまらない。本書の中にも何度も紹介されているのだが、落合は秋田の出身で、中日の監督なのに秋田でも名古屋でもそれほど人気があるわけではない。「いやだ」とおもっている人が多い、「嫌われ人気者」である。なぜ、これほどの成績を残した大スターなのに、人気がないのか。名球会を拒否したのはなぜか。それがこの本を読むと、そうした理由がよくわかるだけでなく、まちがいなく落合が好きになる。なぜなら著者が命をかけて愛す長島茂雄と落合は「同類項」だからだ。エッ、何それ、と言いたくなるが、この2人と対極にあるのがイチロー、星野仙一、野村監督だというのだから、ますますわからない。このへんの「言葉の線引き」はさすが詩人だなぁ、とうなってしまうのだが、野球選手を「野球より前に出る人」と「野球より前に出ない人」という線引きで分類しているのである。これには参った。いやはや、詩人の言語能力と洞察力に、落合以上に打ちのめされてしまった。食べ物でいえば落合はホヤあるいはナマコのようなものだそうだ。初めて食べるときは勇気がいるが、その勇気あるものだけが、その歯ごたえ、美味しさ、滋味豊かな苦味を味わうことができるのだそうだ。

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